BTSの愛読書! 現代人に刺さりまくる世界で話題沸騰中の『ミッドナイト・ライブラリー』が日本上陸

文芸・カルチャー

公開日:2022/2/10

ミッドナイト・ライブラリー
『ミッドナイト・ライブラリー』(マット・ヘイグ:著/ハーパーコリンズ・ジャパン)

 イギリスAmazonで総合1位、NYタイムズでは57週ベストセラー・リストにランクインするなど、世界各国で記録的ベストセラーとなっている小説『ミッドナイト・ライブラリー』(マット・ヘイグ:著/ハーパーコリンズ・ジャパン)が、満を持して日本で刊行された。翻訳を手掛けたのは小説『四日間の奇蹟』などで知られ、作家でもある浅倉卓弥氏だ。

 同作は、世界43カ国で刊行され、なかでも韓国ではRMやV、JINをはじめとするBTSのメンバーが愛読していることも話題になったほか、書評サイト「YES24」で2021年の「今年の本」にも選出。同国だけで30万部を超える大ヒットとなっているという。

 もしあの時、こうしていれば…。誰しもそうした後悔をしたことがあるだろう。忘れられない辛い経験を引きずったり、生きづらさを感じたり。じゃあ、そんな後悔をしないよう、あの時、“違う選択”をしていたとしたら?

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『ミッドナイト・ライブラリー』は、主人公ノーラが不思議な“真夜中の図書館”で、違う選択をして人生を見つめ直す物語。言うなれば、人生を探すSF冒険ファンタジーだ。すでに映画化も決まっているのだが、その世界観は映画が今から待ち遠しくなるほど壮大だ。読みながらスペクタクルな映像が目に浮かぶし、スリリングな展開が次々と待ち受ける。

 幸せとは何なのか? 成功とはいったい? 自分はどうありたいのか? これまでの後悔に押しつぶされ、「私は人生に向いていなかった」と自暴自棄になったノーラは、ジェットコースターのように、選択しなかった“人生”を旅する。

 真夜中の図書館で案内人を務める司書のエルム夫人の言葉が、その都度、深く刺さる。

「何が幸せにするかなんて、簡単にはわからないものですよ」
「理解できない物事なんて、世の中に山とあるでしょうに」
「一徹さというものを、ただ見た目通りに受け取るものではありません」
「小さな物事の持つ大きな意味を、決して過小評価してはいけません」

 物語では、SNSが活用され、地球温暖化、ジェンダーの問題といった、社会問題も背景として描かれているので、現代の私たちにリアルにリンクする。言うまでもなく、自分の人生だけでなく、社会にも問題はたくさんあるのだ。そもそも宇宙は、混沌と無秩序を目指すようにできているという。後悔に苛まれた時、私たちは自分を責めがちだが、物事の見方としては安直すぎるかもしれないと気づかされる。

 一人で落ち込むより前に、気づくべきことには気づいていたい。ノーラの旅を追体験していくと、思いもよらない可能性に勇気が湧いてくるのだ。

 また本書は、今をまざまざと映し出しながらも、普遍的な真理や心に響くフレーズも数多くちりばめられている。だから、BTSのメンバーが愛読書にしたり、「心が折れそうになった時、何度でも再読したい」といった感想が寄せられたりするわけだ。

「反抗の精神こそが自由の土台である。従順さは奴隷のそれに過ぎない」
「孤独以上に一緒にいて心地よい相手などいない」
「大事なのはあなたが何を見ているかではない。何が見えているのかだ」

 これらは、ノーラが敬愛する哲学者ヘンリー・デイヴィッド・ソローの名言だ。物語のどこで響いてくるかは、ぜひとも読んでのお楽しみにしてほしい。

文=松山ようこ

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