『水木しげるのおばけ学校』がスペシャルカバー&貴重なアートブックも付いた、豪華記念BOXに! 次世代に伝えたい妖怪たちの魅力

文芸・カルチャー

公開日:2023/4/27

水木しげるのおばけ学校 水木しげる生誕100周年豪華記念BOX
水木しげるのおばけ学校 水木しげる生誕100周年豪華記念BOX』スペシャルカバー※完全受注生産商品

 2022年は水木しげるさんの生誕100周年ということで記念イベントや書籍の刊行が相次いだが、2023年になってもまだまだその波は収まらない。水木さんの出身地・鳥取県境港市では俳優の浅野ゆう子さん、佐野史郎さんが登壇した「まんが王国とっとり 生誕101年  水木しげる生誕祭」が行われ、同市にある水木しげる記念館ではリニューアル工事が始まるなど、水木さんの100周年を祝いつつ次の100年に向けて動き出しているようだ。

 そんな次世代の水木ファンとなる子どもたちにオススメの作品がある。水木作品には珍しい児童書のシリーズ『水木しげるのおばけ学校』(ポプラ社)だ。1980年から刊行がスタート、漫画『ゲゲゲの鬼太郎』や漫画『河童の三平』の中から名作をアレンジしたものや、オリジナルのストーリーなどで構成される全12巻のシリーズだ。

 児童書なのでいわゆる漫画ではないが、ほぼ全ページに水木さんのイラストが掲載されており、文章も水木さん本人が手掛けている。イラストのすばらしさは今さら説明の必要もないかもしれないが、細密に描き込まれた背景に白く抜けたようなキャラクターが醸し出す、ゆるいけど怖い、人外の世界というのは人間の世界のすぐ横にあるんだ、と感じさせてくれるすばらしいイラストが満載となっている。

水木しげるのおばけ学校 水木しげる生誕100周年豪華記念BOX
水木しげるのおばけ学校』より

 文章は、とてもテンポがよく、グングン物語が展開する。子ども向けに読みやすい工夫がされつつ、水木作品が持つアヤシイ雰囲気や、屋台でラーメンを食べたり、ねずみ男とお酒を飲みに行こうとしたりする、アニメ版とは違う鬼太郎の姿が描かれている。ひょうひょうとした文体は味わいがあり何度でも読みたくなってしまう。それでいて鬼太郎や妖怪の説明はとても丁寧に書かれているので全部読み終わる頃には一通り妖怪に詳しくなっているはずだ。

 僕は水木さんと同じ鳥取県境港市出身なので自分の子どもに、鬼太郎を入り口に妖怪を知ってほしいし、水木作品を好きになってほしいと願っている。ということで5歳の娘にシリーズ第1巻『おばけ野球チーム』を読み聞かせてみた。

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 この巻には表題作の「おばけ野球チーム」と「妖怪学校」の2話が収録されている。「おばけ野球チーム」は、墓場で鬼太郎のバットを拾ってしまった野球少年が、そのバットの所有権を賭けて鬼太郎率いる妖怪チームと命がけの試合をする話。「妖怪学校」は、見上げ入道に連れ去られ妖怪学校に入れられてしまった少年を鬼太郎が救出する話となっていて、それぞれの話で鬼太郎の立場が違うのが面白い。人間の味方だけど時には人間に厳しく接するという鬼太郎の立ち位置は5歳の娘にはわかりにくいかなと思っていたけれど、全然そんなことはなく、自然に怖がりながらも楽しんでいたようだ。

 2巻以降も人間と妖怪の間に立ってバランスをとる鬼太郎と、あくまで個人的な利益のみで動くねずみ男に誘われて妖怪の世界を覗き見ることになる。個人的には第4巻『おばけ宇宙大戦争』は混沌としていて最高に面白かった。人間と妖怪に加えて宇宙人が2種族も出てくる「おばけ宇宙大戦争」と、鬼太郎とねずみ男が猫の世界に迷いこみ最後には猫になってしまう(ねずみ男も猫に!)「ねこ町キップ」の2話が収録されている。こんなにいろんな種族が節操なく入り乱れる話は水木さんにしか書けないのではないか。

