“シニアを狙った犯罪”を徹底解説!「ロマンス詐欺」「マイナンバー漏れてますよ詐欺」とは?家族を守る防犯の教科書

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公開日:2023/8/22

60歳から絶対やるべき防犯の基本
60歳から絶対やるべき防犯の基本』(京師美佳:監修/主婦の友社)

 テレビやネットを騒がせている、高齢者が被害に遭う事件のニュース。当事者世代だけでなく、ひとり暮らしや遠方に住む高齢の親がいる人にとっても、シニアを狙う犯罪の巧妙化は悩みの種だろう。大切な家族を犯罪から守りたいと思うのなら、高齢者に必要なあらゆる防犯対策を1冊で学べる『60歳から絶対やるべき防犯の基本』(京師美佳:監修/主婦の友社)がおすすめだ。

 監修は、防犯アドバイザー・犯罪予知アナリストの京師美佳氏。本書では、特に60代以降が被害に遭いやすい犯罪やトラブルを「詐欺」「強盗」「外での危険」という3つのカテゴリーに分けて解説し、その対策や、手軽に取り入れられる防犯グッズを紹介している。

 本書によると、犯罪の被害に遭う年代と性別は、65歳以上の女性がトップだという。宅配便を装った強盗や、情につけこむ募金詐欺やオレオレ詐欺などに逢いやすく、SNSやインターネットなどのパソコン関連のトラブルに巻き込まれるケースも増えているそうだ。本書では被害の体験談も紹介されているが、今すぐ身内に起こりそうなリアリティがあり、危機感が高まる。

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60歳から絶対やるべき防犯の基本 P6-P7

 そこでまずチェックしたいのが、「シニア防犯心得 べからず10カ条」だ。「自分だけは大丈夫と思うべからず」「知らない人が来たら玄関を開けるべからず」といった防犯の基本から、「SNSで旅行、葬式をつぶやくべからず」といった、シニア層にとって意識が薄そうな項目もあるので、家族と一緒にもれなくチェックしたい。

60歳から絶対やるべき防犯の基本 P14-P15

 そして高齢者が特に気を付けるべきは、やはり「詐欺」の被害だろう。本書では、「家の玄関」「街頭」「メール」など、詐欺がやってくる経路を伝えて注意喚起した上で、多様化する詐欺の手口と対策を丁寧に解説。中でも特に高齢の親を持つ世代がチェックしたいのは、インターネットやメール経由の詐欺対策だ。スマホやネットを使い始めて間もない家族には、「GPSはオフにして自宅がバレないようにする」といったアドバイスは、ぜひ伝えるべきだろう。

60歳から絶対やるべき防犯の基本 P44-P45

 また、最近ニュースでも話題の「強盗」を防ぐ方法にも、多くのページが割かれている。実在の帽子や制服を着て宅配業者を装う強盗もいることや、アンケートや電話調査から流出した個人情報から、名前や年齢、資産情報を知られて家を狙われることなど、高齢者ではなくても気を引き締めたくなる情報ばかり。紹介されている強盗対策は、防犯カメラやセンサーライトから、踏むと音がする「防犯ジャリ」を使う方法まで幅広く、すべての家庭に参考になる。「すぐ手に入る防犯グッズ」は章の最後にまとめて紹介されているが、100円ショップで買える安価なものもあるため、明日からでも取り入れられそうだ。

60歳から絶対やるべき防犯の基本 P60

 そのほか、SNSで医師や弁護士を騙る人からコンタクトが届き、愛の言葉を投げかけてその気にさせる「ロマンス詐欺」や、話題のマイナンバーを使って不安を煽る「マイナンバーが漏れていますよ詐欺」など、新しい犯罪手口も紹介されていて興味深い。そういう詐欺があると知らなければ、家族が気を付けることすらできないだろう。まずは手口を知ることが、防犯の第一歩だと気付かされる。

 在宅率が高かったコロナ禍は空き巣などの犯罪が減少したが、外出機会が増えた今は増加傾向にあるという。そして、シニア世代は「人に迷惑をかけてはいけない」という教育を受けてきたため、ひとりで抱え込んでしまいがちだと著者は指摘する。頻繁に連絡を取り合わない親子関係ならなおさらだろう。だからこそ、本書で学んだ防犯対策を、子ども世代が進んで親に伝えることが大切だ。本書を手に取ったことをきっかけに、まずは親子のコミュニケーションから、防犯対策を始めてみてはいかがだろうか。

文=川辺美希