ワンパンとは思えない… 濃厚なうまみが凝縮されたパスタが完成! 料理全般の理解とスキルが上がる『究極のうまみレシピ』を作ってみた

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PR公開日:2024/1/6

究極のうまみレシピ
究極のうまみレシピ』(朝倉駿/飛鳥新社)

 筆者が考える「良いレシピ本」の特徴は、ただ美味しい料理を作れるだけでなく、「なぜ美味しくなるのか」の原理を学ぶことができ、料理全般の理解やスキルが上がる本だ。

 その点で、元イタリア料理店店長が54種のレシピを教えてくれる『究極のうまみレシピ』(朝倉駿/飛鳥新社)は、非常に良いレシピ本だと感じた一冊だ。

 本書のレシピは「この工程やひと手間がなぜ必要なのか」「その手順を入れることで、どうして美味しくなるのか」が説明されているものが非常に多い。そして冒頭近くには、「『煮詰める』とうまい!」「『焦げ目』がうまい!」「『塩』で引き出すからうまい!」といった、複数のレシピに共通する「美味しくなる理由」が列挙されたページもある。

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究極のうまみレシピ
『究極のうまみレシピ』より

 つまり、本書を読みながらいくつかのレシピを作ることで、他の料理にも応用可能な「美味しい作り方」を体得できる作りになっているのだ。実際にいくつかのレシピを作ってみた感想も交えながら、本書の面白さを探ってみよう。

パスタづくりの実力が1ランクUPする

 著者がイタリア料理店の元店長ということで、本書の前半にはパスタのレシピが多く並ぶ。Instagramで長く流行中のワンパンパスタ(フライパンひとつで作れるパスタ)も紹介されているが、「麺にうまみを吸わせて絡めるのが得意なワンパンパスタは案外正解!」と、ワンパンパスタが美味しくなる仕組みもしっかり紹介されていた。

究極のうまみレシピ
定番のカルボナーラをワンパンで作るレシピも紹介されている

 そのなかで筆者が実際に作ってみたのは「ワンパンクリームボロネーゼ」。ひき肉を使うボロネーゼは面倒そうな印象があるが、このレシピは水と牛乳でパスタをワンパンで煮込んでできるため、非常に簡単だ。

 そして簡単なレシピの中にも「美味しくするためのコツ」が複数詰まっている。たとえワンパンパスタでも、みじん切りの玉ねぎはしんなりするまで炒めて、甘みを引き立てる。ひき肉は焦げ目や肉から出た脂も「うまみ」にするため、あえてほぐさずに表面をじっくり焼く。たっぷり使った牛乳はパスタを茹でながら煮詰める……。

 こうした「ちょっとした手間」を意識的にかけることで、クリームソースに濃厚なうまみが凝縮された、ワンパンとは思えないめちゃウマなパスタが作れてしまって自分でも驚いた。

究極のうまみレシピ
玉ねぎの甘さ、ひき肉の香ばしさ、そして肉から出た脂と煮詰めた牛乳のうまみが凝縮されたソースが絶品!

 筆者の妻も「お店みたいな味!」と喜んでいたが、調理で時間がかかるのは玉ねぎとニンニクをみじん切りにする工程くらい。おうちパスタとしては手軽なうえに満足感が非常に高い一皿だった。

 ちなみに「煮詰めてうまみを凝縮させる」という手順は、本書のホールトマトを使ったパスタでも使われているもの。「肉に焦げ目をつけて、そこから出た脂もうまみにする」というコツはカルボナーラのベーコンを炒める際にも強調されていたポイントだ。こうしたレシピを一通り作れば、パスタづくりの実力は確実にワンランクUPできるわけだ。

