【1分間名作あらすじ】谷崎潤一郎『卍』――同性愛と不倫。卍模様に交錯する愛

文芸・カルチャー

2018/6/11

『卍 (新潮文庫)』(谷崎潤一郎/新潮社)

 夫に不満のある園子は、通っている美術学校で光子という美しい女性に出会い、やがてふたりは同性愛の関係を持つようになる。園子の夫は次第に、園子と光子がただの友達関係ではなさそうだと不信がるようになる。

 光子は同性の園子とは別に綿貫という男とも交際しており、光子の妊娠が発覚する。しかしこの妊娠は、光子を自分だけのものにするために綿貫がついた嘘だった。綿貫は性的不能者であることを秘密にしていたのだ。光子は園子のことを愛していたが、嫌いな綿貫から束縛され、逃げられずにいた。

 綿貫の策略はますます過激になり、逃げ場を無くした園子と光子は死なない程度に服薬し、計画的に心中を装う。これにより綿貫は光子と会えなくなった。ふたりは搬送され眠っていたが、先に目覚めた光子は、看病をしていた園子の夫と性関係を持ってしまう。そして彼が光子の初めての男になってしまった。

 誰かが不幸になるなら全員で死ぬと約束し、光子と園子、光子と園子の夫という3人の奇妙な恋人関係が始まった。夫婦は次第に光子に支配されていく。ふたりは毎晩、光子に忠誠を誓うために睡眠薬を飲まされ続け、衰弱していく。

 ある日、園子と光子の同性愛が新聞によってスクープされてしまう。報道は連日続き、追い込まれた園子、夫、光子の3人は心中する。夫と光子は死んだが、園子は命を拾った。すぐにふたりの後を追って死のうと思ったが、自分がふたりに欺かれたのではないかと疑心暗鬼になり、彼女は結局死ねなかった。

文=K(稲)