佐渡島庸平 今月の「この本にひとめ惚れ」『タコの心身問題 頭足類から考える意識の起源』『階段を下りる女』『ストーリー ロバート・マッキーが教える物語の基本と原則』

文芸・カルチャー

公開日:2019/4/11

『ダ・ヴィンチ』本誌の人気連載コーナー「この本にひとめ惚れ」から、コルク代表・佐渡島さんのひとめ惚れ本を紹介。『宇宙兄弟』『ドラゴン桜』といった大ヒット作品を世に出した天才編集者・経営者が“ひとめぼれ”した本をチェック!

『タコの心身問題 頭足類から考える意識の起源』
ピーター・ゴドフリー=スミス:著
夏目 大:訳
みすず書房 3000円(税別)

装丁(日本語版):細野綾子
装画:Ernst Haeckel
編集(日本語版):市原加奈子

帯の「進化はまったく違う経路で心を少なくとも二度、つくった。」が秀逸。
タコはとてもアタマがいいらしいが、もしタコがまったく違う進化をして、知能が生まれたら……。そのことから意識についてみるという試み。この本からAIについて考えてみるのもおもしろそうだ。

『階段を下りる女』
ベルンハルト・シュリンク:著
松永美穂:訳
新潮社 1900円(税別)

装丁(日本語版):新潮社装幀室
装画(日本語版):Takao Ono

『朗読者』の著者による小説。昨年20周年を迎えた新潮クレスト・ブックスは本当に素晴らしいレーベル。そのフェアコーナーから。
音楽を巡る哀切なラブストーリー。平野啓一郎氏の『マチネの終わりに』は一枚の絵を巡る哀切なラブストーリー。似た時代の違う国でリンクしたことを書いている作家がいるとは。

『ストーリー ロバート・マッキーが教える物語の基本と原則』
ロバート・マッキー:著
越前敏弥:訳
フィルムアート社 3200円(税別)

装丁(日本語版):水戸部 功
編集(日本語版):山本純也

いま、現在マンガの学校を開講しているので、直球なタイトルにぐっときた。
マンガについて、編集について、猛烈に考えているところなので、このストレートなタイトルに惹かれて。

【青山ブックセンターにて彷書】

<プロフィール>
佐渡島庸平(さどしま・ようへい)
1979年生まれ。東京大学文学部を卒業後、2002年に講談社に入社。
週刊モーニング編集部にて、『バガボンド』(井上雄彦)、『ドラゴン桜』(三田紀房)、『働きマン』(安野モヨコ)、『宇宙兄弟』(小山宙哉)、『モダンタイムス』(伊坂幸太郎)、『16歳の教科書』など数多くのヒット作を編集。
インターネット時代に合わせた作家・作品・読者のカタチをつくるため、2012年に講談社を退社し、コルクを創業。
従来のビジネスモデルが崩壊している中で、コミュニティに可能性を感じ、コルクラボというオンラインサロンを主宰。
編集者という仕事をアップデートし続けている。
●Twiter ID:@sadycork

写真=首藤幹夫
取材・文=田中裕