「ミーちゃん、ハンターギルドに行く。」/『神猫ミーちゃんと猫用品召喚師の異世界奮闘記1』③

文芸・カルチャー

2019/7/26

神様の眷属ミーちゃんを助け、転生することになった青年ネロ。彼に懐いたミーちゃんと一緒に、異世界での生活を頑張ります! 鑑定スキルと料理の腕でギルド職人をしたり、商人になったり…異世界のんびりモフモフ生活!

『神猫ミーちゃんと猫用品召喚師の異世界奮闘記1』(にゃんたろう:著、岩崎美奈子:イラスト/KADOKAWA)

 お腹も一杯になり次はお風呂に入りたいので、共同浴場の場所を聞くと歩いてすぐそこのようだ。早速、行ってみよう。

 さすがにミーちゃんを連れて行けないので、部屋においていくことになる。バッグの中身もタンスに移して石鹸と着替え、タオル、料金がわからないので大銀貨一枚だけ持っていくことにする。

「ミーちゃん。お風呂に行って来るから、お留守番お願いね」

「み〜」

 そう鳴いてベッドの上で欠伸をしてから丸くなり、寝てしまった。

 部屋に鍵を掛け、女将さんに預けて共同浴場に向かう。共同浴場は石造りの大きな建物で料金は五百レト、まあ、妥当な値段かな? でも、お金を稼ぐ手段を見つけないと毎日は入れないな。

 番号の書かれた札を二枚もらい。服を脱いで一枚を荷物と一緒に籠に入れ、番台に渡す。盗難防止対策なのだろう。

 風呂場に行くと、日本の銭湯そのものだ。入り口で突っ立っていたら、見知らぬオッチャンに声を掛けられた。

「兄ちゃん、共同浴場は初めてか?」

「はい。広くて大きなお風呂に圧倒されちゃいました」

「ハッハッハッ! そうかそうか、初めてならそんなもんだ。初めての兄ちゃんに今日は俺からのサービスだ! ここに座りな」

 言われた通り、オッチャンの前に座ると頭からお湯をザブーンと掛けられた後、泡々の液体をまた頭から掛けられ、その後は頭をゴシゴシ豪快に洗われる。頭を洗われた後は強制的に寝かされ、全身をゴシゴシ洗われる。ちょっと恥ずかしかったけど、それ以上に気持ち良かった。

「どうだ、最高だろう。次に来た時は金払ってくれよな」

「はい。最高でした。ちなみにおいくらですか?」

「百レトだ」

「安っす!」

「そうだろう。そうだろう。こいつは来てくださってる、お客へのサービスだからな。次、頼むぜ」

「はい。是非お願いします」

「それじゃあ、ゆっくりと風呂を楽しんできな」

 このオッチャンは日本で言うところの三助さんだな。いやぁ、ほんとに良かったよ。その後は風呂にゆっくりと入って、お湯を堪能したね。

 また、来ようと思える共同浴場だった。

 共同浴場から宿に帰って来て、部屋に戻る前に女将さんに頼んで桶にお湯を貰った。

 部屋に入ると、ミーちゃんが飛びついてきてスリスリしてくる。危なく桶を落とすとこだったよ。寂しかったのかな?

「ミーちゃんもお風呂に入って綺麗になろうね」

「み〜」

 ミーちゃんの了解が得られたのでテーブルの上に桶を置き、ミーちゃんを抱えてお湯に入れると普通にお湯に浸かって桶の縁に顔を載せ和んでいる。明らかに慣れた感じだ。ミーちゃんも風呂好きとは嬉しいねぇ。

 ミーちゃんのまったり顔をよそにミーちゃんの体をお湯の中でモミモミして、体を洗ってあげたけど、ほとんどお湯は汚れていない。足の裏がちょっと汚れていたくらいで、顔を濡れタオルで拭ってやり、桶から出してバスタオルでくるむ。

