許してもらうことが目的じゃない!お互いの関係を改善する「フェアな謝罪」とは?/『NOを言える人になる』⑥

暮らし

2020/4/4

あなたから自由を奪うすべてにNOを言い、自分の人生を取り戻すときだ――。会社の同僚、上司、家族といった人間関係や社会に、どうNOを言うべきか。どうすれば、あなただけのルールで生きられるようになるか。生きづらさを抱えた多くの人々の生存戦略を、わかりやすくご紹介します!

『NOを言える人になる 他人のルールに縛られず、自分のルールで生きる方法』(鈴木裕介/アスコム)

謝罪は、関係を改善するためだけに行う

 さて、他人からのラインオーバーに関係して、一つ、伝えておきたいことがある。

 それは「誰かに謝罪するときには、ラインオーバーに気をつけた方がいい」ということだ。

 たとえば、仕事で失敗をして、同僚やクライアントなどに迷惑をかけたとき、金銭や人間関係などでトラブルを起こして家族を困らせたとき、自分の言動が原因で友人や恋人と喧嘩になったとき、僕たちは反省し相手に謝罪をする。

「相手からの無茶な要求に応えられなかった」ということであれば、謝罪自体する必要はないと思うけど、明らかに自分に落ち度がある場合、謝罪をするのはとても大事なことだ。

 ただ、ここで考えておきたいのが、謝罪をする理由について、だ。

 おそらくほとんどの人にとって、「自分や自分の周りの人(家族、恋人、近しい友人、同僚など)の言動によって、何らかの不利益や不快感を与えてしまったことに対し、申し訳なく思う気持ちを相手に伝えたい」というのが、謝罪をする第一の理由だろう。

 でも、その裏には「謝罪をしないと、相手の気持ちがおさまらない」「謝罪をすることによって、相手に許してほしい」という思いもあるのではないだろうか。

 不祥事を起こした企業が謝罪会見を行うのは「企業のさらなるイメージダウンを防ぎ、消費者に許してもらうため」であり、部下がミスをして、取引先に迷惑をかけたとき、上司が謝罪をするのは「取引関係を失わないため」だ。

 家族や友人、恋人などに対して謝罪をする際にも、「許してほしい」という気持ちがあるだろう。

 それを「不純だ」などというつもりは、もちろんないし、僕自身、誰かに謝るときには、やはり「許してほしい」と心のどこかで思っている。

 問題は、「許してほしい」という気持ちが「許してもらえるなら何でもする」という気持ちに変化しやすく、そのために相手からのラインオーバーを許し、自分の人生のコントロール権を手放してしまいやすい点にある。

「謝罪をする」ということは、「自分(たち)に落ち度があること」を認めていることであり、どうしても相手に対して負い目を感じ、立場が弱くなる。

 そして、世の中には「心を込めて謝ってくれさえすれば、すべてを水に流す」という善良な人だけでなく、謝罪した側の負い目や、その裏の「許してほしい」という気持ちにつけ込んでくる人も少なくない。

「ごめんですんだら警察はいらない」「悪いと思っているなら誠意を見せろ(態度で示せ)」などと口にするのは、だいたいこの手合いだし、わざと車にぶつかって、示談にするかわりにお金を請求する「当たり屋」や、わざと商品やサービスに文句をつけ、値引きや追加のサービスを要求するタイプのクレーマーなども、まさに謝罪する側の負い目を利用している。

 また、「北九州監禁殺人事件」や「尼崎連続変死事件」(いずれも、主犯が周囲の人をマインドコントロールし、殺人などをさせた事件)をみると、主犯はまず、相手に何らかの負い目を抱かせ、そこからじわじわと相手の生活や思考を支配している。

 これらは極端な例かもしれないが、「謝罪する側が、ついつい相手の言いなりになってしまう」というのはよくあることだし、もしかしたらみなさんにも覚えがあるのではないだろうか。

 それでは、いざ謝罪することになったとき、相手からのラインオーバーを拒否したり、相手からの要求にNOを言ったりするためには、どうしたらいいのだろうか。

 そのために必要なのは、「心を込めて謝罪すること」と「相手に許してもらうこと」「相手からのラインオーバーを許すこと」は、まったく別の問題だということを、しっかり認識することだ。

 謝罪や反省は、こちら側(謝罪をする側)の領域であり、責任をもって行う必要があるが、「許すかどうか」はあくまでも相手側(謝罪される側)の領域だ。

 ちなみに、僕は以前、ある人から「謝罪の目的は許してもらうことではなく、『関係を改善すること』にある」と教えられたことがある。

 相手に与えた迷惑や損害を認め、その痛みを真剣に慮ること。

 さらにそこから、どのような態度でどのように行動すれば、お互いにとってよりよい状況になるのかを、対話しながら考え尽くすこと。

 それが、フェアな謝罪のあり方ではないか、と。

 ここで大事なのは、目指すゴールが「お互いにとってよりよい状況」であるという点。

 片方がストレスを感じたり、不利益を被ったりするような関係に着地してはいけない。

 何らかのトラブルが発生し、あなたが謝罪する立場になったなら、とにかく、申し訳なく思っていることをしっかりと伝え、反省し、改めるべきところは改める努力をすること。

 それでも相手が納得していない場合、何がひっかかっているのかを冷静に探り、検討しよう。

 相手が求めている内容が、客観的に見て妥当で公正なものであり、あなたにとって無理なく応じられる範囲のものであれば、受け入れてもいい。

 しかしそうでない場合は、相手との関係性自体を見直す必要があると、僕は思う。

 謝罪をしているあなたに、必要以上の要求をしてくる相手と、果たして今後もフェアな人間関係を作ることができるだろうか。

 なお、相手が求めているものを検討する際には、決して「許してもらおう」と必死になったり焦ったりしないこと。

 もし信頼できる第三者がいるなら、その人に丁寧に事情を説明し、意見を聞いてみるのもいいだろう。

<第7回に続く>

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