 その他にも漫画版『ゲゲゲの鬼太郎』でもかなりの盛り上がりをみせる「妖怪大戦争」や「大海獣」も児童書用にアレンジされ収録されている。そして『カッパの三平』からも『水泳大会』『魔法だぬき』の2作が収録。『カッパの三平』はカッパに似た顔の少年・三平が本当にカッパの世界に足を踏み入れる物語。三平とカッパが入れ替わるのが愉快な物語だが、漫画版の『河童の三平』は、『カッパの三平』の原点ともいわれる、カッパの大王の秘宝を探す壮大な冒険譚なので、機会があれば、そちらも手に取ってもらいたい。

 そしてこの「水木しげるのおばけ学校」シリーズは現在でも全巻入手可能だが、2022年と2023年は水木さんの生誕100周年のお祭り! 本シリーズも生誕100周年を記念して『水木しげるのおばけ学校 水木しげる生誕100周年豪華記念BOX』(ポプラ社)という特別版が発売される。

水木しげるのおばけ学校 水木しげる生誕100周年豪華記念BOX

 セット内容だが、まず全12巻に新しいスペシャルカバーが付く。本編のイラストから名場面を選りすぐり、美しく着色されたカバーはそのまま部屋に飾ってしまいたいくらいかっこいい。カバーを外すと昔のオリジナルの表紙がそのまま現れるのもすばらしい。

水木しげるのおばけ学校 水木しげる生誕100周年豪華記念BOX

 そして、セットに含まれるアートブックが圧巻。「水木しげるのおばけ学校」のカラーイラストを中心にまとめた画集が見ごたえたっぷりだ。書籍では白黒掲載だったページのカラーイラストも収録されているのだ。

水木しげるのおばけ学校 水木しげる生誕100周年豪華記念BOX

 巻末には水木しげるさんの大ファンとして知られ、『水木しげる漫画大全集』の監修を務めた小説家の京極夏彦さんの寄稿と、「かいけつゾロリ」シリーズで知られる原ゆたかさんの寄稿とファンアート、数多くのおばけの絵本を生み出した絵本作家せなけいこさんの娘・絵本作家のくろだかおるさんの寄稿も収録される。

 さらに気になるのは、当時の担当編集者しか知らない、「水木しげるのおばけ学校」創作秘話だ。こちらも、どんなエピソードが読めるのか、大変楽しみである。

水木しげるのおばけ学校 水木しげる生誕100周年豪華記念BOX
編集部注:装丁の製本方法も変わっており、立体的な造り。写真集に使われるような発色のよい用紙を採用し、180度に開きやすく、じっくりとイラストを眺めることができる

 その他にも名作『妖怪ラリー』のワンシーンをデザインした「妖怪ラリー風呂敷」、暗闇で光る「シリーズ収納ケース」も付くなど、盛りだくさんの内容となっている。気をつけたいのは完全受注生産なので、手に入れるためには予約注文が必須だ。

水木しげるのおばけ学校 水木しげる生誕100周年豪華記念BOX
妖怪ラリー風呂敷

水木しげるのおばけ学校 水木しげる生誕100周年豪華記念BOX
妖しく光る⁉ シリーズ収納ケース

 老若男女問わず幅広い層から支持される鬼太郎をはじめとした水木作品。今回の『水木しげるのおばけ学校 水木しげる生誕100周年豪華記念BOX』も例にもれず誰でも楽しめる内容となっている。でも、このシリーズは特に子どもたちに読んでほしい。僕の5歳の娘は第1巻『おばけ野球チーム』で味をしめ、もっと読んでくれ、というので毎日1冊ずつ読む約束になってしまった。100年後、水木さんの生誕200周年を祝うためにも、次世代の妖怪ファンの育成は必須なのだ。

文=村上智基

▼『水木しげるのおばけ学校 水木しげる生誕100周年豪華記念BOX』詳細はこちら
https://www.poplar.co.jp/pr/obakegakko100/

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