宇都宮での餃子食べ比べ、ジャイアントパンダを見に和歌山へ。旅、グルメ、お酒、絶景…「ひとり旅」満喫小説!

文芸・カルチャー

公開日:2021/11/26

ひとり旅日和
『ひとり旅日和』(秋川滝美/KADOKAWA)

 旅行に出かけたくてたまらない。大自然が生み出す絶景を眺めたり、ご当地ならではのグルメや地酒を味わったりしながら、日々の疲れを癒したいものだ。だが、一体誰を誘っていいのやら。旅行は本当に気が合う相手でないとちょっぴり負担だし…。もし、そんな風に悩んでいるのなら、「ひとり旅」に挑戦してみてはいかがだろうか。普段人に気を遣ってばかりいるあなたにこそ、自分のペースでのびのび楽しめる「ひとり旅」をオススメしたいのだ。

 そんな「ひとり旅」のガイドブックとなる小説がある。その名も『ひとり旅日和』(秋川滝美/KADOKAWA)。日本全国津々浦々を旅する大人気の旅小説シリーズだ。読むだけで気分上々。シリーズものではあるが、気になる地域が掲載されている巻から読んでみてほしい。「ひとり旅」は、自由きまま。それと同じように、このシリーズも、いつでも好きな時に好きな巻から楽しんでほしい。旅の予習として読むのはもちろん、復習として読んでも、旅ならではのワクワク感が満載だ。

 物語の主人公は、都内在住の26歳OL・梶倉日和。自他ともに認める人見知りで要領もよくない彼女は、嫌味ったらしい上司からは毎日皮肉を言われてばかりだ。そんな彼女を心配した勤務先の社長から勧められたのが「ひとり旅」。会社の先輩でひとり旅の達人でもある加賀麗佳にも背中を押され、おっかなびっくりはじめての「ひとり旅」に挑戦した日和は、すっかりその魅力の虜に。最初は日帰りだった旅も、1泊、2泊と泊まりがけになり、行き先もだんだんと遠出になってきた。

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 最新刊『ひとり旅日和 運開き!』(秋川滝美/ KADOKAWA)で描かれるのは、コロナ禍の中での日和の姿だ。思うように外出がしにくい日々の中でも、日和は、レンタカーを駆使するなどして密を避けながら「ひとり旅」を楽しんでいく。宇都宮での餃子食べ比べ。ジャイアントパンダを見に出かけた和歌山で食す絶品のマグロ丼とメハリ寿司。那覇の沖縄そば、海ぶどう、そして、泡盛…。日和の旅には美味しそうなご当地グルメがいっぱい。さらにはその土地の名所、パワースポットも巡る充実した内容で、読めば、すっかり旅行気分にさせられる。

 また、「ひとり旅」が日和を成長させていくのを感じられるのもこのシリーズの魅力だ。たとえば、最新刊では、ひとり暮らしの叔母の体調が悪いことを知った日和が、家族代表として秋田まで様子を見に出かける。実家暮らしということもあって、ずっと子ども扱いされてばかりいた日和が、家族のためにも奮闘する姿は頼もしいし、「せっかく遠出をするのだから」と、青森の奥入瀬渓流にも立ち寄る姿は、すっかり旅好きが板についている。さらに、想いを寄せる吉永蓮斗との関係にも変化が起こり…。旅は人をひとまわりもふたまわりも成長させてくれるもの。優柔不断で自分にも自信のなかったはずの日和の変化に温かい気持ちにさせられる。

 仕事にも、恋にも、いい影響を与えていく「ひとり旅」。この小説を読んでいると、日和の真似をして、すぐにでも旅行の計画を練りたくなる。「ひとりで旅行なんて私には無理」と一歩を踏み出さないのは、もったいない。ひとりだからこそ、マイペースに、自分らしい旅行が楽しめるに違いないのだ。日和を見習えば、もっと休日を満喫できるかも? そんな気持ちにさせられるこの作品は、ぜひともおひとりさま女子にこそ読んでほしい。

文=アサトーミナミ

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