金玉工場は今日もフル稼働! みうらじゅんのエロとセンスが溢れるエッセイ集

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公開日:2018/2/10

『されど人生エロエロ(文春文庫)』(みうらじゅん/文藝春秋)

 みうらじゅんの芸術的センスにはいつも感服だ。僕はみうらじゅんが大好きだ。そして、みうらじゅんのことが好きな女の子は総じて魅力的でエロの深みがあるものだと勝手に思い込んでいる。その昔、みうらじゅんとコンバースがコラボした超イケてるスニーカーを彼女にプレゼントしようと思ったのに、品切れで悲しんだこともある。その彼女とは、一緒にアウトドア般若心経(みうらじゅんが考案したアートなあそび)をしたり、あんなエロエロやこんなエロエロをしたりして別れた。

「人生の3分の2はいやらしいことを考えてきた」というのは、みうらじゅんのエロエロエッセイのお決まりの文句なのだが、これは決して嘘ではないと思う。みうらじゅんは本当にエロエロだし、エロ話の切り口は総じてロクでもない。なのに、だ。みうらじゅんの綴るエロエロは、下世話さや低俗さを微塵も感じさせない。それでいてしっかりといやらしくて、何よりも、エロに必死な男の性(さが)の滑稽すぎる哀歌が身に染みる。

『週刊文春』の人気連載であるみうらじゅんのエロエロエッセイの文庫本第二弾、『されど人生エロエロ(文春文庫)』(みうらじゅん/文藝春秋)を本日はご紹介させていただきたい。これほどエロという単語が並ぶ原稿もどうかとは思うが、著者の言う通り、人生はエロエロなので仕方がない。本書の中で個人的にツボにはまり感動したものを以下にまとめる。

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■旅館で擦り剝く男

 いい歳をして肘と膝を擦り剝いている男は最近、旅館で逢瀬をした可能性が高い。この編では、いい歳のオジサンの、笑い転げるほど滑稽で、それでいて至極まじめな逢瀬の様子が可笑しなほど生々しく描かれている。そして畳で肘と膝を擦り剝くメカニズムの図説がまた実に滑稽でクスリとくるのだ。エロい男は皆大真面目で、大馬鹿なのだ。最高に最低な「エロ男のエレジー」は圧巻だ。

■中出し感謝祭

“ちょっと外出してきます”という彼女のメモ書き、その文面を『外出し(そとだし)』と括って読んでしまい、昨晩の中出し情事を振り返りニタニタする。「それにしても中出しは、外出しと全く気持ち良さのレベルが違う。これぞ本格派というやつだ」そんなことを考え、翌日、帰宅した彼女に期待を込めて駆け寄るが「今日はダメだからね」と言われ、すごすごとゴムを装着する。「またいつもの定食かよ…」と腰を振りながら、「本当に僕は彼女のことを好きなのか?」という疑問が頭をよぎる。そして、本当に好きなのはセックスで、彼女のことは二の次なのかもしれないという考えが浮かび、しまいには、性欲と愛の相性にまで話が広がっていく。

■東京駅の床がエロい(巻末スペシャル対談:酒井順子×みうらじゅん

 本書の巻末には『オール讀物』2014年10月号初出の、酒井順子とのスペシャル対談も収録されており、こちらもまた実に面白い。

みうら:日本って隠されているようだけど、いたるところにエロの匂いのするものがあるじゃないですか。

酒井:私は東京駅のコンコースの床の模様が女性器の形をしていて、ドキドキします。

みうら:ああ(笑)舟形光背の形が続いてますね。誰かから聞いたんだけど、京都という街も女性器の形をしているらしいんですよ。

 エロって結局何なのだろう。毎日身の回りに溢れかえる“エロ”の原点にふと回帰してしまうような本書。エロ、芸術、愛、宗教、死生観…考えれば考えるほど分からなくなってしまう。だからこその「人生エロエロ」なのか。などと思いめぐらす読後であった。

文=K(稲)