『薬屋のひとりごと』最新14巻の見どころ紹介。シリーズ累計2700万部突破&TVアニメ放送中!

文芸・カルチャー

PR公開日:2023/12/8

薬屋のひとりごと
薬屋のひとりごと』(日向夏:著、しのとうこ:イラスト/イマジカインフォス)

 2023年秋にスタートした百花繚乱のTVアニメのなかで、ひときわ話題になっているのが「薬屋のひとりごと」である。本記事では、その原作の『薬屋のひとりごと』(日向夏:著、しのとうこ:イラスト/イマジカインフォス)をご紹介したい。

 とある国の後宮、宮廷周辺で起こるさまざまな事件を、少女・猫猫(マオマオ)が薬や医学知識を武器に解決していく物語だ。放送前後には、深夜にもかかわらずSNSのトレンドにもなっている。本稿のライターもリアルタイムで視聴しているが、謎解き展開はもとより、美しい作画、迫力ある劇伴、猫猫役の悠木碧さんや壬氏役の大塚剛央さんをはじめとした声優陣も魅力的だ。

 すでにコミカライズもされており、シリーズ累計2700万部突破の本作。本記事ではストーリーの概要と、発売したばかりの小説最新14巻のポイントを紹介していく。

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大人の愛憎と欲望が顕在化する花街と宮廷を舞台にした物語

 花街で生まれ育った17歳の少女・猫猫(マオマオ)は人さらいにかどわかされ、後宮の下女として働くことになる。冷めた性格の彼女は、おとなしく仕事をこなし、年季があけて自由になるのを気長に待っていた。

 猫猫が働く後宮と宮廷は、華やかだが愛と死、嫉妬と裏切り、そして陰謀がうずまき、大小さまざまな事件が発生していた。彼女はそんな事件の謎解きと解決に尽力する。猫猫はドライだが強い知的好奇心と、理不尽さに対しての怒りの感情をもっていたからだ。また猫猫は文字を読むことができ、宦官の元医官だった養父の影響で薬学に通じていた。その能力を見抜いたのが、自他ともに認める美しき高級宦官・壬氏(ジンシ)だ。猫猫は、ときには自らの意思で、ときには壬氏の命を受けて事件に挑む。

 後宮と宮廷は国を支えているものの、欲望を表面化させる花街の対比と類似点が描写され、そこで浮き彫りになる大人の愛憎劇が本作の魅力のひとつだ。それらをクールに見つめ、分析する猫猫。そして彼女を支える壬氏。彼らが巻き込まれ、待ち受ける運命とは。巨大な陰謀とは――。

「名持ち」の一族同士の秘めた真実、花街で起きた盗難事件、“ご落胤”の謎に絡む陰謀

 14巻で猫猫は「名持ち」の一族の会合に参加する。「名持ち」とは、皇帝によって一族を表す「名」を与えられた者たちのこと。猫猫は「羅」の一族のひとりとして、父やきょうだいたちと会合に顔を出す。そこで彼女は、元上級妃である里樹の実家である「卯」の一族とかつて親交があった「辰」の一族と対面する。そこで聞いたのは、かつて皇帝より「辰」一族が賜り、今は持ち去られたとされる「四本指の金龍」にまつわる話だった。猫猫は、失われた「金龍」の真実にたどりつけるのだろうか。

 時を同じくして、猫猫の実家ともいうべき花街の妓楼「緑青館」に盗みが入る。狙われたのは「緑青館」の三大美姫のひとり、女華が持つ割れた翡翠の「玉牌」であった。そもそも「玉牌」は帝の血筋の者が持つ証のようなもの。女華は「実は高貴な生まれだ」と言ってはいたが、本人も「ご落胤商売」だったと認めていたはずだった。しかしその「玉牌」が本物だったとすると話が変わってくる。そしてこのことを確かめにきたのは一体何者なのか。

 また猫猫は、西都からおよそ1年ぶりに中央へ戻ってきて医官の手伝いを始めている。そのころ宮廷内では、皇太后・安氏派と皇后・玉葉妃派という二つの派閥が対立を深めていた。安氏と玉葉妃の意思は関係なく周囲の緊張は高まる一方で、先に登場した「名持ち」の若い武官たちの間では衝突が絶えず、猫猫たちのもとへひっきりなしにケガ人が運び込まれていた。そしてついに皇太后派の若者たちが「狩り」の名のもとに集まり、ある行動に出る……。

 いくつかの小さな事件や出来事が、一本の糸で点と点がつながるようにかかわりあい、大きな陰謀につながっていく。西都から戻った13巻から描かれていた“からまった謎”がきれいにほどけて、明らかになるのに注目だ。

 さて物語にはもうひとつ、大きな要素がある。それは猫猫と壬氏の恋の進展である。長い付き合いで年齢も上がってきているふたりに、ファンはやきもきさせられっぱなしだろう。今回もふたりのちょっとした会話にニヨニヨとしてしまった、とだけ書いておく。

 まだアニメしか見ていない方にも、コミカライズ版派の方にも、原作小説はおすすめだ。世界観や登場人物の心理などが丁寧に描かれているのはもちろん、猫猫たちの最新の活躍が楽しめるからだ。作品を見始めれば、あるいは読み始めれば、続きが気になってどんどん先が知りたくなってしまうはずだから。少なくとも私は、次巻が待ち遠しくてたまらない。特にこの14巻のヒキは……ああ、ネタバレになるのでこれ以上は書けない。ぜひ読んで確かめてみてほしい。

文=古林恭

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