「チェリまほ」で話題！ 30歳まで童貞、魔法使いになった男が同僚の恋心に気づき…胸キュンボーイズラブコメディ

「30歳まで童貞だと魔法使いになってしまう」という都市伝説のような話を聞いたことがあるだろうか。もし、30歳を過ぎて得られた能力が、「触れた人の心が読める」だったとしたら、他人の心の内を知れて面白いかもしれない。一方で、マイナス感情にさらされて参ってしまったり、人の本音とタテマエのギャップに気を病んでしまわないか心配になる。

　もしも、触れた相手が自分に恋をしていたら？ それが思いもよらぬ相手や同性だったら？ そんな話が詰まった胸キュンと笑いに溢れたボーイズラブコメディ『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』（豊田悠/スクウェア・エニックス）をご紹介したい。

恋の行方に目が離せない！ 読書中はドキドキとニヤニヤで顔面の筋肉フル稼働

　30歳で魔法使いになった冴えない会社員の安達清（あだち・きよし）は、触れた相手の心が読めるようになる。同期のイケメン敏腕営業の黒沢優一（くろさわ・ゆういち）が、自分を好きだと気付いた安達は、彼の心の声にドキドキしてしまう。黒沢は飄々とした顔をしていても、内心は……

“うわーー～ すげー近い すげー可愛い すげー好き”

　表と中身のギャップが面白い。黒沢の家に泊まった時には、パジャマを貸してくれるのだが、

“安達が着たら可愛いだろうなと思って妄想用に買っておいたパジャマがまさか役に立つとは…”

　このように知りたくないことを知るハメになるギャグ的エピソードもある。30年間恋愛経験がない安達は、黒沢の優しく思いやりのある態度と心の声に翻弄されていく。

　さらに、飲み会の王様ゲームでキスをすることになった時には、

“しかし皆悪ノリしすぎだよな
男同士でキスとかさ
普通嫌だよな
なあ？”

　と黒沢は語るが、触れた腕から伝わってくる想いは……、

“ごめん
好きになって”

　ベタ過ぎるほどベタだが、これほど胸にくるものもないだろう。安達は、だんだんと彼が嫌ではなく、もっと知りたい存在だということに気付いていく。

　もし、相手の声が聞こえなかったらこの恋は始まらなかったのではないか。ずっと片想いが続くだけで、何も進展しなかったのではないだろうか。「触れた人の心が読める」ことが強烈なスパイスとなり、男2人の恋路を彩っていく。

　この物語の萌えポイントの1つは、安達目線の時の黒沢のアングルがエモ過ぎるということ。顔を絶妙な角度で傾け覗き込む描写よ。影のかかったイケメン、ふわっと揺れる髪の毛ときたら、今まで男性が恋愛対象でなくても胸がざわめき、恋に落ちそうになる。安達になったつもりで恋される夢の時間を楽しむも良し、口角が上がりっぱなしで2人の恋路を楽しむも良し。

「チェリまほ」と呼ばれている本作は、「全国書店員が選んだおすすめBLコミック2019」1位に輝き、シリーズ累計発行部数は260万部を突破している人気作だ。作者曰く、きっかけはX（旧Twitter）になにげなくあげた4Pのマンガだったそう。そこから人気が出て本になり、ドラマや映画にもなった。実写は、赤楚衛二が安達を、町田啓太が黒沢を好演し、視聴者の心を鷲掴みにした。そして、遂にアニメ化決定！ 2024年1月からテレビ東京ほかで放送開始となり、声優は小林千晃が安達、鈴木崚汰が黒沢を演じる。

　ハマると楽しい沼が待つ、チェリまほの世界へようこそ。

文＝山上乃々