気になる映画が多数登場! 箱入り娘×陰キャ少年の成長と恋を描くコミック『R15+じゃダメですか?』

マンガ

公開日:2023/9/6

R15+じゃダメですか?
R15+じゃダメですか?』(裏谷なぎ:漫画、岸谷轟:企画・原案/講談社)

 あなたは“大人なもの”を初めて感じたのは何だったか覚えているだろうか。マンガなり小説なりドラマなりのラブシーン、という人も多いはずだ。小さいころは意味が分からなかったそういったシーンを、思春期に読んだり目にしたりして衝撃を受け、いろいろな意味で大人への道を一歩踏み出す。

R15+じゃダメですか?』(裏谷なぎ:漫画、岸谷轟:企画・原案/講談社)は、性的なものはもちろん、エンタメの映像作品すらほぼみたことがなかった少女・天羽秋音(あもうあきね)が、映画好きな同級生男子・冬峰かおるに「R15」映画をみせてもらうことから始まる物語だ。彼女はその刺激の強い映画に触れることで少しずつ大人になっていく。

 なお「R15」とは「15禁」とも言われる、映倫(映画倫理機構)が定めた年齢による映画鑑賞制限のこと。その作品の性的、暴力的な表現がやや強いということを示している。ちなみに本作自体はタイトルに「R15+」とあるものの、激しい性的表現は一切ないので安心して読んでほしい。

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わたしもみんなみたいに“えっちな”映画が平気になりたい

 高校1年生の天羽秋音は成績優秀で運動も得意。友達は多く、周囲には頼られ、おまけにモテる、まさに非の打ちどころのない高校生活を送っているようにみえた。

 ただ秋音には“刺激的”なものが苦手という悩みがあった。彼女はドラマのキスシーンすらまともにみることができない。なぜなら母親からすべての娯楽を禁止され、今までマンガを読んだことも映画を鑑賞したこともなかったからだ。同級生たちが自然とそういうものを受け入れているのを羨ましく思い、自分もなんとか克服したいと思っていた。そんな彼女の運命は、映画研究会の部室を訪れたことで変わる。

 秋音は、映研の部員・冬峰かおるが激しいラブシーンをみているところに遭遇した。彼女は強いショックを受けながらも、冬峰に「自分もそれをみたい」と伝える。彼がみせた映画は『愛を読むひと』。『タイタニック』のヒロインで知られる俳優のケイト・ウインスレット主演で、激しいラブシーンが出てくる「R15」作品だ。秋音は過激なシーンに目をそむけたくなったが、物語にひきこまれ、続きが気になり最後までみてしまう。冬峰が声をかけても気づかないほど没頭していた。

 こうして秋音は強烈なラブシーンや血まみれのスプラッターや暴力的な描写のある「R15」映画(※一部全年齢対象作品もある)をみることになる。なお作中で紹介される映画はすべて実名。毎回エピソードの最後にはその映画を解説するページがあり、思わず自分も鑑賞したくなる。本稿のライターは配信サイトを検索してしまった。

 冬峰に薦められるまま、さまざまな作品をみていく秋音。映画自体は面白いと思えるようになったものの、刺激的な描写にはなかなか慣れない。そこは成長できない彼女だが、乗り越えなければならない壁があった。

 それは、映画をみることを許さなかった秋音の母親に、映画研究会への入部を認めさせることだ。

「漫画も映画も許さない」そんな“15歳”を超えている子どもへの干渉。これは抑圧と言っていいかもしれない。この状況に、秋音一人では立ち向かうことができなかったが、冬峰が「家に行かせてほしい。一緒に説得しよう」と言ってきた。かくしてふたりは天羽家へ。

 今まで母親に逆らうなど考えたこともなかった秋音。だが今は「R15」映画もなんとかみられるようになっている。そこで彼女の取った行動とは? まずは物語序盤の山場である3巻までの一気読みをおすすめする。

成長していくふたりの恋の行方にも注目

 冬峰もまた、秋音と一緒に変わっていく。彼はもともと彼女と真逆の人間だ。高校生活を楽しもうとはしておらず、勉強はできない、友達はゼロで他人に興味を持たず、学校では部室で映画をみる日々を送っていた。それが秋音と出会って人との関わりを学び、がらにもなく、秋音の親に会って映画について熱く語り、説得を試みるのだ。またひょんなことから映研に協力関係になった夏凪えな(なつなえな)が映画に興味がないと知ると、冬峰は彼女と一緒に映画館巡りをするなどして、仲良くなっていった。

 そんな彼を巡るラブコメ展開が盛り上がってくるのが最新刊の第5巻。えなは「優しくて気をつかってくれる冬峰が好きだ」と秋音に伝える。その秋音は、冬峰が「映画をみたことがない自分をバカにせず一緒に作品をみてくれた」ことと「お母さんを説得しに家に来てくれた」ことを思い返し、彼への気持ちを改めて考える。さらにこの三角関係に割って入ってくるのが、映研のかなこ先輩こと胡桃沢桜花(くるみざわおうか)。彼女は「変わろうと頑張っていた君が可愛いなと思った」と冬峰に直接告げ、そして……。

 本作は、少年少女の成長を描いた王道の青春ストーリーであり、学園ラブコメディだ。映画好きならよりいいが、映画に詳しくなくてもじゅうぶんに楽しめる。ただ、このマンガを読むことで映画を観たくなるかもしれない。繰り返すが、本作は「R15」ではないので安心して楽しんでほしい。

文=古林恭

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