デュマ・フィス『椿姫』あらすじ紹介。パリの男たちを魅了した高級娼婦が見つけた真実の愛とは? 実在の女性をモデルにした悲恋の物語

文芸・カルチャー

公開日:2023/4/11

 演劇・オペラのファンにはもはや定番と言えるほど名の知られた『椿姫』ですが、原作となった小説を読んだことのある方はもしかすると少数派かもしれません。そこで今回はデュマ『椿姫』のあらすじをわかりやすく紹介します。悪役のいないシンプルなラブストーリーなので、興味を持った方はぜひお手にとってみてください。

椿姫

『椿姫』の作品解説

『椿姫』は『三銃士』などで知られるアレクサンドル・デュマの息子、デュマ・フィス(小デュマ)が実体験を基にして1848年に執筆した小説です。小デュマは以前、マリー・デュプレシという高級娼婦と交際していた経験があり、そこから着想を得た作品と言われています。

 作者自身により戯曲化され大ヒットしたほか、その人気から後世でも舞台化・映画化されています。

『椿姫』の主な登場人物

マルグリット・ゴーティエ:気高い高級娼婦。

アルマン・デュヴァル:誠実で純情多感な青年。

プリュダンス:元娼婦で、マルグリットの友人兼付き人。

G伯爵/N伯爵:マルグリットの愛人兼パトロンたち。

アルマンの父:商売女と付き合うアルマンを心配する。

わたし:男性。物語の語り部。

『椿姫』のあらすじ​​

 高級娼婦マルグリットの遺品である1冊の本を落札した「わたし」は、その本を譲ってほしいと訪ねてきた青年・アルマンと親しくなり、身の上話を聞くことに。身に着けた椿の色で商売の可否を示し“椿姫”と呼ばれた彼女は、富豪の愛人として裏社交界を渡り歩き、贅沢で派手な生活を送っていた。

 アルマンは彼女とオペラ座で偶然知り合い、世慣れた彼女に次第に心惹かれていく。マルグリットも結核による喀血を心から心配してくれた彼の純真さに胸を打たれる。ふたりは交際を開始し、療養のため田舎暮らしを始めることに。

 同棲がパトロンに発覚し支援も打ち切られる中、マルグリットは私財を借金返済に充ててもアルマンとの生活を選ぶ。アルマンの父は心配していたが、ある日を境に態度を軟化させた。

 しかしその夜、アルマンは召使いから彼女がパリへ向かったと聞かされる。夜明けにたどり着いた彼女の家はもぬけの殻、彼女はN伯爵のものになっていた。憤慨したアルマンは当てつけで彼女を責め、彼女はイギリスへ旅立ち、娼婦稼業に戻ってしまう。失意の中、アルマンも遠国へ放浪する。

 その後、旅先で手紙を受け取りマルグリットの病状悪化を知ったアルマンは、手紙を書きパリへ急行する。しかし彼女は看取る者もなく既に息を引き取り、自宅の競売も終わっていた。彼女の生前の友人から受け取った手記には、別れの真相が綴られていた。

 生前のマルグリットは、アルマンの父と会っていた。娼婦と付き合う息子の悪評が広まることを危惧した父、その思いを汲んだ彼女は、アルマンならびに結婚を控えた彼の妹の将来を想い、身を引いたのだ。彼女は死の間際まで、アルマンへの愛だけを希望にしていた。

 帰郷するアルマンに同行したわたしは、父性愛あふれるデュヴァル老人と、アルマンの妹ブランシュに会い、マルグリットが命懸けで守った彼の家族の幸福を見届けたのだった。

<第66回に続く>

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