ニュージーランドでは会話中に相槌を打つと失礼? 日本の「ふつう」を見直すキウイ流暮らし方のヒント

文芸・カルチャー

公開日:2024/1/24

ニュージーランドの大らかで自然に寄りそう暮らし365日
ニュージーランドの大らかで自然に寄りそう暮らし365日――何気ない日々の中で紡いでいく穏やかで豊かな時間』(草野亜希子/自由国民社)

 外国を旅して、「もしこの国に住んだらどんな感じなんだろう」と夢想することがある。世界中どの国にも言えることだが、旅行者として短期間過ごすのと、実際に暮らすのとは、まるで違う。ある国を二度三度と訪れると、その国への理解が深まると同時に、自分はその国についてまだほとんど何も知らないことに気づく。

 数年前、私はニュージーランドを旅したことがある。「観光で訪れたい都市No.1」と「世界で暮らしやすい都市No.1」の二冠を達成したオークランドは、都会的でモダンな都市だ。一方で、少し足を延ばせば、美しく雄大な自然、放牧された羊や牛たち、ワイナリーを併設したブドウ畑といった、いかにもニュージーランドらしいのどかな景色が広がる。

ニュージーランドの大らかで自然に寄りそう暮らし365日

 民泊でキウイ(ニュージーランド人)のお家に泊まり、ローカルパブで現地の人たちとグラス片手におしゃべりを楽しんで、その大らかで人懐っこい国民性にすっかり魅了された。もちろん性格や価値観は人それぞれだが、ほどよい距離を保ちながらも、ギブ&シェアを大切にする文化が根付いている国だと感じた。

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 とはいえ、私が知っているのはニュージーランドの一面に過ぎない。ニュージーランドの人々の暮らしはどんなふうなんだろう? そんな好奇心を満たしてくれる本が、キウイ流暮らしのヒントを記した歳時記『ニュージーランドの大らかで自然に寄りそう暮らし365日――何気ない日々の中で紡いでいく穏やかで豊かな時間』(草野亜希子/自由国民社)だ。

 写真と短めの文章で構成される日めくりカレンダーのような本で、どのページからでも読める。パラパラめくって楽しみながらニュージーランドの暮らしや文化について知ることができ、日本の「ふつう」=世界の「ふつう」ではないと気づけるだろう。

相槌を打つと失礼? 日本とは真逆の相槌の意味

 ニュージーランドでは、話を聞きながら相槌を打つと、「早く話を終えてほしい」という催促のしぐさに映るらしい。よかれと思ってやったことが真逆の意味になるのは驚きだ。

話を聞いているときに「うん、うん」と首を振りながら打つ相槌は、相手の話をきちんと聞いているアピールであり、少ないと「この人は本当に話を聞いているのだろうか」と不安になるものですが、ニュージーランドではこの相槌を打つことの意味が日本と真逆で、頷くことにより、逆にきちんと話を聞いていないように捉えられてしまうので困ったものです。

 頷きもせず、相槌も打たず、じっと相手の目を見ることが、「あなたの話を邪魔せずに、最後までしっかり聞きますよ」という意思表示になるそうだ。

 また、日本では「扉は開けたら閉めるもの。開けっ放しにするのはお行儀が悪い」と教育されるが、ニュージーランドでは、部屋のドアを完全に閉めることは、「入ってこないで」という拒絶の意味を持つために、少し開けておくのが暗黙のルールだとか(※着替えや就寝のときを除く)。

コーヒーといえばフラットホワイト

 日本でコーヒーといえば、ブラックのドリップコーヒーを指すのがふつうだろう。昔ながらの喫茶店では、「ホット」=「ホットのブレンドコーヒー」という暗黙のルールもある。

 しかし、ニュージーランドでコーヒーといえば「フラットホワイト(Flat White)」だ。フラットホワイトはニュージーランド発祥とされるコーヒーの一種で、濃厚なエスプレッソコーヒーにスチームミルクを加えた、いわばエスプレッソ版のカフェオレである。カフェでコーヒーを注文したときに出てくるのは、ブラックではなくこのフラットホワイトだ。

 本書を読むと、さまざまなシーンで、日本で「ふつう」と思われていることが、ニュージーランドでは「ふつう」ではないと気づく。海外の暮らしや文化を知り、日本との違いを認識すると、自国に対しても新しい物の見方ができるようになるだろう。

 日本とニュージーランド、どちらがいい・悪いではなく、「そういう考え方もあるんだ」と知見を広げることで、「ふつうはこうするもの」という固定観念から抜け出せて、自分にもまわりにもやさしくなれる気がする。

 日々忙しく海外を旅することは難しいとしても、お茶の時間や寝る前のひとときに『ニュージーランドの大らかで自然に寄りそう暮らし365日――何気ない日々の中で紡いでいく穏やかで豊かな時間』を開いて、かの国の飾らない日常の風景を楽しんでみてほしい。

文=ayan

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