“表現者として衝撃を受けた”――崎山つばささんがおすすめする「モノクロなのにどこか新しい」1冊とは?
毎月3人の旬な有名人ゲストがこだわりのある一冊を選んで紹介する、ダ・ヴィンチ本誌の巻頭人気連載『あの人と本の話』。今回登場してくれたのは、崎山つばささん。 (取材・文=五十嵐 大 写真=干川 修)
陰の中に光を、光の中に陰を感じるんです――。ため息を吐くように、崎山さんは何度もそう口にした。手にしているのは、世界的なフォトグラファーであるアントン・コービンの写真集『Mood/Mode』だ。 「彼の写真を初めて見た瞬間、衝撃を受けました。モノクロなのに色が見えてきて、躍動感も伝わってくるんです。かと思えばカラーの写真も出てきて、すると不思議な安心感を覚える。しかも写っている人たちが、みんな自然体なんです。もちろん、ポーズを取っているんだろうけど、それを感じさせない。そのほうがその人ならではの魅力が伝わるんでしょうね。ぼくも撮られることが多いので、常にナチュラルでいることは意識したいなって思いました」 最も感銘を受けたのは、派手な色調や加工に頼らない、被写体をありのままで写し出そうとする姿勢だ。 「人物の皺ですら格好いいんです。それをモノクロ…