そぼろは「泡だて器でほぐす」とふわっと仕上がる

 なお、上のボロネーゼのレシピで提示された、「ひき肉はほぐさずに炒めて焦げ目を付けて、うまみを引き出す」という方法は常に正解なわけではない。たとえば「ふわふわ鶏そぼろ丼」というレシピでは、鶏ひき肉を泡だて器で丁寧にほぐしながら「肉一粒ずつにうまみを入れていくイメージ」で煮込んでいく。目指す味のイメージによって、同じ食材を使う場合でも「うまみ」の引き立て方は変わるわけだ。

究極のうまみレシピ
「菜箸を何本も使ってほぐす」という方法は他のレシピサイトで見たことがあったが、こちらの泡だて器のほうが断然ラクだった

 そして出来上がったそぼろは、肉が塊にならずに一粒一粒が立っていて、本当にふわふわ。さっぱり食べやすい味で、生の卵黄を載せた丼ぶりにすると、優しい味のご馳走になった。

究極のうまみレシピ
本書のそぼろ丼のレシピでは卵の黄身だけを中央に落として食べる。さっぱり味だけど贅沢気分の丼に!

「弱火でしゃぶしゃぶ」で牛丼の肉も柔らかに!

 肉のレシピでは「ふんわりの牛丼」も勉強になった。牛丼と聞くと、まず頭に浮かぶのは大鍋で玉ねぎと一緒にホロホロになるまで煮込まれたチェーン店の牛肉。そのため「牛丼=時間をかけて煮込むもの」というイメージを筆者は勝手に持っていたが、この本のレシピでは牛肉を「弱火でしゃぶしゃぶ」したうえで一度取り出す。その手順が必要な理由として、「加熱しすぎると牛肉は固くなり、うまみも抜ける」ということもしっかり紹介されていた。

究極のうまみレシピ
もう少し赤みが抜けた状態で肉は取り出す。それから中火で沸騰させてアクを取った後、再び肉を戻して仕上げる

 レシピ本では焼いたり煮たりした肉を一度取り出すレシピが時々ある。ただ「一度取り出す」と書かれているだけだと、ズボラな筆者は「面倒だなぁ。入れたまま調理しちゃえ!」と手順を端折ってしまうこともあったが、このように理由が説明されていると「ちょっと面倒だけど、やってみるか」となるのだった。

究極のうまみレシピ
お肉がしっとり柔らかな牛丼ができました!

 そして実際にできた牛丼は、自分で作ったものとしては過去イチの美味しさ。牛肉はやせ細って固くなったような部分もなく、しっとり柔らか。お肉の噛みごたえと美味しさをしっかり味わえる牛丼に仕上がっていた。

セオリーの逆! 鶏もも肉を「あえて身から焼く」狙いは?

 また「ヤバいチキンソテー」も作り方が面白かったレシピだ。鶏もも肉の焼き方は「皮目から焼く」のが定番。筆者が最近読んだ評判のレシピ本も皮目から焼いていたが、本書は皮目を上にして身から焼く。「最初に身のほうを焼いて、うまみを閉じ込める」というのが狙いだそうだ。

究極のうまみレシピ
身の側からまず焼くことでうまみを閉じ込める

 またこのレシピでは、「脂が多すぎると塩が入りにくくなるので、皮目を焼いたら、出てきた脂を適度に拭き取る」といったポイントも解説されている。他の本やサイトのレシピでも「余分な脂は拭き取る」と書かれていることが多いが、「なぜ拭き取るのか」の理由は初めて知ったので、こうした点も勉強になった。

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後から皮目も弱火でじっくり焼くため、皮の仕上がりもパリパリに!

 そして仕上がったチキンソテーは、身がふっくらとしていて、噛むと非常にジューシー。皮目からじっくり焼くレシピとは、また違う美味しさを味わえるチキンソテーだった。

 なお筆者が試したレシピは、本書の中でも比較的短時間で手軽に作れるものが中心。より時間と手間をかける本格派のレシピも収録されているので、料理の中上級者の方もぜひ手にとってみてほしい。

調理・文=古澤誠一郎

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