風呂で髪のトリートメントを最後に流す人は要注意? シンプルでわかりやすい自分を大切にケアする美容の教科書

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更新日:2024/1/24

一生ものの基礎知識 美容の教科書
一生ものの基礎知識 美容の教科書』(神崎恵/講談社)

 あるイベントの仕事で、大学の構内で美容製品メーカーのプロモーションをした経験がある。そのメーカーが出している、有名なブランドのシャンプーとトリートメントのサンプルを学生たちに渡しながら、髪にどのような効果を与えるのか説明するという業務内容で、たくさんの学生たちと話した。印象に残ったのは数人の学生から「トリートメントってどんな時に使うものなんですか?」「順番はいつですか?」と質問があったことだ。一方で説明を聞いてから質問をすることなく、うれしそうにサンプルをもらっていく学生もいる。ヘアケアを含めて美容に対してどの程度の知識があるかは、人によって大きく異なると気づく機会になった。

一生ものの基礎知識 美容の教科書』(神崎恵/講談社)は、タイトルだけ見ると、美容についてあまり知らないけれども興味があるといった人たちを主なターゲットとしているように感じられる。たしかにあの日、ヘアケア製品の説明を受けて「どんな時に?」「いつ?」と聞いてきた学生のような人たちが、美容に興味を持った時の指南書としてふさわしいだろう。もちろん大学生などの若い世代だけではなく、「美容について基本的なことを知らないまま社会人になったけど、今さら人には聞けない」といった人たちにもおすすめだ。しかし、美容に関する情報に敏感な人も、あらためて基礎について振り返りたくなることがあるのではないだろうか。

 つまり本書は、美容に興味のある人たちすべてにとって読む価値があるのだ。スキンケア、メイク、ヘアケアなど美容に関する章ごとに大切なポイントが大きな文字で書かれていて、説明の中にはイラストもあるのでわかりやすい。忙しい人でも、必要な時に自分にとって必要な項目をすぐ開いて短時間で網羅することができるだろう。

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 私自身、本書を読んでから変化したことがあったので例としてあげたい。この数年、取材や打ち合わせの仕事などで必要な時だけメイクをして、ふだんはスキンケアに力を入れている私は、メイクの方法や最新のメイクについては無知に等しいが、スキンケアの基礎知識は「完全に」頭の中に入っていると確信していた。しかし本書によって「完全に」という思い込みが大きく揺らいだ。特に本書で知ってからすぐに日常生活に取り入れたのは2点である。ひとつはクレンジングや洗顔でシャワーを使うと肌の刺激になるので、シャワーで洗い流すのは避けるべきだという点、もうひとつは髪についたトリートメントを洗い流してから、顔と体を洗うべきだという点である。

 本書を読むまで、私の風呂場でのいつもの手順は、まずはメイクをした日はクレンジングをし、していない日は洗顔料で顔の汚れを落とす。洗面台で顔を洗う場合もあるが、風呂にあるシャワーで洗顔をすることも多い。シャワーのお湯の強さが、顔への刺激になってしまうなんて思ったことがなかった。次に私は、髪の汚れを落とすために地肌を洗うことを意識してシャンプーをする。その後、シャンプーをしっかりと洗い流してタオルで水気を切ってからトリートメントをつける。シャンプーをしてからトリートメントをつけるまでの流れは、ヘアケアの方法として間違っていないようだ。

 最大の過ちはその直後に私がすることだった。トリートメントを流さずに髪につけたまま、ボディウォッシュで体をこすり、最後はシャワーを髪にかけて、トリートメントと体についたボディウォッシュを同時に洗い流していた。髪にシャワーをかけてトリートメント剤を洗い流すと、そのトリートメント剤が体や顔についたまま汚れとして残る可能性は考えたことがなく、時間の節約を重視していたのだ。

 本書を読んだ日、得た知識をもとにシャンプーとトリートメントを済ませて髪を洗い流したあと、シャワーを使わずに洗顔をした。それからボディウォッシュで体を洗ってみた。実際にやってみると、クレンジングや洗顔を洗い流すときに、勢いの良いシャワーを使えば刺激になってしまうことがわかった。また、トリートメントを洗い流す時に顔や体がトリートメント剤で汚れていく感覚を始めて認識した。今までなぜ自覚がなかったのだろうと自分のことながら驚いた。髪をすべて洗い流してから、シャワーを使わずに洗顔をして、再び風呂場に戻って体を洗う。こういった少しの手間をかけるだけで、顔や体にほとんど負担のかからないスキンケアができるのだ。これは他人から見ると美容の基礎知識なのかもしれない。しかし私はその基礎を知らなかったのである。

 本書には、ほかにも自分の知らない美容の知識がたくさん載っていた。スキンケア商品は、最低2カ月は使い続けてから自分に合うかどうか決めること、メイクをすることに息苦しさを感じる人は、メイクを始める前に「疲れて見えない」「健康的に見える」を主目的にして、アイブロウ(眉)・リップ・チークだけでも良いというくだりを読めば気が楽になるはずだ。また、メイクに詳しい人にとっても役立ちそうな内容が多かった。例を挙げると人の印象が決まると言われている眉は、自分の顔立ちに合う形が限られているのでトレンドに惑わされず、基本的に抜かない・切らないといった点である。私の周囲の美容に関心がある人たちも、「いちばんメイクでこだわっているのは眉」とよく言っていたので、彼らにも本書を紹介したくなった。

 美容の初心者はもちろん、美容に詳しい人にも自分の知識を見直すチャンスをくれるのが本書の魅力だ。家に一冊置いておくことで、美容について悩んだ時、初心に返ることができるだろう。

文=若林理央

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