宮沢賢治『風の又三郎』あらすじ紹介。彼は単なる転校生か、それとも風の神の化身か

文芸・カルチャー

更新日:2023/7/12

風の又三郎
『風の又三郎(角川文庫)』(宮沢賢治/KADOKAWA)

 谷川の岸に、1年生から6年生までがひとつの教室で学ぶ小さな学校があった。

 夏休みが明けた9月1日。高田三郎という転校生がやって来た。彼は髪が赤く、目が丸くて黒い、異様な雰囲気を醸していた。生徒が皆東北弁を話すのに対し、三郎は標準語をつかい、話が通じない。5年生の嘉助は彼の正体が「風の又三郎」(風の神様の子)だと信じ込む。翌日三郎が運動場を歩くと、風がざっと吹く。

 その週末、三郎は嘉助や6年生の一郎たちと共に高原に遊びに行く。そこで逃げ出した馬を嘉助と三郎は追った。深い霧の中で強風が吹き、意識を失った嘉助は、ガラスのマントと靴を身につけて飛ぶ三郎の幻を見る。

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 8日、皆で川に遊びに行く。鬼ごっこをして遊んでいると、急に天気が悪くなった。子どものうちの誰かが「雨はざっこざっこ雨三郎。風はどっこどっこ又三郎」と叫ぶと、皆も声を揃えて叫びはじめた。すると三郎は慌てて川から飛び出し、一目散に皆のところへ駆け寄り、がたがたと震えながら「いま叫んだのはおまえたちか」と聞く。皆は「そではない」とごまかしたが、三郎は震えていた。

 三郎が来てから12日目の月曜日。一郎は、三郎の風の歌の夢を見て起きる。台風が来たことで三郎がいなくなる予感を抱く。学校に着くと、先生は三郎が転校したと皆に告げる。

文=K(稲)