「やっぱり思った通りになった」想像した最悪の未来が現実になる負のループ…/『憂うつデトックス』②

暮らし

公開日:2020/5/9

“自粛”続きで心が疲れてしまった。嫌な状況が長く続くと延々と終わらないように思い、最悪の事態を想像してしまう――。そんな人も多いのではないでしょうか。いつも最悪の事態を想像して行動していると「心の準備」をしている気がしますが、実際には心を余計にすり減らしているだけ。こんな状況だからこそ、憂うつな気分から自分を解放して「今を生きる」方法を学びましょう。

『憂うつデトックス ‐ 「未来の不幸な自分」が幸せになる方法 ‐』(大嶋信頼/ワニブックス)

1-2 最悪を想像しておかないと実際に起きた時に耐えられない?

「最悪」を想像すると、二度痛い

 私は子供の頃から憂うつな気分「明日学校に行くのが嫌だな」となっていました。学校に行ったらみんなから仲間外れにされて、みんなの前で泣かされて惨めな目に遭う、と想像していると「本当にそうなった!」と学校で泣きながら自分が想像していたことが正しかったということを実感します。

「勉強をするのが嫌だな」とおっくうになるのは、どうせ勉強をしたって、テストの当日になってちっともわからなくて、適当なことしか書けず「クラスで一番下の成績だ!」となってしまうから。その答案用紙が両親に見つかってしまって「死ぬほど怖い目に遭わされる」という未来が見えてしまいます。そして幼い私は「ごめんなさい! 次からちゃんと勉強しますから」と両親の前で泣きながら謝っていて、心の中で「ほーら! やっぱり思った通りになった!」という感じになっていたんです。

 こんな気分になるのは「先のことを考えるからだ」というのは子供ながらにわかっていました。でも「最悪を想像しておかなければ、それが実際に起きた時に耐えられないかもしれないから自分はそれをしている」と憂うつな気分になって、未来に起きることを想像している理由を考えていました。

 しかし今振り返ってみると、想像していたことが実際に起きてしまうから「二度痛い」思いをします。憂うつな気分になって未来を想像して、想像の中で痛い思いをして、それが現実になるまでずっと憂うつな気分でおびえ続けて、そして実際に起きてしまって「想像以上に痛いし辛い」という現実を体験しちゃいます。

「最悪な状況に耐えられる」と思っていたのに、「ちっとも痛みや辛さは和らいでいないから耐えられない」と、自分が無意味なことをしている気がしていても、憂うつな気分になって未来を想像することは止められませんでした。

 仲が良かった友達と楽しく過ごしている時に、突然憂うつな気分になって「この友達とも喧嘩をして、相手から嫌われちゃうんだろうな」と想像したら本当にそうなってしまう。「ほら! やっぱり険悪なムードになって友達関係が終わってしまった」と落ち込む。最悪な状況に自分の心が耐えられるように最悪を想定していたら「それが現実になって耐えられない!」という繰り返しの人生でした。

引きこもりの人が見ていた〝未来〟

 やがてカウンセリングの仕事をするようになって「あれ? みんな私と一緒だ!」と憂うつな気分になっていらっしゃる方は「未来のことを想像している」ことがわかります。引きこもっていた男性は憂うつな気分になって「自分がコンビニでアルバイトをしたら周りの人からいじめられて、そして仕事が続けられなくなって職を転々とする」とおっしゃっていた。今までのカウンセラーは「そんなことやってみなきゃわからないじゃない!」とその方に叱咤激励をしたが、引きこもりをされている方は「それが怖くて動けない」と足を踏み出すことができませんでした。

 私は、そのお話を聞いていて「あ! もしかしてこの方は未来が見えているのかも!」ということに気が付いたんです。自分が憂うつな気分になって想像した未来に対して「そんなことを考えるから実際に悪いことが起きるのかもしれない」と自分を責めていました。でも、責めても憂うつな気分になって未来を想像するのが止められませんでした。

 その引きこもりの方のお話を聞いた時に「この方、未来が本当に見えているのかも?」と大胆なことを考え始めたんです。なぜなら、そのコンビニで仕事を始めた時の話があまりにもリアルで「本当にこの方は仕事をした経験がないのかな?」と疑うぐらいのやり取りだったから。

 リアルに話をしてくださったご本人は「自分の性格特徴を一番よく知っているから、そういうリアルな想像ができるんですよ」と言っていた。でも、一緒に働いている上司とのやり取りなどは「実際に職場で働いた人しかわからない」というような細かいやり取りまで含まれていた。引きこもりをされていた方は「テレビドラマなどでコンビニのシーンを見ているからですかね?」とおっしゃっていたのですが「いや、あまりにもリアルすぎる」と私はますます「憂うつな気分の方は未来が見えているのかも?」と疑いだしました。

 この引きこもりの方の場合は「憂うつな気分で未来を想像して避けている」となっていました。でも、私は「未来の想像通りに嫌なことが起きる」となっていたので「引きこもっている方は未来がちゃんと見えていて、そのトラブルを的確に避けることができているのかも?」とその賢さに感動しました。

 自分は「嫌なことが起きるかも」と未来のことを想像してとことん嫌な気分になった時に「もしかして、そんなことは起きないかもしれない」と限界を超えてあきらめの境地のような楽観的な感覚になってしまう。そして「ほら! やっぱり嫌なことが起きた!」と想像した通りの嫌なことが起きるパターンから抜けられませんでした。

 そこで私は「もしかしたら自分も憂うつな気分になっている時って、未来が見えているのかも?」という考えから「未来が見えているのだったら未来を変えられるかも?」と気づいてしまったんです。

<第3回に続く>