SUPER BEAVER渋谷龍太のエッセイ連載「吹けば飛ぶよな男だが」/第34回「貫け、括弧笑」

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公開日:2024/4/27

 やめたくてもやめられないことが世の中にはたくさんある。ある人はアルコール、ある人はギャンブル。依存なんていう大袈裟な言葉もあるが、日常のなかで無目的に携帯電話を見てしまったり、なんとなくテレビをつけてしまったりも、そういう些細なことだってそれに該当すると思う。快楽、安堵、習慣。人はきっと、飲み込まれやすいのだ。

 かく言う私にもやめたくてもやめられないものがある。ただ、私のそれは快楽や、安堵や、習慣といったものより余程たちの悪いものだったりする。「プライド」ってやつだ。

 これが理念になってしまうと、自分で自分を苦しめる結果に陥りやすい。人から無理だと言われた夢や、莫大に時間を費やしてきた目標など、どうにも引くに引けなくなってしまったことが、わかりやすくそれに該当すると思う。見返してやりたくなったり、ここまでやったんだからと思ってしまったり、もちろん結果が良い方向に転べばとても素敵なことであることは間違いない。ただ、当初のキラキラした志が消え、そしてさまざまなものを鑑みず、「プライド」が一番先頭を走ってしまっている状態は、あまり良い状態だとは思えない。

 だから私はあまり良い状態じゃない。

 そして困ったことに当初にキラキラした志があったわけでもなければ、貫き通したところで誰が褒めてくれるなんてことにも絶対になり得ない。根幹に自らの気持ちがないものを、意地になって続けているのだからとても虚しい。

 そんなわけで「(笑)」がやめられない私はひどく虚しい。

 

 いつだったかも覚えていないし、「(笑)」をつけるようなやり取りであるからして、重要な話であったわけもなく。ラインのやり取りの中で不意に友人に言われたのだ。

『渋谷ってさ、ずっと「(笑)」だよねwww』

 ダブリューダブリューダブリューと私のことを大いにせせら笑った友人はその後何事もなかったかのように、別の話題に移り、いつもの調子でやり取りを続けた。

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しぶや・りゅうた=1987年5月27日生まれ。
ロックバンド・SUPER BEAVERのボーカル。2009年6月メジャーデビューするものの、2011年に活動の場をメジャーからインディーズへと移し、年間100本以上のライブを実施。2012年に自主レーベルI×L×P× RECORDSを立ち上げたのち、2013年にmurffin discs内のロックレーベル[NOiD]とタッグを組んでの活動をスタート。2018年4月には初の東京・日本武道館ワンマンライブを開催。結成15周年を迎えた2020年、Sony Music Recordsと約10年ぶりにメジャー再契約。「名前を呼ぶよ」が、人気コミックス原作の映画『東京リベンジャーズ』の主題歌に起用される。現在もライブハウス、ホール、アリーナ、フェスなど年間100本近いライブを行い、2022年10月から12月に自身最大規模となる4都市8公演のアリーナツアーも全公演ソールドアウト、約75,000人を動員した。さらに前作に続き、2023年4月21日公開の映画『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -運命-』に、新曲「グラデーション」が、6月30日公開の『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -決戦-』の主題歌に新曲「儚くない」が決定。同年7月に、自身最大キャパシティとなる富士急ハイランド・コニファーフォレストにてワンマンライブを2日間開催。9月からは「SUPER BEAVER 都会のラクダ TOUR 2023-2024 ~ 駱駝革命21 ~」をスタートさせ、2024年の同ツアーでは約6年ぶりとなる日本武道館公演を3日間発表し、4都市9公演のアリーナ公演を実施。さらに2024年6月2日の東京・日比谷野外音楽堂を皮切りに、大阪、山梨、香川、北海道、長崎を巡る初の野外ツアー「都会のラクダ 野外TOUR 2024 〜ビルシロコ・モリヤマ〜」(追加公演<ウミ>、<モリ>)開催する。

自身のバンドの軌跡を描いた小説「都会のラクダ」、この連載を書籍化したエッセイ集「吹けば飛ぶよな男だが」が発売中


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