「きがつけば一緒に泣いていた」なかなか寝てくれない我が子、帰ってこない夫…大変だった育児の日々をふりかえってみたら。癒し系“育児ふりかえり”漫画

出産・子育て

更新日:2023/5/31

かおりんごむしのほっこりふりかえり絵日記
かおりんごむしのほっこりふりかえり絵日記』(かおりんごむし/講談社)

 子育てをしていると朝から晩までバタバタで、つい怒ってしまうし、子どもの顔をゆっくり見る余裕もない。「幼少期はいちばん可愛いとき」「大きくなるまではあっという間」とよく聞くけれど、この慌ただしい毎日の中で、しあわせに過ごせるはずの時間を見失ってしまってはいないだろうか?

かおりんごむしのほっこりふりかえり絵日記』(講談社)は、夫と共に小学生2人の子どもを育てる、かおりんごむしさんによるイラストエッセイ。このたび、「WEBげんき」の連載に描き下ろしを加えて上梓された。

「1日1日を大切に過ごしたい」という想いを胸に、漫画を描いているという作者。忙しい毎日の中にどのようなしあわせを見いだしているのだろう。

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子どもの寝顔の可愛さは宝物

かおりんごむしのほっこりふりかえり絵日記 p.38-39

かおりんごむしのほっこりふりかえり絵日記 p.38-39

 この本には、現在小学生の長男さとしくんが生まれたときのことや幼少期の出来事などが、ふりかえり絵日記として描かれている。さとしくんの赤ちゃん期は、なかなか眠ってくれない子どもだったようだ。抱っこしてもおっぱいを飲ませても眠ってくれないさとしくんに、ママまで悲しくなって、一緒に泣いてしまい…。

 ただでさえ寝不足になりやすい授乳期。赤ちゃんが寝てくれないとイライラして自分や子どもを責めてしまいがち。そんな中、作者は「うまくなんてできないから」と前向きに考えていたそう。できないときは泣いて発散してもいいし、明日に備えて眠れるときは眠ったほうがいい…と、育児で大事にしたいことが伝わってくるエピソード。そして、子どもの可愛い寝顔は、多くの親にとって宝物であるはず!

こんなにも見つめられたことない!

かおりんごむしのほっこりふりかえり絵日記 p.52-53

かおりんごむしのほっこりふりかえり絵日記 p.52-53

 作者の夫は家族思いだけれど出張が多く、作者はワンオペになることが多かった様子。夫がいないときは、母親に悩みを相談し、好きなものを食べて頑張っていたという。モリモリと食べているとき、ふと視線を感じたほうを見てみると、母の顔をじっと見つめるさとしくんの姿が…。

 大変なときは誰かを頼ったり、好きな食べ物を食べたりしてリフレッシュ! そして、たまには、泣いてばかりの子が親の顔をじっと見つめながら泣かずに待ってくれる…というご褒美が。子どもがいつも泣いてしまうのは、親のことが大好きだからなのかも。こんなに親を求めてくれる存在がこの世にいることに、感謝したくなるエピソード。

反省の真っ最中に笑顔で「おかしゃん」

かおりんごむしのほっこりふりかえり絵日記 p.130-131

かおりんごむしのほっこりふりかえり絵日記 p.130-131

 誰もが苦労する幼少期のトイレトレーニング。いつもは朗らかな作者もまた、夫にイヤな言葉を投げたり、さとしくんを怒ったりすることが増えたのだそう。やさしい夫の言葉にハッとして「明日はおこらへんように…」と反省する作者。そんなとき、さとしくんが笑顔で「おかしゃん」と…。

 本当は怒りたくないのに、子どもを思うからこそ力が入ってしまうトイトレ。たくさん怒ったのに満面の笑みを向けてくれる子どもに、言葉にならない複雑な気持ちが湧き出す…そんなお話に大きく共感。深く反省しつつ、この「おかしゃん」の笑顔から明日への大きなエネルギーをもらうのだ。

 大きな事件が起こるわけではないけれど、トイトレや黄昏泣きなど多くの人が経験する育児の悩みや、なにげない毎日の暮らしが描かれ、「自分もそうだったから懐かしい」「みんな頑張ってるんだ」と共感できるのが本書の魅力。今の自分や過去の自分、もしくは将来の自分を重ね合わせ、家族のあたたかさにじんわりと泣けてくる人は少なくないのではないだろうか。

 また、終盤には、作者が子どもだった頃の思い出が描き下ろされている。本書を読み、どうすればこんなに朗らかなお母さんになれるんだろう…と考えた人は、そのヒントが見つかるかもしれない。

視点の変化で毎日が変わっていく

 大変な1日でも「1個くらい良かったなぁ! 面白かったなぁ! ってことあるやろ。それを描こう」と心に決め、それを見つけようとしているうちに「毎日がちょっと変わっていった」と語る作者。

 筆者もこの本を読み、毎日のしあわせな瞬間に目を向けるようにしてみた。すると、子どもが頑張る姿や自分に向けてくる視線や笑顔に、目が留まるようになった気がしている。いつもは「やらねば」という責任感で凝り固まり、子どものマイナスだと思える一面ばかりに目が向いていたのかも…。

 心がせまくなってしまったときに本書を手に取ると、ほんわか家族のおだやかな日常に心がホロホロと崩れ、気づくと笑顔になれている。

 作者もまた、日々のしあわせを見つけることで、毎日がおだやかなものに変わっていったのかもしれない。作者が描く漫画の中には、いつでも朗らかな家族の姿があり、子どもとの生活とは本来もっとおだやかなものなのかも、と思わされるからだ。

 慌ただしい日々が続いたら、手のあいたときに1分でもいいからこの本を開いてみると、子どもを見る目が変わり、毎日の中にちょっとした良いことや面白いことが見つかるかもしれない。

文=吉田あき

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