若くして死んだ叔母が頻繁に夢に出てくる。毎晩ぴったり3時に目が覚める38歳女性の「夢」の話

マンガ

更新日:2023/11/1

わたしの夢が覚めるまで
わたしの夢が覚めるまで』(ながしまひろみ/KADOKAWA)

 職場でもプライベートでも疲弊し、自分の在り方を見失ってしまうことが、私たち大人にはある。そんな日は“夢の世界”に浸り、現実社会で感じている心のモヤモヤを癒してみてはいかがだろうか。

 夢をテーマにした『わたしの夢が覚めるまで』(ながしまひろみ/KADOKAWA)は、言語化できない葛藤を抱え、眠れない日々を過ごしている人におすすめしたい作品だ。

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 本作は、ダ・ヴィンチWebで配信された人気作。24ページもの描き下ろし作3本を加えて、書籍化された。

 主人公は、38歳の会社員「その」。そのは小さい頃から眠ることが好きだったが、近ごろは眠りが浅く、夜中の3時ぴったりに目を覚ますようになってしまった。そんな日々の中で日課になったのは、2度寝するまでの間に浅い眠りの中で見た夢をウトウトと思い出すこと。

 そのが見る夢は、実に様々。地元から姪っ子が泊まりに来た日に見たのは、学生時代の先生や友人、前職の同僚が一緒に登場する、時代がごちゃ混ぜな慰安旅行の夢。

わたしの夢が覚めるまで

 生理痛に悩まされ、「もう毎月、必要ないのに」とぼやいた日には、重力など感じずに知らない子どもと楽しく空飛ぶ夢を見た。

わたしの夢が覚めるまで

わたしの夢が覚めるまで

 こうした不思議な夢を通して、そのは自分の日常や歩んできたこれまでを振り返ったり、何気ない日々の中にある尊さに気づいたりしていくのだ。

 また、そのは夢を通して、憧れていた叔母への想いも整理していく。叔母のさきちゃんは、38歳という若さで逝去した。

わたしの夢が覚めるまで

 強い思いがあるからか、さきちゃんは頻繁に、夢に登場。夢の中で、そのはさくちゃんと楽しく会話を交わし、懐かしい思い出や彼女を慕う感情を噛みしめ、受け止め切れていなかった「大切な人の死」という現実と向き合うようになっていく。

 そうした中で、そのはさきちゃんの思わぬ死の真相を知ることに…。そのは衝撃を受けるが、それを機に自分の中にある不安に気づき、心が悲鳴をあげない生き方を改めて考えるように。日常も少しずつ変化していく。

 そのが見る夢は、現実との繋がりがあることも。そのため、読者は夢と現実の狭間を漂っているような心地よい浮遊感を楽しむことができる。また、夢を通して成長していくそのの姿からは、学ばされることも多い。目を閉じて見る夢は、目を開けて見る“未来の夢”に繋がることもあるのかもしれないと思え、前向きな気持ちで「今」と向き合いたくもなるのだ。

 なお、本作には自分の生き方を考えさせられる言葉も多々描かれており、胸にグっとくる。

わたしの夢が覚めるまで

 納得できる人生を送るには、どうしたらいいのか。そんな難しい問いに自分なりの答えを下すヒントが、この物語には詰め込まれているように感じられた。

 作者は描き下ろし作として、そのの友人・ともの夢や同僚の薄井くん、叔母のさきちゃんの夢も収録。それぞれが見る十人十色な夢は心にじんわり染み、明日の生き方を考えるきっかけを授けてくれるだろう。

 今夜見る私の夢には、自分のどんな本心や欲望、弱音が隠れているのだろうか。そうワクワクさせてもくれる本作を、眠れない夜の処方箋にしてほしい。

文=古川諭香


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