「み〜」

 ある程度水気をとってやり、後は自由にさせると自分で毛繕いを始める。こんな近くで猫が見れるなんて夢のようだ。いつまで見ていても飽きないね。

 なんとなく神様の気持ちがわかった気がする。ミーちゃんのような子猫だと庇護欲をそそられる。

 でも、やることはやってしまおう。桶を外の井戸で洗って女将さんに返してから、洗面所で歯を磨く。やることといってもそれくらいだけどね。テレビやゲームがある訳じゃないし、部屋にあるのはランプのみ。ミーちゃんを撫でる以外することがない。

 下の食堂兼酒場は、まだ大勢のお客で賑わっているけど、もう寝ようか。明日はどうやって金策するか考えないとね。

「み〜」

 ベッドに入ると、ミーちゃんも入って来る。寝ている間に潰さないように注意しないとね。なんて考えていたら睡魔に襲われ、無条件降伏でした。

 

 翌朝は鐘の音で目が覚めた。六回鳴ったような気がするので、六時なのだろう。

 ベッドから起き上がると、ミーちゃんも目を覚まし大きな欠伸をした後、朝の挨拶をしてくれる。

「み〜」

「おはよう」

 洗面所で顔を洗い寝癖をブラシで直す。次はミーちゃんを念入りにブラッシングする。艶々になり、ミーちゃんの可愛さが三割……いや三倍増しだね。

 身なりが整ったので朝食を食べに下に降りると、既に多くの人たちが朝食をとっている。

「起きたかい、空いてる所に座りな」

「女将さん、おはようございます」

「み〜」

「ああ、おはよう」

 女将さんと朝の挨拶をかわして、空いている席に座って待つ。待つ間に周りを観察してみる。みんな屈強そうな人ばかりだ。女性もチラホラいるけどその女性ですら、俺より強そうに見える。

 試しに鑑定でこの中で一番屈強そうな男性を見てみると、ほどほど強いと出て腕力強化と槍技のスキルを持っているのが見えた。あの人でほどほどって、本当に強い人ってどんだけなんだろう。

「待たせたね」

「いえ、全然です。ありがとうございます」

「ミーちゃん、今日は特別別嬪さんだね」

「み〜」

 ミーちゃん、満面の笑みを女将さんに見せる。ブラッシングの効果がこうも早く現れるなんてね。ミーちゃんのブラッシングは毎日の必須事項にしよう。

 朝食に猫缶とミネラルウォーターを召喚してお皿にだしてあげる。やっぱり体がだるくなる。

「頂きます」

「み〜」

 朝のメニューは黒パンにハムエッグ、ポタージュとサラダだ。残念ながらソースや醤油はなかった。当たり前か……。美味しいけど味付けは塩が少々掛かっている程度、素材の味を活かしているとも言える。今後の食生活はなんとかしないと苦労しそうだよ。

 俺が朝食を食べ終わる頃には、周りには誰も居なくなっていた。

「ネロは急がなくていいのかい」

「急ぐって、なんかあるんですか?」

「み〜?」

「何って……仕事だよ。早く行かないと良い仕事を取られちまうよ」

「そうなんですか……どこに行けばいいんですか?」

「どこにって……あんた、ハンターギルドに決まってるだろさ。まさか、知らないのかい?」

「ははは……知りません」

「あれま、ネロはどこから来たんだい。まったく……」

 女将さんがミーちゃんと戯れながら噛み砕いて説明してくれた。

 ハンターギルドは名前の通り、モンスターを狩るのが本来の仕事。国の兵士や町の守備隊などだけではすべて対応しきれないので、国の代わりに代行しておこなう派遣会社だと思えば良いと思う。但しハンターギルドは国からの干渉は許していないらしく、戦争には手を貸さないと公言しているみたいだ。昔からある組織で、今ではモンスターを狩るだけではなく、色々な仕事も斡旋してくれるそうで、昔は冒険者ギルドと呼ばれていたそうだ。

「成程。後で行ってみます。今日は行く所があるので」

「そうだね。登録だけでもしておきな」

「み〜」

 一旦、部屋に戻りバッグを持って出掛ける。今日は武器を見に行こうと思っているのだ。スキルはなくなったけど、訓練はしないと駄目だろう。その為にも扱える武器を見ておきたい。もちろん当初の予定通り、弓を使おうと思っている。

