仲の良いあのアイドルコンビ、実はビジネス仲良しで“百合営業”でした…? 裏の顔がわかっても、なぜか萌えるカップリングがここに…『この百合はフィクションです』

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公開日:2023/4/5

この百合はフィクションです
この百合はフィクションです』(むちゃハム/白泉社)

 グループに推しがいる多くのオタクにとって、昔からカップリングというのは切っても切れないものだ。大好きな推しが、相方といるときに見せる新しい一面。萌える掛け合い。末長くその2人だけの聖なる空間が存在し続けますように……と思わず祈ってしまう。でも、そんなたまらない関係も、私たちファンの前でだけ見せている姿なのかもしれない。世の中には「ビジネス」という言葉がある。

 むちゃハム氏が描く『この百合はフィクションです』(白泉社)は、まさにそんなアイドルたちがビジネス仲良しで「百合営業」をしている物語だ。

この百合はフィクションです p6
©むちゃハム/白泉社

この百合はフィクションです p7
©むちゃハム/白泉社

 主人公は、アイドルグループ〈ぱらいそ☆伝説〉のメンバー、伊達沙愛良(だてさあら)。高身長かつクールな美貌で、女性人気も高い。しかし、裏の顔は、その容姿に似合わず気弱な性格だ。親が勝手に事務所に応募して受かってしまった伊達は、自分のような素人でもアイドルができるのか不安を抱く。

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 そんな彼女に救いの手を差し伸べたのが、同グループのメンバーである直江めぐむだ。小柄で清楚なキャラクター、人気ナンバーワンの王道アイドルである直江は、彼女に仲良くしようよと声をかけ、キャラクターや立ち居振る舞いにアドバイスをし始める。のも、束の間。彼女は伊達のキャラクターを使えると考え、「だてなお」という虚構の関係を作り、伊達に日々叩き込むようになるのだった。

この百合はフィクションです p20
©むちゃハム/白泉社

 めちゃくちゃ打算的な百合営業! 伊達はそんな彼女の強引さや強烈なしごきに嫌気がさし、何度もその幻想をファンの前で壊そうとするが、なぜか毎回新たな供給となってファンに解釈されてしまう。

この百合はフィクションです p55
©むちゃハム/白泉社

 読み始めたときは、直江の裏の顔のインパクトに恐怖していたが、次第にその印象も変わってくる。もちろん常に強引だし打算的ではありつつも、伊達のコールアンドレスポンスを一緒に考えてあげたり、休日のブログ写真のためのデートでは可愛らしい顔を見せたり、なんだか憎めないのだ。舞台の上では仲良くしていても、裏では会話もしない……みたいな不仲ではなく、むしろ伊達につきまとう姿は片思いのそれである。

この百合はフィクションです p62
©むちゃハム/白泉社

この百合はフィクションです p63
©むちゃハム/白泉社

 まさか、百合営業をしているとわかっている2人に萌え始めるとは思っていなかった。今のところは一オタクの「え、これ直江絶対伊達のこと好きだよね!?」という解釈でしかなく、それ以上の描写がこの作品にあるわけではないことを、念の為言い添えておく。ただそれでも、ワンチャン、ガチのだてなお、あるんじゃないか……と期待を胸に次巻を待つ、このうずうずは止められない。こんなこと知られたら、伊達に絶望されそうだ。

文=園田もなか

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