WEB官能&BL(09)斉河燈『強引さえもひたすら甘く』

更新日:2013/8/6

 名は体を表すとはいうけれど、花園(はなぞの)琴梨というフルネームは可愛らしすぎて私の性質とはかけ離れている。

 ハナゾノコトリ――残念ながら私の身長は百七十センチで、鳥だとしても小鳥の部類には入らないし、お花畑でのほほんとしているタイプでもない。

 大手化粧品メーカーに就職したのは八年前。配属を命じられたのは第一志望の広報部だった。

 時には守りもするが、基本的には攻める仕事だ。

 社内報の発行、各マスコミへのプレスリリースの送付、新製品を持ち込んでのプレゼン、問い合わせ対応、そして記者会見の手配に、危機発生時の対応……つまり企業が持つ魅力や方針を、最大限引き出して発信していくのが主な役割。

 気は休まらないが、そこがいい。もしも今の職場を去ったとして、私はやはり広報の職を探すだろう。

 プライベートでこの充実感を薄めたくはなく、週末には習い事も掛け持ちしている。

 そのせいか完璧主義として周囲に認識され、些細なミスも『らしくない』と言われる最近。機械じゃあるまいし、とは思うが、否定するつもりはない。

 今の私は、私が八年かけて培ってきた努力の証だ。

 それを守るためにも、私は私であるために今を奔走していたかった。このペースを誰にも乱されたくなかった。立ち止まってなどいたくなかった。

 だから恋愛ごとにも関わりたくはなかった。なのに。

『琴梨さん、綺麗です。予想以上です』

 あの夜を何度も振り返ってしまって、忘れられない。

『ここまで来て、待ったは聞きませんよ』

 強気な囁きも、余裕のない動きも、ぴったりと無駄なく収まるあの感覚も。

 二週間前の金曜、初めて会った男の名は遙(はるか)――二川(ふたがわ)遙という。

 

 

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