 ミーちゃんを抱っこして宿を出る。武器屋は昨日、共同浴場に行く途中に見つけている。問題はこんな朝早くからやっているかだね、なんて思ったけどやっていた。この世界の人たちは働き者だ。

 ドアを開けて入ると、何とも言えない革製品臭さや鉄臭さがする。

「なんだ、客か?」

「み〜」

「はい。弓を探してます」

 店の奥の方に連れていかれると、棚にいくつも弓が並んでいる。

「そうだな、標準的な弓はこの辺りかな」

 そう言って棚から弓を取って渡してきたのは西洋弓のロングボウだった。

 試しに引いてみる。前にアーチェリーの四十ポンドは引いたことがあるので、結構自信があるんだよね……って、ぐっ、ぐぅおぉー、重過ぎる……。引けることは引けるが、標的を狙うことなんてできないぞ、これは……。もっと軽い弓はないのだろうか? 

 あれ? 店員さんが呆れ顔で俺を見ているような……なんで?

「止めといた方がいいと思うぞ。モンスターを狩るなら、それが最低ラインだ。お前さんじゃ無理だ。鍛えて出直してきな」

 トボトボと店を出て来ました。なんてことだ。初っ端から人生設計に躓いてしまうなんて……。躓いたというより躓かされたというべきだろう。こんなこともあろうかと弓技スキルと身体強化スキルを選んでいたのだから。

 これで俺の人生設計が砂の城の如く呆気なく崩れ去った。

「みぃ……」

 ミーちゃんの悲しげな鳴き声が辺りに響き、そして俺は途方に暮れる……。

ミーちゃん、ハンターギルドに行く。

 トボトボとミーちゃんを抱っこして町の中を徘徊していると、多くの人が出入りする建物が見えた。気になったので覗いてみると、どうやらここがハンターギルドと呼ばれる場所のようだ。

 狩りはできないけど、他に何かできる仕事がないか見ていこう。正直、なりふり構っていられない。何とかしてお金を稼がないと。

 建物の中に入ると、人でごった返している。受付のような場所は待っている人で一杯だ。そんな中、一ヵ所だけ誰も並んでいない空いている所があったので行ってみることにした。

「なんだ、坊主。ここはガキの来るとこじゃねぇぞ」

 スキンヘッドのマッチョなオッチャンが、聞き捨てならない言葉と共に出迎えてくれる。ここは断固抗議しなければならない! 俺の沽券にかかわるからね。

「み〜」

「子供じゃないですよ。これでも十八です……」

 ヘタレじゃないぞ。目の前にこんな物騒な人間が居るんだ、命は大切にしないと……。

「ハァ〜? 十八だと……ガキにしか見えねぇぜ。おい、パミルこっち来い!」

「もう、ガイスさん。こっちは忙しいんですよ。どこかの誰かさんが凄んでるせいで、誰もそっちに行きたがらないんですからね!」

「うるせぇ。来たがらねぇって、ちゃんとここに一人来てるじゃねぇか!」

「あら、ホントだ。ご愁傷さまなのかしら、それとも物好きなのかしら?」

 金髪の美人な女性がとんでもないことを言ってますが、至って普通の性格です。

「チッ、いいからさっさとこいつを鑑定してみろ!」

「ハイハイ。ネロ、十八歳。あら、私と同じ鑑定スキル持ちね。うちで働かない?」

「マジかよ……。本当に十八なのか……採用だ。午後にもう一度ここに来い」

「あのう……」

「わかったら、さっさと消えろ!」

「ハヒッ!」

「みぃ……」

 何が何だかさっぱりわかりませんが、なんか仕事が貰えるようです。ラッキー!

 午後まで時間があるから、町でも見て歩こうか? ねっ、ミーちゃん。

「み〜」

 仕事が見つかって良かったねって顔で俺を見てくる。ありがとう! ミーちゃん! なんて清々しい朝なんだ! さあ、みなさん今日も一日頑張っていきましょう!

<第4回に続く>