酒乱の父、キレまくる母……それでも、私の家族――『毒家脱出日記~親が苦手じゃダメですか?~』

暮らし

更新日:2018/1/22

『毒家脱出日記~親が苦手じゃダメですか?~』(春キャベツ/集英社)

 数ある「毒親(母)」ものの中でも、ふんわりした絵柄も相まって、優しく、ややコミカルに、切実な感情が伝わってくるコミックエッセイ『毒家脱出日記~親が苦手じゃダメですか?~』(春キャベツ/集英社)。

 現在は結婚して夫と子どもがいる著者が、自身の生い立ちをふり返ってマンガ化した本作は「『家族』に悩んだり、振り回されたり、紆余曲折を経て、自分の『お家』を手に入れるまでの数年間」を描いている。

 著者の家庭は、無職で日中は布団にくるまり誰ともしゃべらず、夜になるとお酒を飲んで暴れだす父親がいた。幼少期は夫婦喧嘩が絶えず、「怖くて眠れない」日々を過ごしたそうだ。中学生になり、そんな父親は家を出て蒸発。「毎日静かに眠れること」を「うれしいなぁ」と感じたという。

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 一方で母親は、些細なことでも本人の気分によってキレる。「子どものために働いてるのに」「アンタたち(妹含め)がいるから、離婚できなかった」「お母さんの苦労なんてちっともわかってくれない」「自分のことばかり考えやがって」など、著者の優しさも意図も汲まず、一方的に被害者となってキレまくるのだ。

 また、著者が泣いたりしていると、「自分が一番不幸だとでも思ってんでしょ!?」と泣くことすら許してくれなかったそうだ。

 著者は理不尽に怒られ続け、「自分は愚痴聞き要員なのかな」「お母さんに叫ばれると、わたしは何も言えなくなってしまう」と、ひたすら耐える日々。

 思春期の頃は「独りになると延々と涙が出て止まらない」「暗い感情がどこからともなく湧いてきて、死んでしまいたいような気持ちも止まらない」という状態になり、不眠症にもなったそうだ。

 だが、それでも「わたしはわたしのお母さんを『ひどい親』だと思いたくない」という。

 ……毒親をもつ人が一番苦しむのは、ここなのではないかと思う。読者は「ヒドイ親。さっさと見放せばいいのに」と冷たくできても、子どもはそうはいかない。「毒親とは関わらないのが一番よ!」みたいなアドバイスをする専門家もいるけれど、「それができたら苦労しないよ……」というのが私の個人的な意見だ。

 やっぱりどこかで母親に対する愛情があったり、「愛したい」という願望もあったりするだろうし、また「見捨てるのがかわいそう」「育ててもらったのに、申し訳ない」という気持ちもあるだろう。

 本作の著者の場合も、母子家庭で経済的にも苦しい中、必死に働いて自分たちを育ててくれた母親に対する「情」があるのだ。

 簡単には切り捨てられない。母親がかわいそう。けれど、一緒にいるのはつらい。その葛藤が娘を悩ませる。

 本作では、そういった娘側の純粋な感情が丁寧に描かれている。

 まだ完結していないので、主人公がどのように毒家から脱出するのかは分からないのだが、今後の彼女の人生を、見届けていきたい。

文=雨野裾