【第18回】「ジャンプ」がついに本格電子化!「週刊少年ジャンプ+」の狙いとは?

更新日:2014/10/29

無料マンガアプリとの違いと新しい才能の発掘

――「ジャンプ+」の特徴に、「無料で読める」作品が用意されている点も挙げられます。この連載でも、マンガボックスのようなスマホ向けの無料マンガアプリを取り上げていますが、そういったアプリとはどう異なるのでしょうか?

細野:ジャンプLIVEの第一号を出したときは、無料マンガアプリはまだ存在していなかったと思います。2号のあたりで、マンガボックスさんやcomicoさんが登場していましたね。実際僕も色々なアプリでマンガを読んでみて、正直なところ参考にさせて頂いた部分もあります(笑)。

現状の無料カテゴリの位置づけとしては、「ジャンプ+」の発売日(本誌とサイマルで内容が更新されるタイミング)の間も、次々更新される無料マンガでアプリを起動し、楽しんで欲しいという狙いがあります。無料マンガを読みに来た方が、有料部分の試し読みで作品を気に入って頂いて購読につながるという期待ももちろんあります。

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籾山:ただ、一番重要なのは、デジタルネイティブな読者層ももちろんなのですが、デジタルな才能(描き手・マンガ家)を、ジャンプに招き入れたいということですね。そのために、「ジャンプ+」では「少年ジャンプルーキー」という投稿型のサービスで作品募集を開始しました。

 

 

 以前は、「デジタルよりも紙が上。紙の雑誌に掲載されることはいわばメジャーリーグでプレイするようなもの」という考え方も根強かったと思います。でも、今は全然そんなことは無くなってきていて、デジタルで人気を博して、メジャーと呼ぶに相応しい活躍をされている作家さんも沢山います。

 そういう方々は、そのままでは紙の雑誌や単行本という場に、全く触れないかもしれません。「ジャンプ+」は、そんな「次世代の天才」たちにも作品を発表してもらえるような場になっていきたいと考えているんです。

 これまでジャンプでは、持ち込みかジャンプのマンガ賞へ応募頂いた方の作品の掲載がほとんどでした。「ルーキー」は従来のデビューへの道のりと並び立つような、金の卵が生まれるような存在にしていきたいと思っています。ルーキーに投稿された作品は、ジャンプ編集部の誰か一人は必ず目を通して、「絵が良い」「ストーリーが良い」といったスタンプを押して、アプリからも閲覧できるようになる予定です。

「ジャンプ+」の無料マンガカテゴリ――今後は「ルーキー」からの転載も行っていくことになりますが――には、単に無料でマンガが読める、ということだけでなく、そういった思いも込められています。

――たしかに、デジタルならではの才能を感じさせる作品が話題になっていたりもしますね。『キッカケはプラネタリウム』という作品は、ネット上で「絶対に読むべき」と絶賛されていました。一方で、気になるのはスマホで好まれるとされる「縦スクロール」と、紙の雑誌・単行本では一般的な「横開き」のスタイルの違いであったりもします。

 

表紙から物語冒頭の部分。縦にスクロールして読んでいく (C)ハシモトスズ/集英社

 

細野:まさにそういった点を、ジャンプLIVEから試していたわけですが、結局最後は作家さんが考えて、読者が喜ぶ最適な答えを見つけ出してくれると信じています(笑)。マンガの見せ方はマンガ家さんが一番分かっているはずです。アプリ、そして雑誌・単行本を作って行く中で、読者の方々や作家さんの話を聞いてそれに我々は答えて行けば良いかなと。面白い作品であれば、縦でも横でもあまり関係ないはずですから、表現手法に拘り過ぎる必要はないかなと思っています。

――なるほど。これはジャンプには当てはまらないかも知れませんが、無料アプリ、あるいはマンガ雑誌の多くは、単行本やアニメ化・映画化などの2次的な売上で成り立っているという指摘もあります。この点についてはいかがですか?

細野:まず大前提からお話しすると、「ジャンプ+」は「ジャンプ+」単体で黒字になるように取り組んでいます。

一方で、もちろん単行本(コミックス)もしっかり売っていきたいと思っています。やはり世の中的に「ヒット」しているという評価を頂けるのは、コミックスの部分ですから。「ジャンプ+」オリジナル作品のコミックスで100万部を目指してがんばっていく中で、先ほどお話ししたように様々な試みにチャレンジして、ヒットの芽を見つけ出すというのが我々の役目でもあります。

――ルーキーでの新しい才能の発掘から、アプリを通じてのマンガとの出会い、単行本のヒットへとつながる道筋を「ジャンプ+」で描いていることがよく分かりました。お忙しい中有難うございました。

取材・文=まつもとあつし

「少年ジャンプ+」Webページ

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