森永卓郎さんに聞いた!「お金を使わない人」が「一番の無駄遣い」をしているって本当?/モリタクさんの「お金の話」もりだくさん!⑦

暮らし

公開日:2024/4/20

モリタクさんの「お金の話」もりだくさん!

Q.意外なことに『「お金を使わない人」が「一番の無駄遣い」をしている』というニュース記事を読みました。お金を貯める事だけに執着するあまりに、時間を失ったり、人からの信頼を失ったりする人の例がありました。バランスが大切だと思いますが、森永さんは何にお金を使うのが一番有効だと思いますか?(AM、30代、派遣社員、女性)

 私も、無理な節約をして、使う当てのないお金を貯めることは、何の意味もないと思います。自由な時間を失ったり、人間関係を壊すことで、むしろ有害だと考えています。ただ、同時に、ある程度のお金は、貯めておいたほうがよいとも考えています。お金がないと、自由を失うからです。

 例えば、粉飾決算とか、安全基準を無視するなど、企業犯罪に加担してしまうサラリーマンが、一律に悪人ということはなくて、自分や家族の生活を守るため、犯罪だと分かっていても、上司の命令を拒否できないということが多いのです。もし、会社をクビになっても生活していけるお金を持っていれば、自分自身の正義感に基づいて、内部告発をするとか、会社を去ることが可能になります。個人的には、収入がなくなっても3年間は暮らしていけるだけの貯金があれば、魂を売らずに済むようになります。

 それだけではありません。私は、ある程度のお金を持つことの最大のメリットは、好きな仕事を選べるようになることだと考えています。大雑把にいうと、楽しい仕事ほど、お金にならないというのが世の中の大原則です。毎月、毎月、どうしてもお金を稼ぐ必要があると、嫌な仕事を続けなければならなくなります。

 私自身の経験で言うと、ライフスタイルを大きく転換したのは、20年前、46歳で勤めていたシンクタンクを辞めたときでした。それまでモーレツ社員として働いてきたので、かなりの額の預貯金ができました。そこで、それ以降、「嫌な仕事はしない」というスタンスを貫いています。いまの私の場合、リスクの高い金融商品の広告に出演したり、政府の打ち出す政策を支援するような言論活動をすれば、桁違いに大きな報酬を得られます。ただ、私はこの20年間、一貫してそうした仕事を拒否してきました。だから、「何にお金を使うのが一番有効」かと聞かれたら、嫌な仕事をしないことに使うのが一番有効だと思います。

 そのことは、高齢期になると、一層鮮明になってきます。私は、現在66歳で、同級生の多くが、現役を引退しています。そのなかで、現役時代にお金を貯められなかった人は、生活のために、いまでもやりたくもない仕事を継続しています。一方、現役時代にある程度のお金を貯めた人は、世界旅行をしたり、仲間とバンド演奏をしたり、家庭菜園をしたりと、自由で楽しい老後を過ごしています。それが、一番のお金の有効な使い方だと、私は考えているのです。

<第8回に続く>

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