小説『ガリバー旅行記』あらすじ紹介。空飛ぶ島「ラピュタ」にいたのは…? 旅することに取り憑かれた男の物語

文芸・カルチャー

公開日:2023/6/23

ガリバー旅行記』は、児童向けの小説としてとても有名です。しかし、よく読んでみると道徳や品行、社会に対する風刺の精神が息づいていることに気づかされる作品でもあります。今回は『ガリバー旅行記』について作品を解説し、登場人物とあらすじをご紹介します。

ガリバー旅行記

『ガリバー旅行記』の作品解説

『ガリバー旅行記』は、アイルランドの風刺作家ジョナサン・スウィフトが1726年に発表した小説です。全4篇からなる小説で、主人公ガリバーが小人の国や巨人の国、はたまた江戸時代の日本に至るまで、さまざまな国を旅する物語です。一般的に児童向けの小説と捉えられることが多いのですが、道徳や品行、社会などに対する強烈な皮肉が隠されている作品であり、大人でも楽しめる作品といえるでしょう。

『ガリバー旅行記』の主な登場人物

レミュエル・ガリバー:医者をしていたが、外国への憧れから航海に出る。

ガリバーの妻子:航海から帰るたび価値観が変わるガリバーを温かく迎える。

リリパット皇帝:小人国の王。ガリバーを取り調べ、誓約を結ばせる。

グラムダルクリッチ:巨人国の農家の娘。ガリバーの乳母役を務め、仲良くなる。

主人:ヤーフ扱いのガリバーと交流する、身分の高いフウイヌム。

『ガリバー旅行記』のあらすじ​​

 ガリバーは幼少から念願だった航海に出るが、出航から半年ほどで船が座礁。ボートも転覆し、やっとの思いで草原へ上陸するも昏倒してしまう。

 目を覚ますと体が動かない。見れば身長6インチ(約15cm)もない小人たちが群がり、紐で四肢を磔にされているではないか。漂着した先は小人の国「リリパット」で、ガリバーは手話でかろうじて会話に成功するも、ぶどう酒に混ぜた眠り薬で都へ連行されてしまう。

 小人の言葉を教えてもらったガリバーは、皇帝と同盟の誓約を結びこの国の文化を記録。おしっこで宮殿の火災を鎮火するなど紆余曲折あったが、小人たちに見送られて商船でイギリスへ帰国することになった。

 帰国したガリバーは、3ヶ月もしないうちに商船で旅に出る。暴風雨を乗り越え、辿り着いた陸地は大人(巨人)の国「ブロブディンナグ」で、農民の家に迷い込み歓待を受ける。しばらくは一家の娘に言葉を教えてもらうも、次第に噂が広まり見世物にされることに。

 巡業の途上で宮廷に売られ王妃に召し抱えられたガリバーがある日、海沿いの離宮にほど近いハンモックで休んでいると、部屋ごと大ワシにさらわれ海へ。運良くイギリス籍の船に拾われ帰国する。

 好奇心を抑えられないガリバーは、3度目の旅へ。海賊に襲われ、ボートで放り出された彼が漂着先の無人島で遭遇したのは、巨大な磁石で空に浮かぶ「飛島(ラピュタ)」だった。奇妙な住民たちはあらゆることに杞憂を抱き、文化も美的センスも地上人とはかけ離れていた。

 ガリバーは更に、属国に降りて飛島を離れ、鎖国中の日本を訪ねることにする。まずは日本と交易のあるラグナグ国にオランダ人と偽って入国し、皇帝の推薦状を携えて日本へ向かった。

 ガリバーは東南のザモスキ港に上陸、日本の皇帝へ謁見するためエド(江戸)へ。絵踏みを断ったため国籍を疑われるが見逃され、ナンガサク(長崎)へ送り届けてもらい無事に帰国する。

 4度目の出航で商船の船長となったガリバーは、熱病の船員の代わりに新しい船員を雇うも、実は海賊で、船を奪われてしまう。無理やり船から降ろされたガリバー。その島は高い知能をもつ馬、フウイヌムの国だった。彼らはヤーフという、猿や人間に似た種族を家畜にしており、ガリバーは賢いヤーフの一種として扱われる。

 この島に滞在したガリバーは、悪徳や野蛮な一面をもつ人間がヤーフのように思えてしまい、すっかり国へ帰る気をなくしてしまった。人里を避けて無人島へ向かう途上、ポルトガル船に拾われて嫌々帰国した彼は、歓迎する妻に触れられただけで気絶してしまうのだった。

<第76回に続く>

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