性愛を赤裸々に描いた衝撃作『ダブル・ファンタジー』待望の続編! 夫ではなく別の男を選んだ、35歳女性脚本家の哀しくも逞しい生き様とは

文芸・カルチャー

2018/6/8

『ミルク・アンド・ハニー』(村山由佳/文藝春秋)

 6月16日(土)より、水川あさみ主演でスタートするドラマ『ダブル・ファンタジー』。同名タイトルの原作は、作家・村山由佳さんの代表作であり、「第22回柴田錬三郎賞」「第4回中央公論文芸賞」「第16回島清恋愛文学賞」をトリプル受賞したことでも話題を集めた。

 主人公は、35歳の女性脚本家・高遠奈津。名声と家庭の両方を手に入れながらも、彼女を悩ませていたのは「性への渇望」という内なる獣だ。やがて彼女は夫の元を飛び出し、女としての欲望に忠実に生きる道を選択することになる――。

 女性の性愛を赤裸々に描き、多くの共感を集めた本作。そんな衝撃作の続編が、なんと5月30日(水)に発売された。それが『ミルク・アンド・ハニー』(文藝春秋)である。

 前作のラストで、売れない舞台役者・大林一也と生きることを決意した奈津。本作は、そんなふたりが送る穏やかな暮らしから幕を開けるのだが……、まずは一言、「どうして?」とため息がこぼれた。

 夫の元を去り、奈津が大林という男を選んだのは、彼が心身ともに満たしてくれる存在だったからだ。これまでにないようなセックスは、奈津に愛情という不確かなものを信じさせてくれた。それなのに。結局のところ、大林もまた、奈津を満足させてくれる存在ではなかったのだ。次第に減っていくセックス、ろくに仕事もせず飲み歩く姿、大林の言動は日増しに奈津から何かを奪っていく。そんな奈津は、自分自身に空いてしまった「穴」を埋めるように、過去に関係を持った恩師・志澤一狼太や、編集者である岩井良介らと再びカラダを重ねるようになってしまう。

 その一方で、何かを諦めた奈津は、大林と結婚し「夫婦」になることを決める。セックスがないのであれば、夫婦となることで別の絆を求めようとするのだ。しかし、その判断がやがて大きな事件のトリガーとなり、奈津は「タブー」へと足を踏み入れることとなる。

 本作で描かれているのは、「自由」を求めるひとりの女の姿だ。それは「性愛」に関してだけではない。現代において、女性が自分の力で自由に生きるとはどういうことなのかが圧倒的な筆致をもって伝わってくる。もちろん、それには代償もある。ときに奈津は孤独感に押しつぶされそうにもなる。しかし、それでも「自由」であることを追い求めてやまないのは、自分に嘘をつくことができないからだろう。

 その姿を見て、もしかすると呆れてしまう読者もいるかもしれない。もっと「大人」になればいいのに。そう思う人もいるはずだ。ただ、本当の自分にフタをして欺瞞に満ちた生き方をするのと、傷つきながらも正直に生きるのとでは、どちらの方が大人なのだろうか。少なくともぼくは、自分の人生に責任を持ち、何度打ちのめされても這い上がろうとする奈津の姿に感動を覚えた。これほどまでにひたむきに生きる人が、一体この世の中にどれほどいるだろうか、と。

 もちろん、前作に負けず劣らず、性愛の描写は鋭さが増している。媚薬、AV男優が開くサロン、ハプニングバーなど、性の深淵を感じさせるギミックも随所に散りばめられている。しかし、その行間に滲むのは「エロ」ではなく「性」だ。そして、「性」は「生」とも読むことができる。

 ひとりの女の生き様を徹底的に描ききった力作。ラストで彼女が見つけ出した真実を、あなたはどう受け止めるだろうか。

文=五十嵐 大

■水川あさみ主演でドラマ化『ダブル・ファンタジー』。「性」を追い求めた女性脚本家は、最後に何を見つけ出す?