「鳥がらスープ、オイスターソース、豆板醤…すべていりません!」自宅で簡単に作れる、中国の家庭料理“家中華”が詰まったレシピ本

暮らし

公開日:2024/1/3

手軽 あっさり 毎日食べたい あたらしい家中華
手軽 あっさり 毎日食べたい あたらしい家中華』(酒徒/マガジンハウス)

 どんなお店で食べてもほぼ外れナシで、いつでも食べたい中華料理。

 チャーハンなど家庭でも作れるポピュラーな料理は多いが、いざ本格的なものを作ろうと思うと、調味料を揃えるのが大変なのが難点だ。

 豆板醤や甜麺醤は今ではスーパーで手に入るが、買ったら量を持て余すし、いざ使おうと思うと賞味期限が切れていたり、そもそも買っておらず冷蔵庫になかったりする。

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 そして味覇(ウェイパー)などの中華だしに頼れば“それっぽい味”は作れるが、どんな料理も中華だし味になってしまう(まあ、それでも美味しいので別に問題ないのだが笑)。

 ……という悩みを抱えていた筆者が、「これは欲しい!!」と思ったレシピ本が『手軽 あっさり 毎日食べたい あたらしい家中華』(酒徒/マガジンハウス)。というのも、この本の帯には「鳥がらスープ、オイスターソース、豆板醤…すべていりません!」との文字が書かれていたのだ。

 著者の酒徒(しゅと)さんは中華料理愛好家で、大学時代の旅行や留学で本場の中華料理を食べまくり、その後は北京・広州・上海で10年にわたって中国駐在員を経験。その期間にも中華料理を食べまくり、それをノートに記録しまくっていたスゴい方だ。

 この本でレシピを紹介しているのは、そうして記録した料理のなかでも、素朴で温かい中国の家庭料理。だからこそ味付けもシンプルで、調味料も少なく、あっさり&やさしい味で、油も少ないレシピが並んでいるのだ。

 さっそく購入して何品か作ってみることにした!

涼拌竹筍(筍の冷菜)

涼拌竹筍(筍の冷菜)

 まず作ってみたのは、メチャクチャ簡単そうだった「涼拌竹筍」(筍の冷菜)。

 作り方はというと、タケノコ(水煮のものでOK)を乱切りにして和えるだけ。調味料は塩、砂糖、ごま油のみとシンプルで、あとは小口切りにした小ネギを加えるのみだ。

 食べてみると、これしか手間をかけてないのに何だか本格派っぽい味になっている。たとえるならば、スーパーで瓶詰めで売っている穂先メンマから様々な調味料を削ぎ落とし、シンプルを極めたような味だ。味付けが塩と砂糖だけになると、ごま油と小ネギの風味が際立ち、タケノコの水煮が気の利いた冷菜になってしまうのがスゴい!

蒜蓉炒西蘭花(ブロッコリーのにんにく炒め)

蒜蓉炒西蘭花(ブロッコリーのにんにく炒め)

 炒めものも作ってみたいなぁと思い、こちらも簡単そうな「蒜蓉西蘭花(ブロッコリーのにんにく炒め)」も作ってみた。「野菜一品だけの中華の炒めものを美味しく作れるようになりたい……!」というのは筆者の積年の願いだったが、これは本当に美味しく作ることができた。

 コツは、ブロッコリーを下茹ですることや、油を多めに使うこと(ブロッコリー1株に対して炒め油が大さじ2)。ブロッコリーを下茹ですることで、火が通らず硬すぎたり、逆に焦げ付いたりするリスクも軽減でき、炒める時間も短めにできる点が、素人にも作りやすいと感じた。

 そして、油をしっかり使ってニンニクを効かせたこの炒めものは、野菜だけなのに肉料理のように主役のおかずになれる。ブロッコリーの傘の部分が油をタップリ吸ってジューシーになっていて、食べごたえが抜群なのだ! 「丼にしてもイケる!」と思うくらいご飯が進んだので、本書を購入した人はぜひ作ってみてほしい。

蒜蓉蒸茄子(にんにく風味の蒸し茄子)

蒜蓉蒸茄子(にんにく風味の蒸し茄子)

