夏目漱石は猫だけでなく犬も飼っていた!/『文豪どうかしてる逸話集』③

文芸・カルチャー

公開日:2019/11/11

夏目漱石、汚い部屋を見られたくなくて、アメリカ人女性の来訪を断る。

 アメリカ人のある女性から漱石宛てに「今度日本に行くので、書斎に遊びに行ってもいいですか?」という手紙が届いた。

 なんでもそのアメリカ人女性は、日本の文学や詩に興味を持っているらしく、ぜひ漱石の書斎を見学させてほしいとのこと。

 これに対して漱石は「え? うそ? アメリカ人から手紙来た!」「とうとう自分も海外にまでファンができたか!」と喜んだが、少し考えてから、丁寧な英語で「断る」と返事。

 のちに芥川龍之介に、この来訪を断った理由について聞かれると、「だって、こんな狭くて汚いとこで書いているって、アメリカの人に思われたくないじゃん」と答えたのであった。

(出典) 芥川龍之介『漱石先生の話』

猫だけでなく犬も飼っていた夏目漱石だったが……。

 漱石の家には何度か泥棒が入ったことがあったため、番犬を飼うことになった。

 しかしこの犬、通行人に吠えまくったりとなにかと素行が悪い。

 そしてある日、とうとう近所の人に嚙みついてしまい、警察沙汰に。

 この犬をかわいがっていた漱石は、

「うちの犬は利口ですから。怪しい奴にしか吠えないし、家の者や人相のいい人には吠えない。嚙みつかれたりするのは人相の悪い奴か、敵意を持っている奴。犬ばかりを責めるわけにはいかない」

 と反論し、警察官に「犬を出せ」と言われても頑(がん)として譲らなかった。

 しかし後日、夜遅くに帰宅した際に、この犬に吠えられた挙句に嚙みつかれ、服もぼろぼろにされた漱石は、この犬をそっとよその家へ譲った。

(出典) 松岡譲『漱石の思い出』

<第4回は芥川龍之介です!>