ユーゴー『レ・ミゼラブル』あらすじ紹介。パンを1つ盗んで、19年もの獄中生活!? 愛を知り、底辺から這い上がった男の物語

文芸・カルチャー

更新日:2023/4/4

レ・ミゼラブル』は、ユーゴーの文学的地位を決定づけた大成功作といっていいでしょう。映画化やミュージカル化をされ続けているほど人気の作品ではあるものの、原作を読んだことがない… という方も多いのではないでしょうか。今回は『レ・ミゼラブル』の登場人物、あらすじをわかりやすく紹介します。


レ・ミゼラブル

『レ・ミゼラブル』の作品解説

『レ・ミゼラブル』は、フランスの作家ヴィクトル・ユーゴーが1862年に発表した長編小説です。ナポレオン1世が失脚した1815年から、王政復古時代を経てフィリップ王の七月王政時代の最中である1833年までの18年間を描く作品で、ジャン・ヴァルジャンをはじめとするさまざまな登場人物それぞれのドラマが楽しめる作品となっています。

『レ・ミゼラブル』の主な登場人物

ジャン・ヴァルジャン:本作の主人公。19年間投獄されていた。

コゼット:本作のヒロイン。純粋無垢で心優しい少女。ヴァルジャンを父と慕う。

ミリエル司教:ヴァルジャンを改心させた司教。

ジャヴェール警部:ヴァルジャンを執拗に捕まえようとする警察官。

ファンティーヌ:ヴァルジャンの工場で働いていた女工。コゼットの母親。

マリユス:パリに住む美青年。成長したコゼットと恋に落ちる。

『レ・ミゼラブル』のあらすじ​​

 パンを盗んだ罪で投獄され、度重なる脱獄の罪も合わせて19年間服役していたジャン・ヴァルジャン。刑期を終え出所したが、行き場のないヴァルジャンはミリエル司教の司教館に温かく迎え入れられるも、司教が大切にしていた銀食器を盗み逃亡。翌朝、捕えられたヴァルジャンと共に現れた憲兵に、ミリエル司教は「食器は私が与えた」と擁護し、さらに銀の燭台2本も彼に差し出す。司教の信念に悪意に満ちた魂を打ち砕かれ、改心を誓ったヴァルジャンであったが、反射的に子どもから小銭を巻き上げてしまう。そして我に返った時、自身が罪深き存在であることに絶望する。

 数年後、マドレーヌと名を偽り、事業で成功を収めたヴァルジャンは市長の椅子に収まっていた。そんなヴァルジャンは、自らが営む工場を不当な理由で解雇され、娘を悪辣な夫婦に奪われてしまった貧困の極みにいるファンティーヌの存在を知る。解雇にヴァルジャンは関与していなかったが、彼女の窮状を憂慮し、その娘であるコゼットを連れ戻すことを約束する。

 しかしヴァルジャンは、彼を執拗に狙うジャヴェール警部に、ファンティーヌの面前で逮捕されてしまう。銀食器の件では放免されたものの、子どもから小銭を奪った罪でヴァルジャンはいまだ追われる身であったのだ。突然の逮捕劇を目の当たりにしショック死をしてしまうファンティーヌ。再犯囚に科される罰は終身刑か死刑。ヴァルジャンも終身刑の判決を受け、監獄に送られてしまう。

 だが、ヴァルジャンはまたしても脱獄し、ファンティーヌとの約束を果たすべくコゼットを救出。迫りくるジャヴェールの手から逃れ、パリの邸宅で生活を始めるヴァルジャンとコゼット。パリでの生活の中、コゼットは父としてヴァルジャンを慕い、ヴァルジャンも娘としてコゼットを深く愛するようになっていく。そして、美しく成長したコゼットはマリユスという美青年と恋に落ちるが、彼の祖父は2人の結婚を許さなかった。

 この頃のパリでは革命と戦争の気運が高まっており、街中にバリケードが築かれ、革命派と政府の戦場と化していた。コゼットとは結ばれぬ運命であると諦観し、戦いに身を投じていくマリユスであったが、瀕死の重傷を負い意識不明になってしまう。

 “何者か”に助けられ、意識が回復したマリユスは意を決して再び祖父にコゼットとの結婚を切り出す。すると、心変わりをしたのか予想に反して結婚を承諾される。つつがなく執り行われる結婚式。だが、その祝宴の場にヴァルジャンの姿はなかった。ヴァルジャンの正体を知ったマリユスがコゼットのもとから遠ざけるよう仕組んでいたのだ。しかし、自分を救った“何者か”がヴァルジャンであると知ると、コゼットを連れて急ぎ彼のもとへと向かう。

 コゼットと別れたヴァルジャンはひどく老け込み、ただ死を待つのみであった。そこへ飛び込んでくるコゼットとマリユス。「一緒に暮らそう」と懇願するコゼットであったが、ヴァルジャンは既に自分の死期を悟っていた。かつて自分を救ったミリエル司教の燭台の光のもと、ヴァルジャンはコゼットとマリユスに両手を握られながら永遠の眠りにつくのだった。

<第58回に続く>

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