アニメと共に時代を駆け抜けた林原めぐみの集大成! 声優界のトップランナーがキャラから教わった、「演じる」ことの奥深さ

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公開日:2021/4/20

林原めぐみの ぜんぶキャラから教わった 今を生き抜く力
林原めぐみの ぜんぶキャラから教わった 今を生き抜く力』(林原めぐみ/KADOKAWA)

 林原めぐみを知っているだろうか。名前を聞いたことがないという方でも、その“声”には聞き覚えがあるはずだ。

『らんま1/2』早乙女らんま
『新世紀エヴァンゲリオン』綾波レイ
『名探偵コナン』灰原哀

 これらのキャラクターを演じてきたのが、林原氏。日本のアニメを語るうえでは欠かせない声優である。

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林原めぐみの ぜんぶキャラから教わった 今を生き抜く力』(林原めぐみ/KADOKAWA)は、キャラを演じたときの苦労話や気づきなど、林原氏にしか語れない声優の“裏話”を知ることができる1冊。林原氏のファンはもちろん、声優に興味がない人でも「演じる」ことの奥深さ感じられるはずだ。

「バカを芝居で説明するな」 ダメ出しから生まれた“かわいい”バカボン

『天才バカボン』は1971年に放送された昭和のギャグアニメ。1975年に2作目の『元祖天才バカボン』、そして3作目は平成元年に『平成天才バカボン』として再びアニメ化された。林原氏が演じたのは、平成のバカボンだ。

 バカボンといえば、くるっとしたほっぺ、1本の歯、上向きの鼻。林原氏はその外見から演じようとしたところ、「バカをやろうとするな。バカを芝居で説明するな」とダメ出しされてしまったという。

 外見から声を作ってはダメ。そうではなく、彼の内から一緒に世界を見て、彼が感じたことを感じる。そうでなければ本物のバカボンの声にはならない。それに気づいた林原氏は、家族が大好きで、優しく素直な男の子としてのバカボンと巡り合う。こうして林原めぐみにしか出せない、愛くるしさに包まれたバカボンが誕生した。

綾波レイの淡く控えめな「肉声」は、心を病んでまで手に入れた「答え」

 思春期の少年少女が謎の生命体“使徒”と闘う、平成アニメの名作「新世紀エヴァンゲリオン」。2021年3月より新作の劇場版も公開されており、大きな話題となっている。林原氏はこの「エヴァ」で、今でも絶大な人気を誇るヒロインの1人・綾波レイを演じた。

 謎めいて無口なヒロイン。レイの人となりを監督に質問すると「感情がないわけではなくて、感情を知らない」との回答。

 感情とは何か。その答えを見つけるため、人の言葉の裏や、自分の気持ちを掘り下げて考え続ける。その結果、人間不信と自己否定に陥り、林原氏は病んでしまったそう。

 精神的に極限の状態が続くある日、林原氏は母親とケンカし、とうとう感情が爆発してしまう。だが、これをきっかけに「レイには嘘がなく、心と言葉と態度が一貫している」という答えが見えたのだとか。

 キャラに深く潜り込み、自分なりの答えを見いだして初めて、視聴者に伝わる「肉声」となる。綾波レイの淡々とした声は、林原氏がキャラと“シンクロ”できたがゆえの肉声であった。

厄介だけど人間臭い。魅力的なキャラ・みよ吉の鍵となった“寂しさ”

 戦前からバブル以降にかけて、落語家の孤高な生き様を描いた『昭和元禄落語心中』。2016年に始まったこのアニメで林原氏は、主役・菊比古に恋心を寄せる芸者・みよ吉を演じる。

 懇意にしていた男に捨てられ、娼婦に身をやつした経験を持つみよ吉。破滅的で火遊びを好む彼女は、林原氏にとって「厄介な女」だった。初登場シーンから、演出に「色っぽさが足りない」「自立してる感じが出てる」などの指導があり悪戦苦闘。そこで林原氏は役作りのため、ロマンポルノ映画を研究することに。その経験から寂しさを埋めたいという欲望がみよ吉を演じる鍵であると気づく。

 愛されたい。満たされたい。好いた男を自分のものにしたい。だから女を武器にする。それがどんな汚い手でも。林原氏が演じたみよ吉は、儚くもどこかに芯を感じさせる、一輪の花のような女性であった。そんな彼女に心を奪われ、ほろりと涙したファンはきっと多かったに違いない。

 約35年もの間、アニメの第一線で活躍し続けている林原氏。本書は彼女が演じた多数のキャラから、38人分の“物語”を凝縮。まさに声優・林原めぐみの集大成とも言える1冊だ。

 セリフに込められた想いが、人々を感動させる。これは声優たちのたゆまぬ努力があってこそ。そのことを、私たちは決して忘れてはならない。

文=冴島友貴

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