18歳以上の童貞男は即刻死亡! 日本全土のヤレない男子を襲う謎の死!?【手書きPOP付】

マンガ

公開日:2020/4/3

童貞絶滅列島
『童貞絶滅列島』(川崎順平/講談社)

 突然だがある警告から始めたい。もしあるマンガ世界がリアルになったら「日本人20代男性の3割が突然死ぬ」のだ。
 
 コンドームメーカーでお馴染みの相模ゴム工業が実施した「ニッポンのセックス2018年版」アンケートによると、日本人20代男性の童貞率は3割を超えている。私の世代(昭和50年代生まれ)は、20代でまだ童貞でいるのは恥ずかしくてバレたくなかったものだが、今ではそこまでの意識の抵抗はないという。だが、そんなことを言ってはいられない――“童貞一斉死滅”してしまうというサバイバル時代を描くのが、川崎順平先生の『童貞絶滅列島』(講談社)だ!

 日本を突然パニックに陥れる事態が政府と国民を襲う。18歳以上の童貞が“謎の病”に侵され、死亡する現象が相次いでいた。その病は“童貞病”と呼ばれ、18歳の誕生日になったと同時に発症して即死という狂怖!

 そんな国内の状況をスマホで見ていた男子高校生である主人公、来海英利(くるみえいり)は、友人の童貞男子たちと童貞脱出への作戦を開始する。風俗に行ってプロに託すことも画策するが、英利は「どうせ童貞を捧げるなら…」と、憧れの女子である雨宮乃亜と結ばれたい夢が捨てられない。童貞男子たちが迫り来る死と隣り合わせの状況で、童貞ならではの“当たって砕けろ”的な勇気で不器用に駆け抜ける姿を描いた、世の男性すべてが感情移入&共感必至のサバイバル劇だ。

 2019年10月に第1巻、そして、翌11月に第2巻と、2カ月連続刊行した当作品は、壮絶の幕開けから政府による童貞隔離施設へと展開し、童貞の新たな戦いが描かれる。
 
 本作には、童貞に関する名言&迷言がたびたび登場する。特に、童貞病の解決が見えてこない英利へ、母からの「母ちゃんで済ませとき!」や、ヒロイン雨宮から投げかけられる「だから童貞なんだよ」は、まさに“童貞を殺す2大トラウマ名言”だ。切羽詰まった童貞だったらこれで死ねる(死にたくないけど!)。

 死を免れようとする童貞男子たちによる、必死な焦りや背伸びをした見栄などの“童貞あるある”は見逃せない。その彼らが時にはカッコ良く、これでもかというくらい勇ましく活躍していく姿をぜひ本編で味わってほしい。
 
 さて話は本編から裏話へ。

「出てくる童貞は全て“非実在童貞”なので何卒許してやってください」

と、著者の川崎先生が第1巻で語っているのだが、出演する童貞キャラの中に、とても仲の良い知人がモデルとして出ているという。当初は連載されるかどうかもまだ分からぬ状況でのネームで勝手に描いていたが、急きょ連載が決まり、後日キャラ出演の許可を得たそうだ。(歴史に残る“童貞名言”を言い放って死ぬのだが、そのシーンはぜひ本編で確かめてほしい!)

 こんな連載までの険しい道のりやおもしろいエピソードも、巻末秘話として収められている。物語における童貞キャラを描くにあたって、川崎先生自身の体験も少し入っているそうだ(川崎先生ご本人からお聞きしました!)。これらの裏話をもっと知りたいという方は、川崎先生が制作した裏話的同人作品「死期報」に描かれているので、即売会や同人専門店でぜひチェックを…。

『童貞絶滅列島』は、今後も童貞としての生きざまをガッツリ魅せてくれるに違いない。そこで本作を推す今回のPOPでは、“18歳以上の童貞は即死”という意味を表す言葉として、「D18」と私が勝手に造語し、狂気と絶望感を演出した1枚にした。
 
 さて、私はこの連載で“レビュー童貞”を喪失したので、死なない…はず(ぐはぁっ!)。


文・手書きPOP=はりまりょう