 こうした中華料理のレシピを見ると、「結局は油をたくさん使わないと美味しくならないのかよ!」と思うかもしれないが、本書には油をあまり使わないレシピも多数紹介されていた。

 その一例が「蒜蓉蒸茄子」(にんにく風味の蒸し茄子)だ。

 こちらは細長く切った茄子にみじん切りのニンニクを散らして10分ほど蒸し、黒酢ベースのタレをかけて食べる料理。タレには小さじ2のごま油が入るが、使う油はそれだけというヘルシー中華だ。

 最後に小ネギも振りかけるので、油は少なめでも風味は豊か。茄子はアツアツでとろっとしているが、酸味も効いていてサッパリした味で、どんどん箸が進んでしまう。茄子を4本使ったが、妻と一緒に食べ始めたら数分のあいだに皿は空っぽになってしまった。

 本書の写真通りに作ると「店の料理っぽい」見た目にもなるため、こちらも食事の主役になり得る一品といえるだろう。ちなみに少しだけタレや調味料の違う冷菜バージョンの蒸し茄子のレシピも本書にはあったので、今度作ってみたいと思っている。

肉末蒸蛋(豚ひき肉の茶碗蒸し)

肉末蒸蛋(豚ひき肉の茶碗蒸し)

 もう一つ蒸し料理として、本書の表紙の写真にもなっている「肉末蒸蛋」(豚ひき肉の茶碗蒸し)も作ってみた。こちらは中国の家庭では定番中の定番の料理だそう。

「茶碗蒸し」と聞くと何だか作るのが大変そう……と身構えてしまう人が多いだろうが、こちらのレシピは極めて簡単。具は豚ひき肉のみで、手間といえるのはひき肉に醤油と紹興酒で下味をつける部分くらい。あとは20分ほど蒸して、仕上げに醤油とごま油をたらし、小ネギを散らしたら完成だ。

 ちなみに「その『蒸す』っていうのが面倒そう!」と思う人もいるかもしれないが、本書では蒸籠(せいろ)や中華鍋を使わない蒸し方も紹介。簡単に言えば、深めのフライパンに「台」になるものを置いてお湯を沸かし、その上に皿を乗せ、蓋をして蒸す……という方法だ。台は「蒸し台」として売られている製品ではなく、小皿でもザルでもOKだそう。筆者は小皿を使ったが問題なく蒸すことができた。そして、茶碗蒸しを自分で作れることにもびっくりした。

 肝心のお味はというと、醤油と塩のみの味付けながら非常に滋味深い味わい。卵そのものの甘みも感じられ、食べてくれたお義母さんも「何だか凄く上品な味ね!」と美味しそうに食べていた。老若男女に好まれそうな味で、なおかつ簡単なので、今後もよく作る料理になりそうだ。

美味しくて本当に毎日作ってしまった!

 ……と4つほど料理を紹介してきたが、実はこの1週間ほどのあいだに他にも作ったレシピは複数。文章が長くなりすぎたので内容は割愛するが、「小葱拌豆腐(小ねぎの中華冷ややっこ)」「拍黄瓜(きゅうりの冷菜)」「青椒肉片(ピーマンと豚肉の炒めもの)」などなど、どれも簡単かつ美味しくできるレシピばかりだった。

小葱拌豆腐(小ねぎの中華冷ややっこ)
小葱拌豆腐(小ねぎの中華冷ややっこ)

青椒肉片(ピーマンと豚肉の炒めもの)
青椒肉片(ピーマンと豚肉の炒めもの)

拍黄瓜(きゅうりの冷菜)
拍黄瓜(きゅうりの冷菜)

 このように色々なレシピを作ってみてわかったのは、『手軽 あっさり 毎日食べたい あたらしい家中華』で紹介されている料理は、本当に毎日でも食べたいものが多く、なおかつ毎日でも作れるものが多いということ。中華のレシピは1度作ってみるのは楽しいものの、2度3度とは作らないものが多かったが、本書のレシピは家庭の定番として長く生き残っていきそう。中華料理を自宅で、無理せず、気軽に作りたいという人には超絶オススメしたい1冊だ。

文=古澤誠一郎