親分の願いを叶えたい子分うさぎたちの奮闘! キューライス新作絵本『ドン・ウッサ そらをとぶ』が面白い!

文芸・カルチャー

2019/7/19

『ドン・ウッサ そらをとぶ』(キューライス/白泉社)

 貫禄たっぷり、うさぎの大親分ドン・ウッサ。彼の野望は「雲をさわってみたい」「プリンの家に住みたい」「(三日月)ですべり台がしたい」といつだって大きい。そんな彼がある日、散歩中に空飛ぶカモメを見て、こんなことを言い出した。

「わしもカモメさんのようにじゆうにおおぞらをとんでみたい……」

『ネコノヒー』や『スキウサギ』『チャー子』など、かわいらしく、クスッと笑えるユニークなキャラクターたちの作品が大人気の漫画家・キューライス。そんな彼の新作絵本『ドン・ウッサ そらをとぶ』(白泉社)が発売された。

 大きな体と、鼻の下のちょびヒゲ、赤い蝶ネクタイが威厳を表しているドン・ウッサ。そんな彼には、忠実な子分のうさぎが3羽いる。彼らは小柄で眉毛がきゅっと上がった白うさぎ。3羽とも料理も上手で名コックという、優秀な子分たちだ。

「カモメ」のように飛んでみたい、という親分の言葉を聞いた子分たちは、どうにかして叶えてあげたいと思い、まず大きなゴムをもってきた。木と木の間にくくりつけると、ドン・ウッサをゴムに入れ、思い切りひっぱり、手を離す。

 子分たちは「だいぶとんだね」と悠長だが、もはや親分を全員で殺しにかかったかのようなものである。もちろんそんな残虐シーンはなく、絵本のかわいらしい世界の中では、木にちゅうぶらりんになった親分は無事救出される。

 そんな感じで、子分たちは何度も親分を飛ばす方法を考えるが、とにかく危なっかしく、親分もだんだんと不安になってくる。巨大なシャンパンのコルクに乗って、開ける勢いで飛ばす方法を試そうとしたときの、「ほんとにだいじょうぶ?」と聞く親分の表情には哀愁がにじむ。

 ネコノヒーやチベットスナギツネの砂岡さんなど、キューライスの描くキャラクターの哀愁漂う表情は、なぜかおかしみにあふれていて笑ってしまう。かわいらしいなあ、と頬がゆるむ。加えて、スキウサギやドン・ウッサなど、彼の描くうさぎは、本来のうさぎの、あの無表情さもしっかりと活きていてどこかリアルだ。

 本作には、初出の絵本『MOE』に収録されたストーリーに加え、あらたに描き下ろした「キリン編」も入っている。

 子分たちは同じくやっぱり、キリンの四肢を真似て長い竹馬を4本用意するなど、なかなか危うい方法を考える。自分の背よりも数倍高い竹馬に心細そうに乗る親分が、あまりにおかしくてつい吹き出してしまう。子どもが楽しめる可愛らしい絵本である一方で、キューライスの描くユーモアは大人の心をもつかむ。親子一緒に楽しめる絵本、とはこういうことだ。

 終始かわいそうなドン・ウッサだが、親分大好きで忠実な子分と、そんな彼らを素直に受け入れる親分の関係は愛情たっぷりで心があたたまる。どんくさくて優しい親分うさぎと、健気だが空回りがちな子分うさぎの平和な日常がそこにある。

 また、8月に「二子玉川蔦屋家電」で開催される『ドン・ウッサ そらをとぶ』の原画展に先駆け、7月19日(金)からは、缶バッジ特典つきの『ドン・ウッサ そらをとぶ』が数量限定で販売される。こちらもお見逃しなく!

文=園田菜々

<キューライス『ドン・ウッサ そらをとぶ』発売記念原画展>
【原画展】
日時:8月4日(日)~18日(日)
場所:二子玉川 蔦屋家電 BOOK 2階ギャラリー
原画点数:10点