新社会人と信頼関係を築くには? アドラー心理学から上下関係を見直す、会話力改善メソッド

仕事術

2019/5/14

『大人の話し方聞き方超入門』(宮島正洋/エイ出版社)

「大人なら空気を読もうよ」。私が社会人になった頃は、忖度が大人の常識でした。従来、日本の社会は多くを語らずとも相手の意思を汲み取る「高文脈」のコミュニケーションが良しとされていました。しかし、グローバルな社会になった現代では、生まれ育った文化や価値観の異なる相手と言葉を尽くして意思を伝える「低文脈」のコミュニケーションが求められています。忖度に頼らない、現代の大人の会話はどうやって身につければよいのでしょうか?

『大人の話し方聞き方超入門』(宮島正洋/エイ出版社)は、いま話題のアドラー心理学を活用した会話力改善トレーニングを紹介しています。

 アドラー心理学では、「人間関係のトラブルは縦の関係(上下関係)から生じる」としています。上司と部下のような従来の「縦の関係」に囚われず、自分と相手がお互いに対等な「横の関係」を築けば信頼関係が生まれ、人生も豊かになると提唱しています。

 職場の上司と部下が「横の関係」を築くには、まず上の者から歩み寄る必要があります。そのためにはどんな話し方、聞き方をすればよいのでしょうか。

■肯定的ストロークで話す

 よい人間関係とは「肯定的ストローク」の共有です。「肯定的ストローク」とは、「相手を認める働きかけ」のこと。毎朝「おはよう」と挨拶したり、仕事ぶりを評価したり、あるいは恋人に愛をささやくなどもすべて「肯定的ストローク」です。上司であれば部下の行動や考えを積極的に肯定する会話が目標です。

 また、よい話し方とは目的を達成することといいます。例えば、企業の営業マンであれば、お客様に商品を売ることができて、取引先の要望を聞き取れたならそれで十分なのです。豊富な話題などで場を盛り上げる必要はありません。大切なのは、心を込めて誠実に相手と向き合うことなのです。

■アクティブリスニングで聞く

 話し方に加えて聞き方の模範例としているのが、「アクティブリスニング(積極的傾聴)」という手法です。アメリカの臨床心理学者のカール・ロジャースが考案した技法で、医者が患者に一方的に治療を押し付ける診察ではなく、患者がどのように考えて悩んでいるかを聞き取り、問題の本質を明確にして一緒に解決法を模索するというものです。通常の会話が野球のキャッチボールとすれば、マラソンの並走のイメージです。

 部下の悩み事や愚痴を聞いていると、思わず自分の意見や世の中の正論を口にしたくなるかもしれませんが、あくまでも話す側が主体です。否定や疑問はひとまず胸にしまっておき、相手がなぜそう考えたのか、思ったのかの理由を解きほぐしながら本音を聞き出します。「聞いてやる」ではなく「教えてもらう」という無知の姿勢がポイントなのだとか。

 その他にも心理学的に効果のある話し方を学び、あとは日常会話の中で繰り返すトレーニングが紹介されています。

 SNSの登場で、いまの新社会人は、会話力不足にあるといわれています。ネット上で自分に都合がいい人としか付き合わず、画面上の文字情報だけの交流に依存してしまい、リアルな会話から得られる言葉の抑揚や相手の表情などの膨大な情報を処理できなくなっているというのです。

 上司や先輩も他人事ではありません。一方的に自分の主張を押し付けるばかりでは、部下はおろか顧客、取引先も離れていってしまいます。どんな相手とも対等な関係を築ける、それが現代の大人のあるべき姿ではないでしょうか。

文=愛咲優詩