副店長の計らいで、ボウリング会についていくことになった俺。皆に歓迎されていない身で行くのは心配で…/これは勇気の切断だ④

文芸・カルチャー

公開日:2023/12/18

YouTubeチャンネル登録者数150万人越え! 大人気ゲーム実況者もこうによる初の自伝エッセイが発売!

病気をきっかけに不登校になった中学生時代。リアルが充実し始めたけど、卒業する頃にはまた友達が0人になっていた高校時代。アルバイト先の皆で行くボウリングに自分だけ誘われなかった大学時代。あえてパジャマで出社した社会人時代。

もこうが“もこう”になるまでの全てを大公開! 「配信なんかではまるで美談のように話してるけど…」 今だからこそ言える、 もこうの秘めたるの想いがここに。

※本作品は『これは勇気の切断だ』(もこう/スターツ出版)から一部抜粋・編集しました

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これは勇気の切断だ
『これは勇気の切断だ』(もこう/スターツ出版)

 副店長「いやな、俺も途中参加することになっとるから、お前もこいや、ボウリング。時間大丈夫やろ?」

 俺「っ! ・・・いや、そんな、気遣わんでいいですよ・・・! つーか今金ないんで・・・ええ、気持ちだけ受け取っときますわ。それに誘われてないし、いっても悪いと思うんで、帰ります。」

 副店長「ええてええて、金は出したるからな、(チラッと財布をチラつかせる)ええから来いやもこう君。」

 俺「っええ・・・でもっ・・・そんなん・・・」

 曖昧模糊とする俺を副店長は強引に外に押し出し、車へと誘導した。

 

 言っておくがマジで今金がない。財布持ってきてない。

 大体俺誘われてないんだから絶対歓迎されない、空気読めてない、ありえない。俺が行くとか本当ありえない。ていうか、副店長も誘われてたのかよ・・・。

 

 何が何やらわからないうちに、いつの間にか車の助手席に座っていた。

 

 副店長「ほないこかー。中ちょっとごちゃごちゃしてるけど適当に除けて座ってくれや。ちょいボウリング場遠いけど辛抱しとれよ。」

 俺「いや、マジでいいんですか? いや悪いですよ。俺行っても別になんもないっすよこれマッジで・・・。」

 副店長「だからええって言っとるやんかw大丈夫やってなんとかなるわ。な!」

 副店長はそう言うと携帯で誰かに電話し始めた。

 会話を聞く限り、先にボウリング場へ到着したメンバーと連絡を取ってるようだ。A君?。ではなさそう。多分キッチンの社員さん。

 

 副店長「おお、今終わったから向かうわ。二人な、二人。いけるやんな? ん? 何? 証明書? え、そんなんいるんか。おい、ちょっともこう君、今証明書かなんかある?」

 俺「えっ・・・あ。いや、財布忘れたんで・・・ちょっと何もない・・っすわぁ・・。」

 副店長「おーい、ない言うてるで。あかんの? 大丈夫やろ? え、何? ・・・まぁええわとりあえず今から向かうから。あ、もう先始めとってくれてええで。ほな」

 

 アミューズメントパークでは深夜になると生年月日を証明するものを要求される。そういう訳で身分証明書の有無を尋ねてきた訳だ。

 でもさっき言った通り、俺財布忘れたぞ。免許は持ってないし学生証も今ない。何もない。もう諦めた方がいいだろこれは。

 やっぱり俺行かない方がいいんだって副店長さんよ・・・。

 

 とかなんとか考えてたら車発進。

 もう流れに身を任せるしかない。どうとでもなれ。

 

 車の中では相変わらずさっき号泣していた件を嘆く俺。それをうんうんと相槌打ちながら聞いてくれる副店長。

 この頃になると流石に俺も泣き止んで平静を取り戻していた。ただ鼻水は何故か止まらなかったので、汚らしいことに車の中でもチーンチーンとかみまくった。あのトイレットペーパーで。

 

 俺「あの、あんまこういうこと言うのあれなんスけど、さっきのこと忘れて下さい。俺どうかしてました。着いたら普通に振る舞うんでどうかよろしくお願いします。」

 副店長「おお、それでええやん。わかっとるて。ただ、皆んとこ行っても下向いとったらあかんぞ。笑顔やで笑顔。」

 

 まるで内気な小学生とその父親みたいな会話だ。。

 「俺」という人物はこれでも成人なのだから笑える。

 

 やがて車はボウリング場に到着した。一部伏字にするが「○ウン○ワン」である。

 二人はエレベーターで受け付けカウンターへ向かい、事情を説明する。

 先に来ていたメンバーと合流したいということ、俺に身分証明書がないということ。

 ぶっちゃけた話ここで「どうしても必要なんですよ~~。どうかお引き取り下さい^^」とでも言われる方が良かった。でも副店長の仲介があって、なんと口頭での証明で構わないということになった。

 

 受付の人「え~、では生年月日をお願いします。あと。西暦も。」

 俺「・・・かくかくしかじか」

 受付の人「ありがとうございます。今回特別に許可とさせていただきますが、次回からはお気をつけ下さい。」

 

 無事(?)受付をクリアした俺と副店長の二人はまず専用の靴を取りに行き、その後エレベーターでボウリング場へ。

 ボウリングは嫌いじゃないが滅多にやらない。

 久々にやるって言うんだから楽しみじゃないこともない。

 でも、今日のボウリングが楽しいものになるはずがない。もうこの時点でそれはわかっていた。でもせっかく副店長が連れてきてくれてお金まで出してくれるっていうんだ。せめて無理にでも明るく振る舞ってやろうじゃないか。

 そう心の中で覚悟を決めた。強く決意した。そのはずだった。

 

 ボウリング場の階にエレベーターが到着し、ドアが開く。その瞬間。

 

 他のアルバイトたち「おーい、料理長きたぞーー。あーほんまやー」

 「おそいっすよーーw 何やってたんすか?」

 「俺たち始めずに待ってたんですよー!ww さあはやくやりましょー」

 

 副店長「おお、皆お疲れさん。なんや、始めといてええっていったやないか。」

 

 俺を歓迎する声は無かった。

 

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 続きは明日。 地獄のボウリング6ゲーム。

 残り2回更新くらいで終わる予定。

<第5回に続く>

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