やるせない。でも責められない。一世を風靡して倒産したベンチャー社長の告白にひきこまれる
ハイパーネット。 かつて私がビジネス誌の仕事をしていたとき、板倉社長に取材したことがある。無料プロバイダという当時新しいビジネスモデルで話題をさらっていたからだ。後にiモードをドコモで立ち上げて名をはせる夏野剛氏も所属していた。しかし、96年ニュービジネス大賞受賞後わずか1年後には倒産――転落した。 なぜ?
実本はなぜか読まずに見逃してしまっていたのだが、iTunesに出現したこの電子書籍を見たとき、思わず購入してしまったのだった。 当たり前だけれども、現実ほど説得力あるものはない。ビジネスが上昇気流に乗っているときの高揚感、その高揚感の中でつい見失いがちになるほころび、そして会社が転落モードに入ったとき急に貸し渋りを浴びせる銀行の非情…。当事者自ら書いた文章だから自己弁護につつまれている部分も見受けられるが、それでもエモーショナルな臨場感は十分伝わってくる。 ビル・ゲイツから直接会いたいと言われたら、誰だって過度な期待を持つし、興奮する。会える時間はたった10分。そのため経営的に極めて重要なクライアントをキャンセルしたことを、責められるだろう…