メール・LINEの即レスはNG! 自由な時間を確保して自分らしく生きるための人生最適化術

ビジネス

更新日:2019/6/20

『最適な「人生のペース」が見つかる 捨てる時間術』(若杉アキラ/日本実業出版社)

 買い物で100円でも損をすれば「あ~…しまった」とショックを受けるのに、寝る前にスマホをダラダラ10分以上いじることには抵抗がない。お金のムダには過敏に反応するのに、時間のムダに鈍感なのは、私たちの悪いクセだ。

 人生は時間でできている。それがとても貴重なことに気づくのは、いつも失ったときだ。『最適な「人生のペース」が見つかる 捨てる時間術』(若杉アキラ/日本実業出版社)の著者である若杉さんは、かつて仕事漬けの毎日を送っていた。ふと気づけば、娘が3歳になっていたそうだ。もう愛しい娘との時間は戻らない。二度と2歳以前の娘に会えない。これがきっかけで「人生の最適化」を考え始めたという。

 最適化とは、徹底的にムダを省いて効率化することが目的じゃない。自分にとって自由な時間を確保し、もっと自分らしく生きる。自分らしい時間を過ごしているときは、ムダがあってもムダじゃない。これが若杉さんの目指す最適化だ。

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 本書にはそのヒントがある。すべての項目が「~をやめる」「~しない」といった言葉でくくられていて、何かをやめることで自分らしく生きるヒントを70も用意している。本稿では、そのうちのいくつかをエッセンスとしてご紹介したい。

■【人生の最適化(1)】考えずに行動しない

 そもそもなぜムダが生まれてしまうのだろうか。本書を読んでいると、よく考えずに行動するから、必要のないものを手にしてしまうのだと感じる。

 とりあえず取得した使わない資格。それほど乗らないのに購入した自動車。思わず衝動買いしたもの。時間の切り売りで手にした大切なお金を、あまり考えずに使うことは本当にムダだ。

 資格を使う予定がなければ取得しない、頻繁に乗らないならばカーシェアリングを活用する、「衝動買いは月1回まで」と決めて吟味する癖をつける。

 よく考えて行動すれば、いつの間にか増えていくムダを解消できる。本書を読むと、ムダを意識する心構えが手に入るはずだ。

■【人生の最適化(2)】夫婦で完璧を目指さない

 ムダなものは物理面だけでなく、精神面にもある。

 たとえば夫婦。夫は仕事に振り回され、妻は家事や育児に振り回されると、お互いに余裕がなくなる。疲れていることを理由に「自分はこんなにやっているのに、きみはそんなこともできないの?」と、疲れ比べをしていがみ合っても仕方ない。夫婦で大切なのは労りの気持ちであり、ねぎらいの言葉だ。

 だからといって「いい夫」や「いい妻」を演じると、いつかストレスや不満が爆発してしまう。「全部の家事はできないから家事代行サービスを使いたい」とか、「休日は子どもと遊びたいけど昼まで寝かせてほしい」とか、自分の本当の気持ちを素直に話すことが、夫婦のすれ違いを、つまりはムダを解消する一歩になるはずだ。

 また若杉さんは「ストレスの原因は完璧主義」と指摘している。

つまり、夫婦生活では、「自分が求めるクオリティでキッチリこなす」より、「2人にとってちょうどいいクオリティ」で、あらゆるモノゴトに対応できることが最適だといえます。

 夫婦はお互いに完璧じゃなくていい。家族が笑い合って暮らせる最適な環境を2人で見つけることが、人生の最適化につながる。

■【人生の最適化(3)】メールやメッセージの即レスをやめる

 若杉さんは仕事のムダも本書で指摘している。たとえば「メールやメッセージの即レスをやめる」ことだ。

 即レスは、仕事のデキる人が行うイメージ。一般的な考えになりつつあるし、多くの人が実践している。けれども若杉さんは「メールが届くたびに仕事を中断して返信すると、その度に集中力が切れて効率が落ちる」と言い切る。

 5分後の返信も、2時間後の返信も、それほど大差はない。本当に急ぎならば相手から電話がくるからだ。30分から2時間ごとに返信の時間を確保して、あとは仕事に集中してもいいと提案している。

 また予定のつめこみすぎも考えものだ。時間に追い詰められると人は余裕をなくす。誰かから認められたくてたくさん引き受けても、仕事の質が落ちたり、約束を失念したり、悪循環に心が滅入ってイライラし始める。

 本書を読むと、仕事にもムダがいっぱいだと気づかされる。

■【人生の最適化(4)】親としての青春時代をムダにしない

 最後にもう2つだけご紹介したい。その1つが、「親としての青春時代をムダにしない」ことだ。

 仕事ばかりの日々を送っていると、子どもとの時間を失う。ほとんどの仕事は挽回できるけれど、過ぎた子どもとの時間はどうやっても戻らない。まるで失ってしまった青春のように。

 若杉さんが表現する「親としての青春時代」という言葉がとても心に響く。人は青春時代を二度経験し、ときには両方を失ってしまうのかもしれない。

 けれども、だからといって効率化だけを目指すのも人生じゃない。徹底的なムダの解消を目指すのが正解じゃない。本書には“「効率よく生きる」をやめる”という項目もある。

私も以前は、「効率よく生きる」ことばかり考えていました。しかし(中略)、ムダや非効率といわれる時間にこそ、新たな発見があることに気づいたのです。

 いつもと違う帰り道を歩いてオシャレなカフェを見つけたり、1日ダラダラ過ごすことで自分の本当の気持ちに気づいたり。ムダで非効率なことが人生の最適化を呼ぶこともある。

 本書に記された極意は、とても分かりやすく味わい深いものだ。私たちの人生はもっと良くなる。もっと笑顔に満ちたものになる。本書は「生きる」ことを感じさせてくれる1冊だ。

文=いのうえゆきひろ