料理研究家のズボラ飯。材料・心・財布が虚無でも美味しいレシピはここにある

暮らし

公開日:2023/10/12

虚無レシピ
虚無レシピ』(リュウジ/サンクチュアリ出版)

・身近な食材や調味料を使った料理が多く、作ることへのハードルが低い
・でも、その食材や調味料の組み合わせに意外性や驚きがある
・しかも、本格派っぽい味になる!

 各種SNSで大人気の料理研究家・リュウジさんのレシピの特徴をまとめると、上記のようになるだろうか。

 筆者もInstagramに表示されたリールなどを見て、そのレシピをいくつも作ってきた人間の1人だ。

 なかでも気軽にトライしやすかったのが、二日酔い&寝起きな雰囲気のリュウジさんが、調理のハードルがメチャクチャ低い料理を披露する「虚無シリーズ」のレシピ。

 そのレシピ集が『虚無レシピ』(サンクチュアリ出版)という書籍にまとまったので、作ってみることにした!

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エビを使わない「虚無エビマヨ」が激ウマ!

虚無エビマヨ

 まず1品目は「虚無エビマヨ」。

 見た目の色はエビマヨっぽく見えるけど、これ、肝心の具がエビじゃない……? と写真を見て感じた方は大正解。

 これはなんと、冷凍のえびシューマイをエビの代わりに使ったエビマヨなのだ! 調味料もマヨネーズ、ケチャップ、砂糖、味の素のみと、極めてシンプルなレシピとなっている。

虚無エビマヨ

 食べてみると、タレがたっぷりかかった部分は確かにエビマヨっぽい味がするし、エビの味も、エビのプリッと感もしっかり味わえる。そのうえ、えびシューマイ自体が完成された美味しさなので、もうメチャクチャうまいのだ!

 もちろん本物のエビマヨとは違う味なのだが、食べれば食べるほどエビマヨを食べているような贅沢な気分になってくる。また、えびシューマイをフライパンでカリッと焼いてからソースと和えているので、食感も何だか本格派っぽい。しっかり美味しいのである。

 ちなみに本書には、このえびシューマイを使ったガーリックシュリンプのレシピもあり、そちらも美味しそうだった。

見た目は虚無でも超ウマい「ガーリックライス」

ガーリックライス

 次は見た目からも「虚無」っぷりが溢れ出ている「虚無ガーリックライス」。パックごはんの容器をそのまま使っている点も含めて、「心が虚無=やる気がゼロ」でも作れるレシピといえるだろう。ソーセージもレンチンしてのせるだけだ。

 そして食べてみたら、これもメチャクチャうまかった。ごはんにはバター、おろしにんにく(チューブも可)、味の素、醤油、塩、黒胡椒が混ぜ込まれているのだが、混ぜた段階で殺人的に良い匂いが漂ってくる。

 口に入れるとまず感じるのは、バターごはんのまろやかな口当たり。そこから噛めば噛むほど、ガーリックの強烈なうまみ、たっぷり入った黒胡椒のスパイシーな風味が口の中を埋め尽くしていく。ソーセージはレンチンだけでもパリッと食感でやっぱり美味しい。

 半分を奥さんに試食してもらう予定だったが、思わず半分以上を食べてしまうほどの美味しさだった(奥さんも食べて気に入ったようで、食べすぎたことを後で怒られた)。

 このレシピのように「見た目は映えないけど、とにかくウマい」というのは、リュウジさんの虚無レシピの特徴だ。

レンチンなのに本格派の味の「虚無ピーマン」

虚無ピーマン

 お次は「虚無ピーマン」だ。

 油でテカッテカなピーマンの表面だけで、もう食欲をそそられるのだが、このレシピは包丁すら使わない。ピーマンと調味料(バター、醤油、オイスターソース、砂糖、味の素)を耐熱ボウルに入れて、ラップをしてレンチンするだけだ。

 それでも味は抜群に美味しい。バター醤油にオイスターソースと味の素が加わったことで、舌が感じる旨みがより複雑なものとなり、メチャクチャ本格派っぽい味がするのだ。調理工程を見せなければ、これはレンチンで作ったとは信じてもらえないだろう。

 リュウジさんの虚無レシピは、「手間ひまかけたら美味しい」という幻想を打ち砕いてくれるレシピでもあるのだ。

材料を聞いて驚く「虚無クレープアイス」

虚無クレープアイス

 最後にスイーツも一つということで、「虚無クレープアイス」も作ってみた。

 食べてみると、「これ本物のクレープアイスじゃない?」と言いたくなる味なのだが、アイスの外側に巻かれているのは、実は春巻きの皮。水を全体になじませて巻いてあげるだけで、アイスバーがクレープアイスに早変わりしてしまうのだ。

 さらにチョコソースなどをサッとかければ、6本入りや8本入りで格安のアイスバーも、ちょっとしたごちそうデザートに早変わり。春巻きを作るとき、余った皮で作ってデザートに出したら、家族に喜ばれること間違いなしだ。

 なおリュウジさんの虚無レシピの「虚無」には3つの意味があるそう。

 まずひとつは、ほぼ具なしだったり、使う食材が1~2品だったりと、「材料が虚無」でも作れるということ。なお、食材と工程が極限まで削ぎ落とされているため、アレンジでの味変は無限大だ。

 2つめは「心が虚無」でも作れること。二日酔いの日、何のやる気も出ない日、失敗して落ち込んだ日……。そんな心が虚無の状態でも、最低限の頑張り(調理は数分、洗い物も最低限)で作れるレシピということだ。

 3つめは、「財布が虚無」でも作れること。本書には1食100円以下の超リーズナブルなレシピも多く、節約にも役立つレシピでもあるのだ。今回紹介したレシピ以外にも、お財布や心に優しいレシピばかりが揃っているので、ぜひ皆さんも購入して作ってみてほしい。

文・料理・写真=古澤誠一郎