ジュール・ヴェルヌ『海底二万里』あらすじ紹介。二度と地上には戻れない!? この世の全ての海を巡る旅が始まる!

文芸・カルチャー

公開日:2023/9/19

海底二万里』はディズニーが映画化したり、『ふしぎの海のナディア』の原案でもあることで有名です。そのため、小説を読んだことのない人でも大まかなイメージはできるかもしれません。ミステリアスなネモ船長。万能潜水艦ノーチラス号。海底を舞台にくり広げられる大冒険と、まさにイメージ通りの物語です。本稿では、そんなジュール・ヴェルヌの『海底二万里』について、あらすじを中心にご紹介します。

海底二万里

『海底二万里』の作品解説

 本作はジュール・ヴェルヌが1870年に発表した海洋冒険小説です。

 著者の豊富な科学知識を基に、限りなく正確な未来予測をしているのが本作の凄いところ。執筆当時はまだ本格的な潜水艦はありませんし、電気すら実用化に至っていません。にもかかわらず、電気を動力とした潜水艦を描いた著者の慧眼には驚かされます。

『海底二万里』の主な登場人物

アロナックス:海洋生物学者。本作は彼の体験記風に書かれている。

コンセイユ:アロナックスの助手。

ネッド:腕利きの銛使い。アロナックスの調査に同行する。

ネモ船長:潜水艦ノーチラス号の船長。海底世界を愛し地上世界を極度に嫌う謎めいた人物。この物語の続編ともいえる『神秘の島』で正体が明かされる。

『海底二万里』のあらすじ​​

 時は1866年。フランスの海洋生物学者アロナックスのもとに海軍省からの調査依頼が届く。その内容とは、世界中の海で航行中の船舶が“謎の巨大海洋生物”に襲われ、船体に大穴をあけられるという海難事故が多発しており、アロナックスに調査してほしいというのだ。依頼を受けたアロナックスは、助手のコンセイユ、銛打ちの名人ネッドとともに軍艦に乗船し調査に向かうも、件の巨大海洋生物に襲撃され、3人は海に投げ出されてしまう。

 3人を救助したのは“謎の巨大海洋生物”の正体である万能潜水艦ノーチラス号だった。ノーチラス号は、まだ実用化されていない電気を動力としており、さらに海中にいながら電力供給ができるシステムを備えているなど、当時の科学技術をはるかに凌駕した超高性能を有していた。オーバーテクノロジーの塊である潜水艦に、聴いたことのない謎の言語で話すクルー。そして、ネモと名乗る船長は、招かれざる客である3人に、艦内での自由は与えるが、二度と地上には戻れないと告げる。こうして半ば捕虜のような形になってしまったアロナックス、コンセイユ、ネッドの3人は、ネモ船長とその仲間たち、ノーチラス号とともに二万里にわたる海底の旅に出ることになる。

 海底は神秘の世界そのものだった。ネモ船長とともにアロナックスたちは、紅海の珊瑚礁をはじめとした、さまざまな海の生き物や無人島の動植物の生態、沈んだアトランティス大陸の遺跡などに魅了され、また、獰猛なサメやマッコウクジラの群れ、巨大タコとの戦いや、空気の欠乏による危機といった数々の体験をする。そして、これらの冒険を通して、いつしかアロナックスとネモ船長はお互いを尊敬し、心を通わせるようになる。

 だが、ネモ船長は謎の多い人物だった。静寂の海底を愛している反面、地上世界には強い憎悪を抱いている。沈没船に積まれた財宝を資金源に、圧政と闘う活動家たちを支援するという形で世界への復讐をしているらしいが、ネモ自身の過去は依然として謎に包まれている…。

 そんな折、ノーチラス号は国籍不明の軍艦による急襲を受ける。戦闘による艦内の混乱は、3人にとっては脱出の好機だった。ノーチラス号が衝角戦で軍艦を撃沈させたのを尻目に、ボートで脱出をする3人。しかし、スカンディナヴィア半島沖のメールシュトローム(大渦巻き)に巻き込まれてしまう。

 気が付くと3人は漁師の小屋に横たわっていた。ネモ船長とノーチラス号が、戦闘の後どうなったかはわからない。アロナックスはただ、復讐心を消して海底探検を平和に続けてほしいと願うばかりであった。

<第89回に続く>

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