発達障害の息子が思春期に突入…どう向き合う?

出産・子育て

更新日:2018/1/22

『うちの子はADHD 反抗期で超たいへん!』(かなしろにゃんこ。/講談社)

 思春期の子どもと向き合うのはわが子の成長を微笑ましくも思える反面で、何かと苦労が付きまとうものでもある。親と子が適度にぶつかり合うのは、子どもの自立を促す意味でも健全なことだといわれている。しかし、学校でトラブルばかりを起こしてしまったり、親子のコミュニケーションがうまくいかなかったりといった状態をすべて「思春期」の一言で片付けてしまうのは早いかもしれない。

『うちの子はADHD 反抗期で超たいへん!』(かなしろにゃんこ。/講談社)では、ADHD(注意欠如・多動症)を取り上げている。著者自らがお子さんと向き合った成長記録であり、誰にでも分かりやすいマンガ形式でADHDとどう向き合うかを教えてくれる。ADHDとは脳の一部の機能に障害があって起こるもので、感情や行動をコントロールするのが難しいといった特徴があるそうだ。広い意味で発達障害の一部であり、主な症状としては「不注意」「多動性」「衝動性」などであり、これらが複数絡み合って出ることもあるといわれている。注意力が散漫になってケガをしやすかったり、忘れ物が多かったりといった症状が目立つ。また、落ち着いて座っていられなかったり、思いついたことをすぐに実行しないと気が済まなかったりといった状態もADHDの特徴としてあげられている。これらの一つ一つの症状は日常的に見られるものなので、親の立場からすれば本人の性格だと思い込んでしまうこともあるだろう。そのため、頭ごなしに叱ってしまったり、子どもの意見に耳を貸さなかったりしてしまうかもしれない。

 しかし、大事なことは子どもの不安や悩みに寄り添う姿勢ではないだろうか。親がADHDというものを正しく理解しておかなければ、子どもの不安はますます増大してしまう。親や専門家から伝えられるまでは、子ども自身がADHDであると認識するのは難しいだろう。多感な思春期の時期であれば、「どうして分かってくれない」「自分は周りとは違う」といった疎外感に子どもが苦しんでいるかもしれない。そうしたときに、親子がどう向き合っていくかのヒントが本書には多く詰まっている。また、巻末にはこころとそだちのクリニック・むすびめ院長の田中康雄氏が著者とのQ&A方式で医学的な見地から解説しているのも心強い。

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 思春期は嵐のときではあっても、ずっと続くものではないと本書では述べられている。親にとっても子どもにとっても貴重な体験が得られる時期であり、共に育つことが大切で、子どもと共に希望をもって進んでいく姿勢が重要だと強調している点が印象的だ。また、本書には付録としてADHDのオリジナル告知シートも添付されている。これは著者が育児のことで落ち込んでいたときにインターネットで見つけたページをもとに作成したものだ。自閉症のお子さんを持つ親御さんが学校に配布したペーパーであり、周囲に理解してもらうためにはこちらから発信していくことの重要さが取り上げられている。男の子用、女の子用とそれぞれペーパーが添付されており、参考例をもとに記入していくことで気軽に作成できるように工夫されているものだ。

 たとえ自分の子どもがADHDだとわかったとしても、どこまでが障害でどこまでが思春期特有の症状かを明確に切り分けるのは難しいだろう。また、それらを切り分けたところで仕方がないものでもある。本書が教えてくれる大切な点は障害があってもなくても、子どもの個性としてすべてをあるがままに捉えていく姿勢だ。イライラしたり、他人と口論になってしまったりということは反抗期の子どもにかぎらず、誰にでもあることである。いつも怒っている人がいたとしても、もしかしたらその人自身もそんな自分が嫌だと感じているかもしれない。本書に触れることで障害に悩む本人や支える周りの人たちの心の負担が軽くなり、前向きに物事を捉えるきっかけを作れるだろう。

文=方山敏彦