『三年寝太郎』あらすじ紹介。人は見かけによらない! 3年寝続けた怠け者が村の英雄に…!?

文芸・カルチャー

公開日:2023/9/29

三年寝太郎』という昔話を知っている方も多いことでしょう。村一番の怠け者の青年が、ある日突然起き上がって、大きなことを起こす物語です。

本稿では『三年寝太郎』について、作品を解説し、登場人物やあらすじをご紹介します。なお、地域ごとにお話の結末が異なるため、3通りの代表的な結末をご紹介します。

三年寝太郎

『三年寝太郎』の作品解説

『三年寝太郎』は、日本の民話のひとつです。一見寝てばかりいる男が、3年を経てさまざまな大きなことを引き起こすという内容になっており、この「大きなこと」にはさまざまなバリエーションがあります。

 特に有名なのが山口県の厚狭(あさ)地方に伝わる『三年寝太郎』で、佐渡島の金山に行って得た砂金を売って堰を作り、田んぼを開墾するお話ですが、たとえば地域によっては干ばつから人々を救う、長者さまの娘をめとるといったように異なる結末が与えられているのが特徴です。

『三年寝太郎』の主な登場人物

太郎:寝てばかりいる息子。村の人々に「三年寝太郎」と蔑まれている。

父親:庄屋をしている。太郎の望みを聞き入れ、力を貸す。

※山口県厚狭地方の『三年寝太郎』より

『三年寝太郎』のあらすじ​​

・あらすじ1 山口県厚狭地方の『三年寝太郎』より

 以下で紹介するのは、山口県の厚狭地方に伝わるお話です。

 村の庄屋の息子であった太郎は、仕事をろくにせずに寝てばかりいたため、村の人々は彼を「三年寝太郎」と蔑んでいました。太郎が眠りについてから3年と3ヵ月。ある日、太郎は目覚めるやいなや、父親に「千石船と船いっぱいの草履を用意してほしい」と頼みました。ほかならぬ息子の願いでもあるからと、父親は千石船を作り、船いっぱいに草履を積んで用意しました。すると太郎は、船を漕いでどこかへ行ってしまいました。

 それから数十日して、太郎は村に戻ってきました。船のなかの草履は、みなボロボロになっていました。太郎は父親に「大きな桶を用意してください」と頼みました。用意された桶を使って草履を洗いはじめると、なんと砂金が出てきました。

 太郎は、実は佐渡島の佐渡金山に渡っていて、金山で働く人々の草履を新品と交換すると見せかけて、履き古した草履に付着した砂金を集めたのでした。太郎は集めた砂金を元手に堰を作り、田んぼを開墾して村の百姓に分け与え、村の英雄として褒め称えられました。

・あらすじ2

 以下で紹介するのは、『三年寝太郎』のバリエーション違いのお話です。太郎が目を覚ますまではほとんど同じですが、目を覚ましてからの行動には違いがあります。

 干ばつに悩まされるある村に一人の男がいました。彼は寝てばかりいて働かないので、村の人々は彼を「三年寝太郎」と蔑んでいました。太郎が眠りはじめて3年が経ったある日のこと、寝太郎は突然むくりと起き出すと、何を思ったのか山に登って大きな岩を押しはじめました。岩は谷へと転がっていき、ついには村の川に落ちて流れをせき止めました。そして、川の水が田畑へと流れ込むようになり、村は干ばつから救われました。

・あらすじ3

 ある村に一人の怠け者の男がいました。彼は寝てばかりいて働かないので母親は困り果て、家は正月の餅が買えないほど貧乏になっていました。村の人々は寝てばかりの男を「寝太郎」と蔑んでいました。

 ある日、寝太郎が突然起きたと思うと、「白い着物と烏帽子(えぼし)を買ってくれ」と母親に頼みました。いきなりこのようなことを言われるのですから、母親はびっくりしてすぐに着物と烏帽子を用意しました。

 白い着物と烏帽子を身に着けた寝太郎は、隣の長者の家に行き、長者を呼びました。その姿を見て神さまだと思った長者は思わずひれ伏しました。そして「この家の婿は隣の寝太郎をおいて他にない。寝太郎を婿にすれば、この家はいつまでも栄えるであろう。」と寝太郎が言うと、「神さま、ありがとうございます」と長者は手を合わせました。

 こうして寝太郎は長者の娘と結婚しました。するとどうでしょう。寝太郎は前とは見違えたように働くようになったのです。そうして、みんないつまでも幸せに暮らしました。

『三年寝太郎』の教訓・感想​​

 太郎は寝てばかりで、「寝太郎」と呼ばれて蔑まれていた人物ですが、ある日目覚めて大きなことを起こすというのは、ストーリーの共通点です。「人は見かけによらない」ということを教えてくれるような民話ですね。

<第35回に続く>

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