「かわいいは正義」は紀元前から!? 古代ギリシャの高級娼婦が裁判で無罪になった理由/つい人に話したくなる名画の雑学②

文芸・カルチャー

公開日:2023/12/15

つい人に話したくなる名画の雑学
制作年不明 油彩、キャンバス 787×546㎜ アンダーソン・ギャラリー(アメリカ、ビバリー・ヒルズ)

壁に“指グリ”19世紀から存在!?

『家庭での出来事』

ジャック=ウジェーヌ・フェイアン
【フランス 1815~1908年】

鮮明なタッチで生活の“リアル”を描く

 いじけている時に、壁を指でグリグリする仕草があります。あの仕草がいつからあるのかは起源がはっきりしませんが、少なくとも19世紀から存在している「かも」しれない事がこの絵画からうかがえます。服装から見るに、お掃除していた彼女は、この家の娘さんでしょうか。ハタキをかけていたら、お高そうな一対の壺の片方を壊してしまいました。この事故を早速ワンちゃんがママにご注進。ママが様子を見に来ると、娘さんは壁に指グリで落ち込んでいます。この様子を見たらママも叱りにくいですね。

 この絵が非常に鮮明なタッチで描かれているのは、作者フェイアンの経歴に関係があるかもしれません。彼は歴史画家ポール・ドラローシュの下で学んだ画家ですが、途中絵画を止め、写真という表現方法を選択しました。一瞬ですべてを1枚の紙に写し取る写真の圧倒的リアリティは、当時画家を志す人々に大きな心理的圧迫を与えたのです。のちに彼は絵画の世界に戻りますが、写真家であった経験は、作風に大きな影響を及ぼしたようです。キャリア後期、彼はパリを離れブルターニュ地方のカンカルに移住します。ここは美しい海辺の田舎町で、以後彼の作品はブルターニュの風景を描いたものが中心になりました。漁師の姿、牡蠣を取る女達、田園風景などが多く描かれています。

 なおゴッホは、フェイアンのファンである事を公言。ゴッホも天才、フェイアンも天才ですから、才人は才人を知るという事ではないでしょうか。

<第3回に続く>

本作品をAmazon(電子)で読む >

本作品をebookjapanで読む >

本作品をブックライブで読む >

本作品をBOOK☆WALKERで読む >

あわせて読みたい