疲労困憊によるエネルギー枯渇に注意! 自覚しにくい「頭脳疲労」「感情疲労」/家族が「うつ」になって、不安なときに読む本

暮らし

公開日:2022/11/11

驚きのプログラム

 驚きのプログラムでは、エネルギーを大量に消費します。代謝を促進して脳や体が必要とするエネルギーの生産を促すと同時に、消化などのエネルギーの消費は抑制されます。これは「生きるために全力を振り絞る」態勢です。

 この驚きのプログラムは本来、生きるか死ぬかの瀬戸際を乗りきるための一時的な機能で、ストレス状態が終了すると、ストレスホルモンの分泌は収まり、体は元の状態に戻ります。エネルギーの消費も収まり、しばらく休憩すれば、また活動できる状態になります。

 現代人の場合、猛獣に遭うことも、飢餓で苦しむことも少なくなりました。

 ところが現代人は、感情疲労を中心に、うっすらとしたストレスにさらされ続けています。

 このストレスには明確な終わりがありません。脳は「危機的状況は続いている」と判断し、ストレスホルモンを分泌し続けるのです。それによって知らないうちに疲労困憊になって、うつ状態になっていくのです。

 

医師によっても見解が異なる

 うつ病は、骨折や怪我などのように外から見てわかる病気ではありません。また、胃潰瘍や肺炎のように、胃カメラやレントゲンなどの検査でも見つけられません。

 医師が、患者さんの体験や心身の状態を聞き、それに対して患者さんが自分の言葉で応える、というコミュニケーションによって、診断されるものです。そのため、経験豊富な医師とそうではない医師では、同じ問診内容だったにもかかわらず見解が異なる、ということも起こりがちです。

 

診療科によっても見解が異なる

 診療科の違いも見解の違いにつながる場合があります。

 近年、精神科、心療内科、メンタルクリニックなど、診療科の表示もさまざまになりました。また、受診の抵抗感を減らすため、クリニックなどの名前も柔らかい雰囲気のものも多くなりました。しかし、いざ利用しようと思うと、その違いも気になるでしょう。ちょっと乱暴かもしれませんが、以下の説明で、だいたいのイメージをつかんでください。

 どれも「心の病」を診ることに違いはありませんが、精神科はうつ病や統合失調症、双極性障害など「心の病気」を専門に治療するところになります。心療内科はストレスなどから生じる「内科」の症状を専門に診る診療科です。メンタルクリニックの診療内容は、精神科・心療内科どちらの要素も含みますが、通院での治療がメインになるという特徴があります。

家族が「うつ」になって、不安なときに読む本

 先の原始人の例でイメージしてみましょう。

 原始人が猛獣との対応で、非常につらい目に遭い、負傷し疲労困憊して、うつ状態になったとします。原始人は戦う気力を失い、猛獣に襲われる恐怖におののき、睡眠もとれず食事ものどを通りません。

 この状態に対処するのに、原始人の体調を中心にケアする方法、外敵から襲われないように現実生活をケアする方法、原始人の怖い思い(記憶や感情)をケアする方法があります。

 心療内科は、体のケアを中心に、メンタルクリニックは外敵対応(現実のストレス対応)を中心に、精神科では、恐怖心を中心にサポートしてくれるというイメージです。いずれの医師でも、不眠や体調の悪さはきちんとサポートしてくれます。

 このほかにも、内科や外科や婦人科、かかりつけ医でも、今かかっている病気と合わせて精神疾患を診断、治療してくれる場合もあります。

 このように、医師や病院によって、専門とする病気や、よく診ている患者さんの状態レベルが違うため、同じ患者さんに対しても見解が変わってくる場合があることは理解しておくと良いでしょう。

 ひとりの患者さんに対して、医師が変われば診断名や治療方針が変わることも少なくないのです。

 患者さんも家族も、医師から言われたこと、診断書に書かれたことが、絶対的な正解で、変わらないものだとは思わないでください。

<第4回に続く>

『家族が「うつ」になって、不安なときに読む本』をAmazonで読む >

あわせて読みたい