白石隼也「感情に忠実に演じてみたい、という僕の意志を、受け入れていただいた作品です」
毎月3人の旬な有名人ゲストがこだわりのある一冊を選んで紹介する、ダ・ヴィンチ本誌の巻頭人気連載『あの人と本の話』。今回登場してくれたのは、映画『鏡の中の笑顔たち』に主演した白石隼也さん。“訪問美容”で出会う高齢者との触れ合いを通して人間的に成長していく美容師という役柄は、白石さん自身の出演作の中では異色。そこに臨んだ境地とは?
「芝居の技術的なことはすべて排除し、感情に忠実に演じてみたいと思ったんです」
無愛想で言葉少なで。けれど、彼の行動や心に嘘や裏はない。白石さんの演じる美容師・遼の人付き合いの下手さ加減は、むしろ清々しい。だんだんと表情や態度が変わっていくさまも、納得できる温度感が心地いい。
「僕自身がもともと人見知りということもあって、遼の気持ちにはなりやすかった。演じるうえでわかりやすい動きをしなかったり、セリフを変えてしまったりと、遼の感情を優先して動いてしまったのですが、喜多監督はそんな僕の意図を汲み取って受け入れてくださった。2日目からはあまりカット割りはせず、長回しの撮り方に変えていただけたんです」
今回、選んだ『ひとめあなたに…』…