日本郵便のマスコット・ぽすくまの誕生秘話も。8人しかいない「切手デザイナー」という仕事とは?

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公開日:2023/9/29

切手デザイナーの仕事  ~日本郵便  切手・葉書室より~
切手デザイナーの仕事 ~日本郵便 切手・葉書室より~』(間部香代/グラフィック社)

 メールやチャット、SNSが主流の時代であっても、紙の郵便物による温かみは失われない。葉書や手紙を送るために必要な切手のデザイナーはわずか8人しかいないとは驚く。

 書籍『切手デザイナーの仕事 ~日本郵便 切手・葉書室より~』(間部香代/グラフィック社)は、そんな希少な存在である切手デザイナーたち、そして、日本郵便の切手・葉書室長の証言を収録した1冊だ。

 切手のサイズは“縦2.6cm×横2.2cm”が標準的で、その限られたスペースに切手デザイナーは命を込める。日本郵便への入社後は「一生デザイナー」として活躍、完成した一枚一枚を見ると「誰がデザインしたのかわかるくらいそれぞれに個性がある」と本書で述べるのは、日本郵便 切手・葉書室長の利根川敦氏だ。

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 各々の証言をつむぐと、切手デザイナーのドラマも浮かんでくる。例えば、元サンリオの中丸ひとみ氏は、古巣で日本郵政公社(現・日本郵便)を担当し、2007年の郵政民営化と共に日本郵便へ誘われたという。

 サンリオでは20年以上にわたってキャラクターづくりを担当。新人デザイナーの研修では「消極的なデザインをしなさい。これでもか、これでもかと自分を出してはダメ。誰でもこのような、誰でも使えるようなものを。送る人も、受け取る人も」と、経験にもとづく持論を説いた。

 日本郵便でも、人気キャラクターを開発。おそらく誰もが一度は目にしたことがあるだろう、愛らしいクマのキャラクター「ぽすくま」の生みの親であるとは驚く。

 ぽすくまが初めて登場したのは2012年の秋で、元々は切手に登場したキャラクターだったとは意外だ。誕生のきっかけは、登場の前年に中丸氏がテディベアの切手を社内で提案したことだった。

 テディベアのデザインを考案する過程で、中丸氏は「せっかくだから、テディベアのほかに、可愛い郵便屋さんのクマがいてもいいな」と発案。切手が発売されるとたちまち人気となり、今や、日本郵便を象徴するキャラクターとして広く愛されている。

 本書ではこの他にも貴重な証言が数多く収録されている。そして実は、本稿の筆者がこの本を手にしたきっかけは、郵便の歴史を学べる東京スカイツリー内の施設「郵政博物館」に足を運んだのがきっかけだった。そこに展示される歴代の切手を見学してから本書を読むとさらに奥深さを感じられるので、機会があればぜひ足を運んでいただきたい。

文=カネコシュウヘイ

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