3日間の合宿で生まれる小説――創作イベントNoveljam(ノベルジャム)の魅力とは?

文芸・カルチャー

公開日:2018/1/20

(撮影:加藤甫)

 3日間の合宿で小説を書こうというイベントがある。この2月10日から開催されるNoveljam(ノベルジャム)は、著者・編集者・デザイナーがチームとなって創作に取り組むもので、筆者はこのイベントを運営するNPO法人の理事を務め、企画とサブディレクションを担当している。

https://www.noveljam.org/

 八王子の研修施設「大学セミナーハウス」で開催されるNoveljam。3日間のスケジュールは以下のとおりとなっている。

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1日目(2月10日)

12:00 開場、受付開始(※現地集合)
13:00 オリエンテーション、チームビルディング
17:00 ゲスト講演:講師・ストレートエッジ三木一馬氏
18:00 夕食
19:00 執筆・制作開始
22:00 プロット提出

2日目(2月11日)

07:30 朝食
09:00 執筆・制作開始
12:00 昼食
13:00 初稿提出(チェックポイント2)
18:00 初稿戻し提出(チェックポイント3)
18:00 夕食
22:00 二稿提出(チェックポイント4)
24:00 二稿戻し提出(チェックポイント5)

3日目(2月12日)

07:30 朝食
08:00 最終稿提出(チェックポイント6)
10:00 電子出版ワークショップ(BCCKS)
12:00 昼食
13:00 電子書籍の販売スタート
14:00 プレゼンタイム
15:00 スポンサーセッション
16:30 審査発表・講評
18:00 閉会式
19:00 懇親会
21:00 終了

◇ 現地解散

 まさに合宿。2日目までは朝から晩までひたすら創作に専念することになる。生み出すのは3000字以上の小説でジャンルは問わない。そして3日目は生み出した小説を電子書店で販売するところまで行う。チェックポイント(=段階的な締切)も細かく設けられていて、その都度、成果物をクラウドで共有する。互いに刺激を受けながら、8チーム32名が創作から出版までを3日間で完遂してしまおうというイベントなのだ。参加費は宿泊・食事も含めて2万円(税込)となっている。

(撮影:加藤甫)

「ネット投稿小説サイトもたくさんあるのに、おカネを払ってわざわざ合宿しなくても」
「そもそも小説って著者が一人で書く『孤独な作業』じゃないのか」

 そんな疑問をもった読者もいるかも知れない。

 しかしNoveljamは、現在の小説出版を取り巻く難しい状況を打破したい、という願いが込められたイベントなのだ。

 たしかに、ネット投稿小説サイトに投稿すればストーリーの「発表」は可能だ。しかし、ストーリーを積み重ね、1つの作品としてまとめあげるのは大変だ。本として販売を考える際には、表紙をどうするのか、というハードルも待ち受けている。

 これまではいざ出版となれば、出版社・編集者が様々なサポートを提供してくれた。だが、「出版不況」とも言われるなか、そもそも書籍化の機会に恵まれる作品は一握りとなり、仮にそこにこぎ着けたとしても、サポートは以前と比べるとどうしても限定的なものとなってしまう。けれども、本に関わる人たちの「面白い作品を生み出したい」「良い本を世の中に送り出したい」という思いは変わっていないはずだ。

(撮影:加藤甫)

 2回目となるこのイベント。昨年は30名が参加し10チームから17作品が生まれた。

http://www.aiajp.org/2017/02/noveljam-2017-is-complete.html

 普段はマンガを描いている人、小説を書くのが全くはじめて、という人も参加したが、どれも力作ぞろいだ。イベント初日に行われる講演は、昨年に続き、電撃文庫元編集長の三木一馬氏が登壇する。審査員も、SF作家クラブ会長の藤井太洋氏やマンガ家・イラストレーターの山田章博氏らプロ・実力派の作家・クリエイターが務める。彼らからも刺激を受け、必ず読まれる、という緊張感のもとで、今年もNoveljamならではのユニークな作品が生まれるはずだ。

文=まつもとあつし