話し始めると1時間止まらない…発達障害の子は何を考えている? 親子がたがいに理解して幸せになる秘訣

出産・子育て

2019/9/8

『発達障害 僕にはイラつく理由がある!(こころライブラリー)』(かなしろにゃんこ。:著、前川あさ美:監修・解説/講談社)

 わが子がちょっとしたことでパニックになったり暴れたりする。話しかけると急に怒りだしたり、人の気持ちがなかなかわからない――そんな行動が目立つと、子どもの発達障害を疑う親御さんもいるかもしれない。近年、発達障害に対する社会の理解はだいぶ広がってきたが、わが子のこととなるとその将来に一抹の不安が残る。親としては、その場の対応策だけでなく、「こうすれば大丈夫」という安心感を求めたくなるのが素直な気持ちだろう。

『発達障害 僕にはイラつく理由がある!(こころライブラリー)』(かなしろにゃんこ。:著、前川あさ美:監修・解説/講談社)は、発達障害について、イラスト解説やストーリー漫画を多用しながら、その特性や問題の解決策をわかりやすく紹介する1冊だ。登場するのは、著者である母親と、現在20歳の息子。成人した我が子から、母親が「小学生の頃に感じていたこと」をいろいろ聞きだしていくという、異色のコミックである。

 発達障害の当事者である息子が語る子ども時代のエピソードは、誰にとっても興味深いこと間違いなし。大人から見ると心配な子どもでも、自分なりに考え行動しようとしている、その事実がよくわかる。そして、親子の間で開けっぴろげに語り合う姿から、幼いころ問題行動を起こすような子でも、いずれは立派に成長できるんだ、という安心感を得ることもできるだろう。

 著者のかなしろにゃんこ。氏にとって、ADHDと軽い自閉症スペクトラム障害のある息子のリュウ太くん(小学生当時)は“まるで宇宙人”のようだったという。

 リュウ太くんの行動のひとつで特に困ったのが、「話し出すと止まらない」ということ。リュウ太くんは自分の好きな話を始めると、相手が聞ける状態にあるか否かにお構いなく、1時間以上もまくし立てることがあったという。さらに、話の中で疑問に思ったことを質問すると、「黙ってて」と怒ることも。このようなとき、発達障害の子どもはいったいどういう心理で話し続けているのだろうか?

 今20歳になり、自分を客観視・抑制できるようになったリュウ太くんは、当時の気持ちを次のように語る。

 問題行動の理由だけでなく、リュウ太くんは母親の対応のなかで「とても助けられたもの」についても話している。リュウ太くんのような子どもは、好きなことを話し始めると、自分でそれを止めるのは難しいそうだ。そのため、「ストップ」「今はムリ」「今から2時間は話しかけないで」といったフレーズで、はっきりと止めてもらうほうが助かるらしい。

 監修者・前川先生の解説によると、発達障害の子どもは、「他者には別の心があって、異なる体験をしている」ことがうまく把握できていないという。相手の立場にたてないから、話を止められない。こんなときには前述のように、「親が子どもの話をはっきりと中断する」という解決法が挙げられているが、そのときに「子どものことを優先しなかった自分」を責める必要はないという。

 親が我慢ばかりしていると、子どもとの関わりそのものがストレスになってしまう。すると結果的に良い関係を続けられなくなる。また、ハッキリ「話を聞けない」と伝えることで、「社会に出たら常に自分の思い通りになるとは限らない」ということも学べる。だから、そのような対応が大切なのだそうだ。

「話を止められない」という行動の他にも、この本のなかでは、
・感謝や謝罪ができない
・授業中、教室にいられない
・整理整頓ができない
・叱っても叱ってもやめない
など、多くのテーマが扱われている。思わず「へー!」と驚くような内面がリュウ太くんの口から語られることもあり、読者はまさに眼からウロコの思いをすることだろう。

「発達障害」はその名称こそ一括りだが、子どもによって特徴は多様だ。ASD(自閉症スペクトラム障害)、ADHD(注意欠如・多動性障害)、LD(学習障害)があるが、本書はそれぞれに付く「D」を本来のDisorder(障害)の意味ではなく、「ダイバーシティ(多様性)」のDと考え、子ども一人ひとりを“ユニークな存在”として肯定することをすすめている。大人も子どももひとりの人間として生きていくためのヒントを、本書はやさしく教えてくれるのだ。

文=ルートつつみ