フミコフミオ氏初インタビュー「強く見える人は戦い方を知っているだけ。」生きづらさに負けない考え方

小説・エッセイ

公開日:2019/10/24

コンセプトは時代と共に変化する「生きづらさ」

—本書のコンセプトを教えて頂けますか?

フミコ:技術が発達して便利になって、人とも会いやすくなってるはずなのに、どうして人とのコミュニケーションはうまくいかないのか。「生きづらさ」「人生の不条理」「日々感じている怒り」があまり変わらないのがすごく不思議でした。今の世の中は、どんどん便利でクリーンになってるけど、追いやられてしまって、心がついていけてない人がいるのかもしれません。生きづらさ自体も時代と共に変わってきている。

フミコ:もう1つ、2019年にしか書けないことを書きたいと思って意識的に書籍に入れています。去年だったら同じ内容になっていない。2019年に生きている45歳の男が書いている内容です。

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西浦:2019年を特に意識している部分はどこですか?

フミコヤクルトスワローズが弱いとか(笑)

伊藤:お酒の量がそれで変わりますからね(笑)

西浦:ははは(笑)。ちなみに、本を編集する際に、家族系のネタをカットしてビジネス書に寄せることもできたと思うのですが、そうしなかった意図はありますか?

伊藤:奥さんとのやりとりが面白いからですね。奥さんとフミコさんとのやりとりが世代間ギャップのメタファーで、世代間ギャップを埋める問題解決(解決すらせず、うやむやにする技術)。になるのではないか?と思ったというのがカッコいい答えかなと思います。多くのブログ読者は、自分の生活に重ねて、メタファーとしてブログを読んでると思うんですよ。

フミコ:どこかしらに共感して自分の生活に投影しているかもしれませんね。しかし、奥さんとの話は争い系が多いな~ひどいなうちの奥さん。

アホと付き合わねばならない僕らは、せめてエンタメ化するしかない

実はアイコン画像はもともと「でんでん さん」のラテアートだそうです

—第2章は特に印象に残る方のエピソードが多かったのですが、そこで提示されていた「アホと付き合わなければならない場合はエンタメ化すればいい」という考え方について詳しく教えてください。

フミコ:昔はヤベーオッサンから反面教師として何か学び取ろうとしていました。でも、今はマニュアルやセミナーなどの教材があるから、そんなこと必要ないんです。だから、アホと付き合う時は面白がるしかない。彼らの唯一の活かし方なんです(笑)。

西浦:アホと戦うな、バカと付き合うなっていうけど、一般人の僕らからしたら「無理じゃん!」ってなりますよね。だから、「エンタメ化」っていう第三の道の提案は読んでいてすごく嬉しかったです!

フミコ:何かを見て面白いって共感することもエンタメだけど、僕は、小説を読んでその登場人物とどれだけ共感できるかがエンタメだと思ってるんです。折り合いをつけて、自分を守りつつアホと付き合う45歳の男に少しでも共感してもらえたらと思って書いてます。

戦い方は自分で身に着けてほしい

—最後にフミコフミオさんがブログを始めたきっかけを教えて頂けますか?

フミコ:ストレス発散と友達が少しでもできたらいいな~という理由からでした。最初に入った運送系の会社が厳しくて、どうしても楽しめなかったので、6~7年くらい芸にならないどうでもいいことをネットの片隅で書いてました。「ムカつく!」とか「(実名で)死ね!」とか(笑)。でも、全くスッキリしなくて。消化も昇華もできず、エンタメ化もできていませんでした。今のブログは、「会社に感じている葛藤を面白く書こう」と思ってスタートしました。そうしたら、周りがどうこうよりも、自分が楽になったんです。厳しい人生でも光りの照らし方によっては捨てたもんじゃない、自分のどうでもいい人生に価値があるように見えてきたんです。

西浦:ブログを書き始めたことで、エンタメ化でき、ご自身にも救われた部分があったのかなって読みながら思いました。そして、消化できる戦い方(書き方)を身に着けていったのかなと。

フミコ:僕が一番書いたことで救われてますね。文字数を使って書くようになってから、思考や生活の見直しや整理をして、だんだん洗練された戦い方を身に着けてきた感じです。僕の本は、即効性あるメソッドはないので、何かをつかんでもらえれば。僕が書いていることで救われた人もいるのかもしれません。読者が増えた理由もそこかなと思います。

西浦:確かに、こうやればいいんだっていう問題解決の本ではないですよね。

フミコ自分で考えてほしいです。じゃないと解決にならないと思って書いてます。

西浦:著者として読者には、やはりブログなど「書いてみてほしい」と思いますか?

フミコ:それはあります。書くことで整理されるし、違う自分が見えると思います。自分はこう思うを言葉にしてみないと、実際にどう思ってるか確認ができない。「こう思うのはなぜだろう?」を書くことでどんどん深くなって、自分を知ることになる。一回、何でもいいので書いてみてほしいです。ネタとして掘っていく感じなので、それぞれの面白さが自分の個性として出てくると思います。書くことは自分を知ることなんです。

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フミコフミオさんは本当に優しく謙虚な、普通の会社員のおじさん(失礼!)でした(笑)。でもひとたび筆(もといガラケー)を取れば、人間観察力そして感情の分析力、言葉選びのセンス、とにかく私たちを虜にするすごい文才の持ち主でした。『ぼくは会社員という生き方に絶望はしていない。ただ、今の職場にずっと……と考えると胃に穴があきそうになる。』ぜひ読んでください。きっと皆さんもフミコ中毒になってしまいますよ。

フミコフミオさん、そして編集者の伊藤さん、西浦さん、本当に貴重なお話しありがとうございました!最後まで読んで頂きありがとうございました。

フミコボードトーテムポール

文=白木賀南子